質量分析の基本と原理

質量分析の基本と原理

質量分析計は、コインよりも小さなものから、非常に大きな部屋を占めるものまでさまざまです。多様なアプリケーション向けにさまざまな装置の種類がありますが、特定の基本動作は同じです。測定単位は、amu などの用語に代わってダルトン(Da)が使われるようになりました。1 Da = 炭素 12(12C)同位体の単一原子の質量の 1/12。

以前は、質量分析計は、化合物の同定に用いる補助的な定性デバイスとしてのみ使用され、厳密な定量はできないと考えられていました。最近では、質量分析計で定性および定量の両方ができるようになりました。

質量分析計では、分子を気相イオンに変換した後でしか分子の質量を測定できません。質量を測定するため、電荷が分子に付与されて生じた電荷を帯びたイオンが、それに比例した電流となり、データシステムで読み取られます。データシステムによって電流がデジタル情報に変換され、マススペクトルとして表示されます。

以下のように、対象の分析種に適した多くのやり方でイオンを生成することができます。

  • 平面上のマトリックス中に溶かした化合物のレーザー切断(MALDI など)
  • 励起した粒子や電子の相互作用(電子衝突イオン化(EI)など)
  • エレクトロスプレー(ESI)として知られるようになった上述の移送プロセス自体の一部。この場合、液体クロマトグラフィーの溶離液に高圧をかけ、エアロゾルからイオンが生じる

イオンは、質量電荷比m/z)に応じて分離、検出、測定されます。相対イオンカレント(シグナル)が m/z に対してプロットされて、マススペクトルが得られます。低分子は通常、一価のみを示すため、m/z は分母 1 に対する質量(m)になります。「1」はイオン化プロセスで付加されるプロトン(M+H+、プロトンの喪失により生じた場合は M-H-)で、電子の喪失によりイオンが生じる場合はラジカルカチオン(M+)と表記されます。質量分析計の正確性や、実際どの程度真の質量を測定できるかはさまざまで、それについてはこの入門書の後半のセクションで見ていきます。

高分子は、構造内の複数の場所で電荷を捕獲します。通常、小さなペプチドは二価(M+2H+)で、非常に大きな分子には多数の部位があり、単純なアルゴリズムでスペクトルに表れるイオンの質量を推定することができます。

分解能が低い装置でも、適切にキャリブレーションすることで卓越した精密質量が得られます。ただし、限られた分解空間に多くのデータが密集すると、スペクトルに関する情報が少なくなります。9 アミノ酸ペプチドで、アンジオテンシン変換酵素(ACE)の阻害剤であるブラジキニン(血管の拡張に使用される)の一般的な代謝フラグメント(BK1-5 または Arg-Pro-Pro-Gly-Phe)は、二価(一価または M+H はモノアイソトピック値が 573.3149、二価または M+2H は 287.1614)に荷電しています。同位体も二価であり、これも使用可能な分解空間を占めます。

分析可能な分子の大きさ

脱離法(この入門書に記載)により、高分子で不揮発性の壊れやすい分子を分析する能力が拡張されました。40,000 Da を正確度 0.01% 以内(4 Da 以内)でルーチン検出できるため、翻訳後修飾などの軽微な変化を決定できます。多価イオンでは、質量分析計の設計上限を大きく超え、1,000,000 Da 以上の質量が分析できるようになりました。

同位体および元素の質量分析法

天然の同位体の存在量はよく特性解析されています。同位体は、安定と考えられますが、有意で特徴的なばらつきを示します。同位体比測定は、代謝研究に使用され(同位体を多く含む元素をトレーサーとして用いる)、気候研究でも使用されて、温度依存性の酸素と炭素の変化が測定されています。実際には、複雑な分子が単純な分子化合物に分解された後、磁場型装置などにみられるような高精度の測定が行われます(以下のセクションを参照)。

元素分析は通常、元素組成(構造ではなく)を決定するために無機物質に対して行われ、固体の金属サンプルを使用する場合もあります。誘導結合プラズマ(ICP)イオン源は、放電(または低電力グロー放電)装置によりサンプルをイオン化する場合に一般に用いられます。専用の装置を使用する ppt(1 兆分の 1)レベルでの検出も一般的になっています。

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