質量分析のデータ処理

質量分析のデータ処理

トータルイオンクロマトグラム(TIC)では、イオンの強度を合計し、時間(クロマトグラフィーの保持時間)の関数としてプロットすることができます。UV 検出器などの分光光度計の出力に似ています。MS の場合、1 つの軸はイオン強度で、もう 1 つの軸は時間または特定の時間に取得したデジタルサンプル(スペクトル)です。それぞれのスペクトルを別々に表示することができます。これは、現代のデジタルビデオカメラで撮影した映像、つまり一連の高速撮影した静止写真と非常に似ています。

シンプルですが非常に有用な手法が可能になり、選択したイオンクロマトグラム中の一連のデータを減らしたり、デジタルフィルターを適用してノイズを低減したり、各デジタルサンプルの最も強度の強いピークのみを表示したりすることができます(ベースピークイオンクロマトグラム、BPI)。

データの出力、保管、検索

ソフトウェア設計も、単なる取り込みパラメーターの設定手段に留まらず、年を経て専門分野別に設計されるようになっています。現在では、オペレーティングシステムおよびデータシステムにより、オペレーターによる装置の複雑な管理が行えるようになっています。

特に、以下のような専門分野のソフトウェアパッケージが進化を遂げています。

  • オープンアクセス(別名「ウォークアップ」システム)などのワークフロー管理 - 十分に熟練したオペレーターにより、多数の専門家ではないユーザーが完全な LC または GC/MS 分析法を使用できるようになり、大がかりな研修を必要とせずに、高度なテクノロジーにアクセスできるようになりました。専門家ではないユーザーは、化合物の同定や純度測定のために、装置をたまにしか操作する必要がないかも知れません。このシステムは、ユーザー自身が熟練のオペレーターにならなくても、利用しやすいシステムです。
  • データ削減アプリケーション - これらのパッケージは、代謝物の同定や数千におよぶ個別の化学物質を含む複雑な混合物中のバイオマーカーの開発に役立つ可能性があります。これらのアプリケーションは、大量のデータ中の他の方法では見えない傾向を調べる、主成分分析ソフトウェア(PCA)などの「専門的」なシステムにより機能が高められています。

データ管理の需要が急速に高まり、そられに対応する能力を超えています。高分解能で質量精度の高いデータが時間あたり 1 GB 生成されます。生命科学研究だけでなく、代謝物の存在やそれらの生体内反応の特性解析など、大量の処理に依存する業界でも、ますます膨大な量のデータが生成されてきています。1 日あたり 24 GB のデータを生成する質量分析計が 5 台ある場合、例えば 180 日間の動作で、21.6 テラバイト(TB)に相当するデータを保管、検索、並べ替え、解釈する必要が生じます。

あらゆるデータのシナリオにおいて、収集したデータで何をするつもりかが最初の質問になります。E メールの場合、メッセージを伝えた後はほとんど意味がありませんが、オンラインデータの場合、生物学、製薬、物理化学の測定値がデータファイル内に蓄積され続け、時間の経過と共にデータの価値が高まります。この価値の高まりの代償として、データのアクセス性を確保するコストがかさみます。データファイルのサイズの増大、およびアクセスする必要がある時間の長さの観点から、その解決策として階層型データストレージ管理(Hierarchical storage management)などがあります。つまり、一部の少量のデータを「アクティブ」な状態で瞬時にアクセスできるようにし、残りは、段階的に、処理中または長期アーカイブにしておきます。


参考文献:MS - The Practical Art, LCGC

  • Profiles in Practice Series: The High Speed State of Information and Data Management, Vol.23 No.6, June 2005
    • 重要である理由:データ出力がより複雑化し、大量になるとともに、アーカイブ化や検索、構造化した保管が非常に重要な問題になっています。
  • Hardware and software challenges for the near future: Structure elucidation concepts via hyphenated chromatographic techniques, Vol.26, No.2 February 2008
    • 重要である理由:MS および直交するまたは結合した分析システムなどを含むことが多い現代の実験で生成される大量のデータについて議論しています。

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