用語集

用語集

以下の用語リストは、この入門書の説明の補助として、業界において一般的に使用されている用語に基づいており、現在ではあまり使用されなくなった用語や手法も含まれています。

存在量

UV 検出器で表示される吸光度と同様の見方をすると、バックグラウンドを超えるシグナルの縦方向の増加は、特定のイオンの発生が増加している(X 軸が質量単位でキャリブレーションされている場合)または存在するトータルイオンの発生が増加している(横軸が時間またはスキャンでキャリブレーションされている場合)ことを示します。ベースピーク(各イオンの相対存在量)のシグナルとの比較における単一の分析種または化合物のフラグメント化によるすべてのイオンのシグナルを使用し、フラグメント化パターンのライブラリースペクトルとの適合を判断して陽性同定を行います。

ASAP(大気圧固体試料分析プローブ)

1970 年代の Horning による研究に基づき、McEwen および McKay により開発されたこの形のサンプルイオン化では、標準的な APCI プラズマを使用しますが、加熱した窒素流の中にサンプルを置いてイオンを生成します。熱により大量のサンプルが蒸発し、APCI プラズマにより生成した準安定イオンとの電荷交換によりイオンが生成します。精密質量装置を使用して、低濃度の複雑な混合物から、個々の化合物を比較的明確に同定できます。「DART」および「DESI」も参照してください。

大気圧イオン化(API)

一般的にエレクトロスプレー(ESI)および大気圧化学イオン化(APCI)やその他の大気圧で使用する手法を指す用語。

大気圧化学イオン化(APCI)

当初は溶媒媒介エレクトロスプレーと呼ばれ、現在では、溶液中で容易に直接イオン化されない中性分子に適用されるようになりました。APCI では、流れて来るエアロゾル流中に配置した鋭いピンに電流を流し、溶媒自体から準安定イオンのプラズマを生成して、分析種がプラズマを通過する際にこれらのイオンの電荷を分析種にトランスファーします。LC または溶媒が通って流れるプローブを加熱することで、エアロゾルが生成します。

大気圧ガスクロマトグラフィー

DuPont 社の Charles McEwen により 2002 年に開発されました。加熱した送液ラインを使用し、標準的な GC 溶出液を質量分析計の標準的な API (あるいは ESI/APCI)イオン源に導入できます。これにより、ESI から GC への簡単で迅速な変更が可能になり、GC 分析が適した化合物に対応できます。イオン化モードは APCI または APPI のいずれでも使用できます。

大気圧光イオン化(APPI)

1980 年代に開発されましたが、市販されたのは 2000 年以降で、PAH やステロイドなど、ESI イオン化や APCI イオン化では対応できなかった非極性分析種をイオン化するのに十分な光子エネルギーを、クリプトンガスランプにより約 10 eV で生成できることがわかったときでした。

ベースピーク

通常は、スペクトルで最も強度の強いピークで、その他のピークとの比較に使用します。EI のように多くの構造情報が得られるイオン化法では、ベースピークが親イオンや分子イオンではない場合があります。

キャリブレーション

通常は、既知質量の化合物を一定の流速で流し、質量分析計のソフトウェアでは、特定のフィルター条件(四重極型装置では RF/DC 比)でシグナルを取り込みます。取り込まれたシグナルをレファレンスファイルと比較した後、キャリブレーションルックアップ表がソフトウェアにより作成されます。次に、キャリブレーションテーブルを四重極を通過した質量電荷比の基にして、特定の値が割り当てられます。質量分析入門「定量とキャリブレーション」セクションを参照してください。

CI(化学イオン化)

分子イオンの生成および感度を高める目的で用いられる試薬の導入により、低真空(0.4 torr)下で衝突を引き起こすことです。電子衝突イオン化よりもはるかに低エネルギープロセスであるため、フラグメント化が少く、しばしば「ソフトイオン化技術」と呼ばれます。「電子衝突イオン化」を参照してください。

DART(リアルタイムでのダイレクト分析)

Robert Cody らにより 2002 年に開発され、用途は DESI と似ていますが、機能面ではむしろ APCI と密接に関連しています。サンプルを基質上に載せ、APCI と同様のプロセスで生成した励起粒子を衝突させます。つまり、プラズマにより準安定イオンが生成し、加熱した窒素ガスによってターゲットに向けて運ばれます。「大気圧 GC および ASAP」セクションで引用した McEwen の研究を参照してください。

