質量分析計の定量とキャリブレーション

質量分析計の定量とキャリブレーション

臨床試験の場合のように、多数の個々のサンプルから統計データが集められ、投与した薬物および目的の代謝物が既に十分特性解析されている場合など、化合物が既知の場合は、完全なマススペクトルは必要ありません。一方、複雑な生理学的混合物では非常に高い感度が要求され、装置を特定の m/z 値のみをモニターするように設定します。(この入門書にこれまで出てきた SIR レスポンスと MRM レスポンスの比較を参照)。

タンデム四重極(トリプル四重極)では、イオンが連続的に装置中を流れるため、質量分析計へのイオンの流れを制限する必要はありません。一方、イオントラップは容積が有限であるため、トラップに入るイオンが多くなり過ぎないようにする機能が必要になります。イオン強度を制御しないと、スペクトルに望ましくないピークや、予期せぬピークが生じます。この現象は、GC-MS で EI スペクトルのライブラリー検索を試みる際に特に問題になります。イオントラップの設計が大幅に変更され、内部(質量フィルター内でのイオン化)イオン化ではなく外部イオン化(イオンが質量フィルターの外側で生成された後、イオンがトラップに注入される)が可能になりました。この設計の変更により、トラップ内でのイオン分子の反応の問題が解決しましたが、同時に制限が加わりました。MRM モードでも、このトータルイオンカレントの自動制御により、クロマトグラフィーピークの間でサンプリング間隔が不規則になることがあります。したがって、法的にデータを正当化する必要がある場合や、法律により定量の正確度および精度に厳しい基準が課されている場合など、特に高い正確度および精度が要求される場合は、イオントラップは、複雑なマトリックス中での微量分析用ツールとしての用途に限定されます。

通常、MS で定量を行う場合は内部標準を使用します。内部標準により、抽出プロセス、LC 注入、イオン化におけるばらつきを管理することができます。内部標準を使用しない場合の繰り返し注入間の RSD は、内部標準を参照する場合(RSD 値が 1 桁台前半)の 10 倍高くなることがあります。最適な内部標準は、目的の分子を同位体標識したものです。このような分子を合成すると費用がかさみますが、目的の分子と同様の抽出回収率、クロマトグラフィー保持時間、質量分析計でのイオン化レスポンスが得られます。

CI を用いる GC-MS を使用する定量 - リニアダイナミックレンジ 5 桁。

システム適合性の評価、サンプルのランダム化、適切な曲線および濃度点の決定は、長く議論の的になっています。次のサイトに有用な参考文献があります:https://www.ionsource.com/tutorial/msquan/requantoc.htm

キャリブレーション

質量分析においてキャリブレーション化合物を使用することで、イオンの相対強度だけでなく質量キャリブレーションスケールを調整し、既知化合物の質量キャリブレーションスケールと一致させます。この操作は、すべての質量分析計で行います。それは、電子機器、表面の清浄度、ラボ内の周囲条件のわずかな変化により、装置が意味のある測定を再現する性能に影響が及ぶ場合があるためです。公称質量装置で行う要件が厳しくない分析では、キャリブレーションを頻繁に行う必要はなく、レスポンスのチェックを頻繁に行う必要があります。ただし、高い質量精度を得るには、わずかな変化も常に監視する必要があります。

GC-MS でよく用いられるキャリブレーション化合物は FC-43(別名パーフルオロトリブチルアミン)です。その他のキャリブレーション化合物の混合物も、高分解能質量分析計のキャリブレーションスケールの調整に使用されます。LC-MS では、ヨウ化セシウムナトリウム(NaCsI)やポリエチレングリコール混合物がよく用いられます。LC-MS 適合溶媒では、定常状態で NaCsI を装置に注入すると、4000 Da までの一連のモノアイソトピックピークが現れます。

マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析計のキャリブレーション、チューニング、感度検査用の標準のペプチド、タンパク質、マトリックス、溶媒を含むキットが市販されています。Sigma Aldrich 製のキットは、タンパク質およびペプチドの複雑な混合物(700 ~ 66,000 Da)の分析の支援用にセットアップされています。

ロックマス

TOF および同様の非常に正確な装置で行う最も要件の厳しいモニタリングにおいては、常に監視が必要です。温度が少し変化しただけでも、報告される質量の結果が百万の 1 単位でシフトする場合があります。使用するイオン化の種類によっては、イオン源に存在する既知の汚染物質を使用することで、恒常的なキャリブレーション補正を行うことができます。あるいは、イオン流を定期的にサンプリングして、分析中を通して適切なキャリブレーションを再確立することができます。流れている LC 溶離液に、カラムの後、質量分析計のインレットの前で、ロックマスキャリブラントを単に添加するだけで、イオン化抑制、質量干渉、溶媒効果など、しばしば制御不能の挙動が発生します。

飛行時間型(TOF)装置(この入門書の前半に記載)では 100 万分の 1(ppm)単位の精密質量測定が可能で、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)装置では、導入されるイオン数が十分に制御できれば、さらに高い精度が得られます。質量シフトの補正によるロックマスのリアルタイムの再キャリブレーションにより、質量スケールのキャリブレーションで確立されたロックマスに対して質量誤差がなくなります。弱いシグナルもよく見落とされる原因ですが、シグナル強度で加重した LC ピークに対する質量測定の平均化により修正可能です。

正確な質量データが取り込めるように最適化したデュアルエレクトロスプレーイオン源は、プロテオミクス研究や低濃度の代謝物の構造推定に最適です。2 つの独立した ESI プローブを用いるこの分析法では、プログラム可能なステッピングモーターにより駆動する振動バッフルを使用して、修正スプレー(またはレファレンス)流をサンプリングします。レファレンススプレーは事前定義された間隔でサンプリングされ、取り込みのデューティーサイクルが、分析種を含む液体流を優先するようになります。サンプリングのバッフル位置をリアルタイムでモニターすることで、2 つの液体インレットのインデックス作成が可能になり、レファレンスデータおよびサンプルデータが別々のファイルに保管されます。この設計により、分析種チャンネルとレファレンスチャンネルの間のクロストークがなくなります。

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