トータルイオンクロマトグラム(TIC)では、イオンの強度を合計し、時間(クロマトグラフィーの保持時間)の関数としてプロットすることができます。UV 検出器などの分光光度計の出力に似ています。MS の場合、1 つの軸はイオン強度で、もう 1 つの軸は時間または特定の時間に取得したデジタルサンプル(スペクトル)です。それぞれのスペクトルを別々に表示することができます。これは、現代のデジタルビデオカメラで撮影した映像、つまり一連の高速撮影した静止写真と非常に似ています。
シンプルですが非常に有用な手法が可能になり、選択したイオンクロマトグラム中の一連のデータを減らしたり、デジタルフィルターを適用してノイズを低減したり、各デジタルサンプルの最も強度の強いピークのみを表示したりすることができます(ベースピークイオンクロマトグラム、BPI)。
ソフトウェア設計も、単なる取り込みパラメーターの設定手段に留まらず、年を経て専門分野別に設計されるようになっています。現在では、オペレーティングシステムおよびデータシステムにより、オペレーターによる装置の複雑な管理が行えるようになっています。
特に、以下のような専門分野のソフトウェアパッケージが進化を遂げています。
データ管理の需要が急速に高まり、そられに対応する能力を超えています。高分解能で質量精度の高いデータが時間あたり 1 GB 生成されます。生命科学研究だけでなく、代謝物の存在やそれらの生体内反応の特性解析など、大量の処理に依存する業界でも、ますます膨大な量のデータが生成されてきています。1 日あたり 24 GB のデータを生成する質量分析計が 5 台ある場合、例えば 180 日間の動作で、21.6 テラバイト(TB)に相当するデータを保管、検索、並べ替え、解釈する必要が生じます。
あらゆるデータのシナリオにおいて、収集したデータで何をするつもりかが最初の質問になります。E メールの場合、メッセージを伝えた後はほとんど意味がありませんが、オンラインデータの場合、生物学、製薬、物理化学の測定値がデータファイル内に蓄積され続け、時間の経過と共にデータの価値が高まります。この価値の高まりの代償として、データのアクセス性を確保するコストがかさみます。データファイルのサイズの増大、およびアクセスする必要がある時間の長さの観点から、その解決策として階層型データストレージ管理(Hierarchical storage management)などがあります。つまり、一部の少量のデータを「アクティブ」な状態で瞬時にアクセスできるようにし、残りは、段階的に、処理中または長期アーカイブにしておきます。
参考文献:MS - The Practical Art, LCGC