DESI(脱離エレクトロスプレーイオン化)

Graham Cooks により、2002 年に初めて、(通常は)不活性の基質表面からソフトな二次イオンを生成する手段として発表されました。ESI プローブを使用する MALDI と同様に、表面に対する入射角を約 50 度に定めてイオンを化学的にスパッターさせ、質量分析計に入るようにします。サンプル前処理の必要がなく、多くの極性および非極性の表面物質(皮膚、丸ごとの果実での農薬残留物検出など)からの情報が直接得られることが示されています。「大気圧 GC および ASAP」セクションで引用した McEwen の研究を参照してください。

DIOS(シリカ上の脱離イオン化)

かつては、特に低分子化合物では基質(むきだしのシリカ表面)から干渉イオンが生じないため、MALDI 基質中のサンプル前処理の代替策と考えられていました。1990 年代後半に、プレート作成が困難で、表面が汚染しやすいことが判明したため、商業的価値が減少しました。

EI(電子イオン化)

電子が粒子(原子または分子)と相互作用することから「電子衝突」イオン化と誤って呼ばれることがあります。内部の化学結合を切断するのに高い kcal/mol レベルの高いエネルギーを用いるため、「ハード」なイオン化手法と考えることができます。イオン化電圧(通常は 70 eV)とは、電子衝突イオン化を誘発するために用いられる、電子を加速する電位差を指します。CI とは異なり、EI では高真空状態で操作することで、制御不能な衝突が避けられます。アナライザーは、さらに高真空(10-4 ~ 10-6 torr)で動作します。

エレクトロスプレー(ESI)

いわゆる「ソフト」なイオン化技術です。大気圧イオン化(API)手法のうちで最も幅広く用いられています。1980 年代末以降、商業的な成功を収めました。この現象では、導電性チューブ(ステンレススチール製キャピラリー)に過剰なエネルギー(3 ~ 5 kV の範囲の電圧)をかけることで、チューブ内に液流が誘発されてそのレイリー限界を超え、チューブから出る際にエアロゾルが生じます。結果として生じるスプレー(クーロン爆発の結果)により、エアロゾル液滴が脱溶媒され、イオンを含む半径約 10 ミクロンのエアロゾル液滴が生じます。イオンは通常プロトン化され、ポジティブイオンモードでは M+H+、ネガティブイオンモードでは M-H- の形で検出されます。

FAB(高速原子衝突)

いわゆるソフトイオン化ギイ述で、フラグメント化がほとんどない強い分子イオンが生じます。分析種を、LC 中を流れるかプローブ上に固定したマトリックス(多くの場合グリセロール)中に入れ、高エネルギー原子(多くの場合キセノンまたはヨウ化セシウム)の経路中に配置します。

この手法は最大 10,000 amu までの生体分子に対して有効でしたが、おそらくより重要な使用法として、磁場セクター質量分析計と組み合わせることで、新規ペプチドなどの正確な重量が測定できます。感度が非常に高く(フェムトモルのレベル)、(静的 FAB としての)この手法によって長年にわたって非常に多くの情報が得られました。この手法を習得するのは困難で、グリセロールによって質量分析計のイオン源が汚染され、グリセロールイオンの存在により低質量が不明瞭になる場合があります。ESI の登場以来、今ではこの手法はほとんど使用されていません。

電場イオン化(FI)

FI によるソフトイオン化では、さまざまな分析種においてフラグメント化はわずかまたはまったくありません。このことは特に、フラグメント化(EI)または複雑なイオン化特性(CI)のため、他のイオン化手法の使用が限定される石油化学への応用において重要になります。高電圧をかけた細いワイヤを、インデンなどの有機化合物の蒸気中で加熱します。結果としてワイヤの表面に樹状突起状の構造が蒸着し、熱分解されて、非常に細い導電性のフィラメントが生じます。非常に細かい点に高電位がかかると、先端に非常に強い電場が生じ、電場のイオン化が発生する条件が整います。

サンプル分子は、FI エミッター上に生長した炭素の樹状突起の先端のすぐ近くを通過します。FI エミッターは中空の 1 対の抽出ロッドのすぐ近くに位置しています。エミッターにはアース電位がかかり、ロッドには比較的高電圧(12 kV)がかかって、炭素の樹状突起先端の周囲に非常に強い電場が生じます。GC カラムは、エミッターワイヤのすぐ近くに一直線に配置されています。電場の影響により、分子からの価電子の量子トンネル現象が発生し、イオンラジカルが生じます。

