イオン化手法が開発され、分子を成分に分解せずに生体分子の同定することがが可能になりました。2 つの「エネルギー蓄積」プロセス、電子捕獲解離(ECD)(R.A. Zubarev, Electron-capture dissociation tandem mass spectrometry, Curr.Opin.Biotechnol 15 (2004), pp.12–16)および電子移動解離(ETD)(J.J. Coon, J. Shabanowitz, D.F. Hunt and J.E. Syka, Electron transfer dissociation of peptide anions, J. Am.Soc.Mass Spectrom 16 (2005), pp.880–882)が生体分子分析およびプロテオミクスでは一般的に認識されています。電子捕獲部位に隣接する部位での結合開裂や衝突誘起解離(CID)などのその他のフラグメント化プロセスとは異なり、開裂する結合は分子中で最も不安定な結合ではありません。観察される開裂は、ペプチド配列にあまり左右されないため、ペプチド骨格中のほとんどのアミノ酸の間での開裂が、分子のサイズとは関連しない傾向があります。ペプチドの ECD および ETD における主なフラグメント化は c イオンおよび z イオンの生成です。ECD は、リン酸化や O-グリコシル化などの不安定な翻訳後修飾の分析や、インタクトプロテインのフラグメント化分析で使用できることが実証されています。
エレクトロスプレーイオン化(ESI)質量分析は、アミド水素/重水素(H/D)交換分析と組み合わせることで、溶液中のタンパク質のさらに詳しい構造解析を支援できることがわかっています。チャージ状態の分布およびタンパク質のチャージ ESI 型のエンベロープにより、近紫外円偏光二色性(CD)やトリプトファン蛍光などの他の手法では試験が難しい少量のサンプルでも、溶液中の高分子タンパク質の配座についての情報が得られます(ただし、通常はこれらの手法および核磁気共鳴などの他の手法と組み合わせて使用されます)。その他の手法により、溶液中のタンパク質の大きな集団の平均的な特性が測定できるため、MS で得られる追加のメリットとして、一過的な中間体や折り畳み中間体の構造の詳細が得られることが挙げられます。
生体分子のイオン化法