FIA(フローインジェクション分析)

これは、インラインのカラムを通さずに LC インジェクターでサンプル(通常は初期のステップで精製済み、干渉物質およびその結果生じるスペクトルの複雑性を除くため画分として)を導入する方法です。LC はサンプル導入のデバイスとしてのみ使用します。

フィラメント

電子イオン化では、フィラメントが電子のソースとなり、これが分析種と相互作用してイオン化します。通常は金属製のワイヤ(平面または丸形)でできており、電流が通過する際に加熱されて 70 eV の電子を放出することができます。

フラグメントイオン

親分子イオンから失われて生成するイオン。解離フラグメントの合計は親イオンに等しくなり、特定の条件下では、必ず同じ内部結合がフラグメント化して、予測されたパターン(同じイオンおよび相対存在量)になります。特定の MRM 実験によって生じるプロダクト(娘)イオンについても参照してください。

ハイブリッド

通常は、2 つの異なる種類の装置を組み合わせた装置を指します。例えば初期のマイクロ質量「ハイブリッド」では磁場セクターと四重極を組み合わせています。現在の QTOF は、四重極と TOF のハイブリッドです。

イオン

質量分析計は、分析種が少なくとも 1 つの電荷を有する場合に操作可能となり、したがって検出が行えます。一価のみが存在する場合(例えば電子が失われ、分子が正に荷電した陽イオンラジカルとして存在する場合や、プロトンや水素の付加により、正に荷電した擬分子イオンとして存在する場合)、それは低分解能のスキームでの分子量を表しているとみなされます。

イオンカレント(トータルイオンカレント)

イオン源で生成した荷電粒子に基づいて検出される電流。質量分析計が 100 ~ 500 Da の範囲でスキャンするよう設定されている場合、得られるトータルイオンカレントは、選択した時間にイオン源に存在するその範囲のすべてのイオンの合計となります。装置がイオンを 1 つだけ検出するように設定されている場合(選択イオンモニタリング)、得られるトータルイオンカレントは、選択した各瞬間におけるそのイオンのみの合計になります。

イオン源

分析種がイオン化されるアナライザーの前のイオン流中の物理空間。最適な結果を得るためには、それぞれのタイプのインターフェースに独自の内部形状が必要になります。

同位体比

同位体の天然存在比は、一定で安定していると思われることが多いですが、非常に精密に測定すると、有意で特徴的なばらつきがあることがわかります。同位体比の測定は、例えば、同位体を豊富に含む元素をトレーサーとして用いる代謝研究、有孔虫における酸素と炭素の温度依存性同位体比測定を使用する気候研究、鉛、ネオジミウム、ストロンチウムなどの元素の放射性同位体を使用する岩の年代測定、炭素の同位体比を使用する原料決定(例えば、ある物質が天然由来か石油由来の合成品かの判定)など、幅広いアプリケーションに有用です。

通常、単一の磁場セクター型質量分析計に検出器を複数(同位体ごとに 1 台)装備して使用します。複雑な化合物は、単純な分子にしてから測定します。例えば、有機化合物は燃焼させて CO2、H2O、N2 にします。

マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)

1988 年に Tanaka、Karas、Hillenkamp により初めて導入され、分析種を含むマトリックスにレーザーを照射して励起します。非常に高分子のペプチドおよびタンパク質分子をイオン化し、インタクトなまま検出するのが有用な分析法であることがわかりました。一般には、飛行時間型(TOF)装置の導入スキームとして採用されています。

質量電荷比(m/z)

荷電粒子が、質量とイオン性電荷の比として表されます。文献および一般使用では m/z で表されることが多いです。ここで、イオンが由来する分析種は、原子質量単位(amu)、ダルトン、または分子量(mw)で表記される場合があります。

平均自由行程

イオンがアナライザーに入ってそのイオンが検出されるまでの距離。真空中では、稀薄大気中での衝突の時とイオンを分析する時の間の時間を考えると、平均自由行程は比較的長いです。例:

大気(1000 torr)には 3 x 1022 分子が cm あたり含まれています。

1 x 105 torr のチャンバーには 3 x 1011 の分子が cm あたり含まれています。

l ¸圧力(torr) = 最小平均自由行程(cm)

ここで、l = 5 x 103cm

分子イオン

分子が電子を獲得したり(陰イオン)失ったり(陽イオン)すると、イオンが生成します。「偽分子イオン」も参照してください。

マルチプルリアクションモニタリング(MRM)

トリプル四重極型質量分析計での特定の試験では、親イオンに 1 つ目の四重極(Q1)でフィルターをかけ、「RF のみ」の四重極(Q2)の途中で親イオンと分子(通常はアルゴンなどの気体)の間の衝突を誘発し、次いで、衝突で生じた特定のプロダクトイオンを検出します(Q3)。特に製薬業界のハイスループット定量分析で使用されます。

プリカーサーイオン

より適切には「プリカーサー」と呼ばれますが、一般には「分子イオン」と言い換えることもできます。この用語を使用する場合は、MRM スキームにおけるプロダクトイオンの存在も示唆します。「プロダクトイオン」を参照してください。

粒子ビーム(MAGIC、Thermabeam)

元々ジョージア工科大学で開発され、Browner らにより MAGIC(クロマトグラフィー用の単分散エアロゾル発生インターフェース)と呼ばれています。その後、この手法は洗練され、一般的に粒子ビームと呼ばれるようになりました。LC の流れが加熱され、噴霧により溶媒が除去されます。溶媒の蒸気が、真空ポンプにより、直列(通常は 2 個)のスキマーコーンを通って吸い取られます。その結果、「乾燥」した粒子がモーメンタムセパレーターを通って加速され、質量分析計のイオン源に衝突して、従来の GC-MS に似たフラグメントイオンスペクトルが生成します。この手法も、現在ではほとんど使用されていません。

プローブ(固体プローブ、または直接挿入型プローブ)

真空ロックを通して質量分析計のイオン源に挿入される金属製ロッド。サンプルをプローブの先端に付着させ、イオン化ビームの経路に配置します。通常は EI およびその他の単一サンプルの手動実験で使用されます。FAB の場合のように、サンプルをイオン化促進マトリックスに付着させることも可能です(「FAB」を参照)。

プロダクトイオン

以前は「娘イオン」と呼ばれていました。コントロール実験でプリカーサー(親)イオンと分子の衝突を意図的に誘発してフラグメント化を発生させた結果として生じます。衝突によりプリカーサーイオンに特異的なプロダクトイオンが生じ、陽性同定の手段として使用されます。マルチプルリアクションモニタリング(MRM)をご参照ください。

偽分子イオン

通常、比較的容易に識別可能な形で対象分析種が変わる、プロトン(例、M+H)またはイオン(例:移動相に一般的に用いられるアンモニウム塩に由来する M+NH4)の付加を指します。電荷は、質量分析計による操作も可能です。

四重極(Quad)

最も広く普及している種類の質量分析計の基礎となる特性。4 本のロッド(多くの場合直径 1 インチ以下、長さ 12 インチ未満)が、2 列で互いに(約 1 インチ離れて)平行に保持されています。DC (直流)の RF (ラジオ周波)電圧をロッドにかけることで、フィルタリングまたは特定の荷電粒子がこのロッドの長さ方向に通過します。(電荷を持つ)質量が異なると、RF/DC 条件の変化の影響を受けます。ロッドは反対側の対として接続され、それぞれのセットは、RF のソースにより陽極と陰極を交互に往復します。

特定のキャリブレーションを行った設定では、対応する質量電荷比を持つ粒子のみが通過します(m/z で表され、分子量とほぼ等価です)。同じ設定では、重い粒子は電極に対して斜めに通過することで検出器に入らず(電圧設定の影響はほとんどなし)、軽い粒子はトラップされて出口まで到達できず検出されません。四重極では電場を <103 ミリに変更して安定化させることができ、経時的にスキャンを行うことで、複数の分子量を観察できます。ただし、あまり荷電しない粒子の分子量はほとんど検出されません。

分解能(10% バレー法)

質量分析計で、質量電荷比が異なるイオン間を区別できるための、ほぼ同等のレスポンスを示す 2 つの隣接した質量の間の最小限の分離。通常磁場セクターで使用され、以下の比と等しくなります:

2 つの粒子の平均質量

2 つの粒子の平均質量

2 つの粒子の質量の差

2 つの粒子の質量の差

分解能(M/ΔM)

特定の質量を半値全幅(FWHM)での分解能により除算したもので、尺度として用いられます。磁場セクター装置では前述の定義(10% 法)が幅広く用いられており、隣接する質量の強度が等しいことが必要です。例えば、四重極の代表的な分解能の値は FWHM で 0.6 amu になります。質量電荷比 3000(ダルトンまたは amu と等価)で取り込んだピークを使用して測定すると、分解能 5000 になります。2 つの手法の結果はほぼ同等で、この方法では通常バレー法の倍の値になります。

質量

質量

50% 高さでのスペクトルピーク幅

50% 高さでのスペクトルピーク幅

スキャン

「選択イオンモニタリング」、「四重極」「イオンカレント」も参照してください。制御電圧(DC、RF)は、指定した範囲の荷電粒子をスキャン(検出)するよう、所定の時間にわたってコンピューターで調整されます。複数の分子種の検出ができるというメリットがありますが、感度が犠牲になります。それは、範囲の他の部分が検出するように設定されているため、目的の粒子の一部は間違いなく検出器に検出されません。

選択イオンモニタリング(SIM)

選択イオンレコーディング(SIR)とも呼ばれます。「四重極」、「スキャン」も参照してください。四重極の DC および RF 電圧の設定を調整して、一価の粒子(単一の質量電荷比)のみが検出器を通過するようにします。その結果、ノイズが大幅に減少して、シグナルの感度が大幅に向上します(同じ m/z の粒子がすべて必ず検出されます)。ただし、混合物中の他の粒子は全く検出されなくなります。

サーモスプレー

この種のインターフェースは論文ではかなり前から取り上げられていましたが、普及したのは 1980 年代初頭です。約 1 mL/分の LC 溶媒がプローブ(長さ約 12 フィート、内径 75150 マイクロンの断熱チューブ)中で加熱され、蒸気が質量分析計中に噴霧されます。質量分析計の内部でエアロゾル液滴の脱溶媒により生成するイオンが(噴霧に対して直角に)アナライザーに入り、レンズ電圧の影響を受けます(「スキャン」、「トータルイオンカレント」を参照)。

生成するスペクトルは、ソフトイオン化スペクトルと呼ばれます。これは意味のあるフラグメントがほとんど生成しないためです。強度の強い分子イオンが生成します。単一イオンは、一部のバックグラウンドや混合液中ではほとんどメリットがありませんが、高分子量の高感度での確認や、ターゲットイオンのさらなるフラグメント化のためのフィルタリング(MS/MS)においてメリットがあります。文献では、ビタミン D 代謝物について pmol という低レベルの高感度測定が報告されています。1990 年代初頭に APCI が改良されるまでは、代謝物研究など、高極性の用途でこのインターフェースが一般に選択されていました。また、液体中の有機物含量が多いとあまり使えませんでした。

現在ではこの手法はルーチンで使用されなくなりました。

飛行時間型(TOF)質量分析計

さまざまな質量電荷比のイオンを、同じ運動エネルギーを与えた後で、電場のない真空領域を通過する時間により分離する質量アナライザー。イオンの速度は質量電荷比に左右され、イオンが固定距離を移動する際に検出器に到達するのにかかる時間により質量電荷比が決定され、重いイオンの方が長時間かかります。

チューニング

通常、インターフェースレンズおよび流動気体を最適化し、キャリブレーションに対して、一定の動作条件で、特定の分析種の目的のレスポンスを達成することを指します。キャリブレーションでは、質量取り込みおよびレポート機能を定義します。レンズおよび関連する回路のハードウェア設定により、ソフトウェアルックアップテーブルの作成と併せて、安定した装置のレスポンスが設定され、PEG や NaCsI などのキャリブラントの送液から得られる既知の質量のリストに対して補正されます。

真空(torr)

1 mmHg(1 psi = 51.7 torr = 0.069 bar または atm)に相当。質量分析計のアナライザー部分は通常、イオン化した粒子が個別に通過できるようにするため、最低 10-4 torr を維持する必要があります。圧力が大気圧に近くなることで、イオン-分子間の相互作用が生じて、さらに下流で検出される荷電粒子の結果がランダムになります。化学イオン化(CI)などの手法において、制御された条件下で、低真空(高圧)でこのような衝突が誘発されます。

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