Waters AccQ•Tag ケミストリーを使用するアミノ酸の誘導体化

Waters AccQ•Tag ケミストリーを使用するアミノ酸の誘導体化

6.1 はじめに

6.1 はじめに

液体クロマトグラフィーおよび光学検出によるアミノ酸分析では、多くのアミノ酸には発色団がなく、検出できないため、追加のサンプル前処理が必要になります。そこで、加水分解後のアミノ酸分析の次のステップは誘導体化です。このセクションでは、Waters AccQ•Tag ケミストリーを使用する誘導体化におけるタンパク質またはペプチドの加水分解物の調製について説明します。

加水分解したサンプルを適切かつ確実に誘導体化するには、以下を考慮する必要があります。

  • 微粒子の除去
  • 誘導体化するサンプルの質量決定
  • サンプルの中和が必要かどうかの判断
  • サンプルの質量に基づく過剰な誘導体化試薬の使用

以下の説明は、やむを得ず省略したものです。AccQ•Tag 誘導体化ケミストリーに関する詳細情報とガイダンスについては、www.waters.com/AAA をご覧ください。

6.2 粒子状物質の除去

6.2 粒子状物質の除去

多量の粒子状物質や浮遊脂質が存在する場合、遠心分離が必要な場合があります。遠心分離により、誘導体化のための透明な加水分解物のアリコートの回収が容易になります。

飼料分析における加水分解物などの高濃度サンプルでは、サンプル回収率はフィルターの材質の選択によって影響を受ける可能性があることに注意し、粒子のろ過だけで十分である場合があります。バイアスのない結果を得るためには、この要因を考慮して対処する必要があります。このアプリケーションにおけるフィルター性能の詳細については、フィルターの製造者に問い合わせてください。

6.3 WATERS AccQ•Tag ケミストリーを使用する誘導体化

6.3 WATERS AccQ•Tag ケミストリーを使用する誘導体化

AccQ•Tag メソッドは、加水分解したペプチドおよびタンパク質のアミノ酸分析用のプレカラム誘導体化の手法です。AccQ•Tag メソッドでは、以下の処理を行います。

  • Waters AccQ•Tag Ultra または AccQ•Fluor 試薬を使用してアミノ酸を誘導体化
  • グラジエントベースの逆相 HPLC または UPLC を使用して誘導体を分離
  • 外部アミノ酸標準試料および光学検出を使用して、誘導体を正確に定量

カルバミン酸 6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシンイミジル(AQC)試薬は、第一級アミンと第二級アミンの両方と反応します。過剰な AQC 試薬は水と反応し、6-アミノキノリン(AMQ)が生成されます。AMQ が過剰な AQC 試薬とゆっくり反応して、ビス尿素が生成されます。これらの副生成物は、ペプチドまたはタンパク質加水分解物に含まれるアミノ酸の分離、同定、定量を妨害しません。誘導体は数日間安定であるため、必要に応じて一括処理や繰り返し分析を行うことができます。

図 10.一級アミノ酸および二級アミノ酸の誘導体化による AccQ•Tag 反応の概略図

長年にわたり、AccQ•Tag 誘導体化反応の正確性を確保するために、徹底した研究が実施されてきました。すべてのアミノ酸が完全に誘導体化されるには、化学反応自体に、モル過剰の誘導体化試薬と塩基性 pH(8 ~ 10)の両方が必要です。これらの重要な要素に対処するための戦略を開発しました。

6.3.1 AccQ•Tag 誘導体化のサンプル量の決定

6.3.1 AccQ•Tag 誘導体化のサンプル量の決定

反応自体においてサンプルを通常 10 倍希釈し、100 μL の誘導体化全量のうち 1 μL をカラムに注入します。誘導体化では、すべてのアミノ酸が等量存在するわけではないため、検出限界や定量限界に影響を及ぼすには、サンプル量が最も存在量が少ないアミノ酸に関して十分である必要があります。正確な定量を得るには、最も存在量が少ないアミノ酸 1 pmol 以上(最大注入量 1 μL)を誘導体化することを推奨します。必要なサンプル量を決定するには、次の計算を行います。

計算例:
タンパク質濃度 1.0 mg/mL のサンプルの場合:
最も存在量が少ないアミノ酸に必要なサンプル量を推定する。この例では、このアミノ酸に対してオンカラムで 1 pmol を得るために 0.03 mg/mL が必要であると仮定します。

ステップ 1:最も存在量が少ないアミノ酸のモル濃度を概算します。

ステップ 1:最も存在量が少ないアミノ酸のモル濃度を概算します。

mg をモル数に変換します(タンパク質内のアミノ酸残基の平均分子量は 110)。

これは、このサンプル中で最も存在量が少ないアミノ酸の推定濃度です。

ステップ 2:最も存在量が少ないアミノ酸がオンカラムで 1 pmol になるのに必要な希釈係数を決定します。

ステップ 2:最も存在量が少ないアミノ酸がオンカラムで 1 pmol になるのに必要な希釈係数を決定します。

27 倍の希釈(10 ÷ 0.37 = 27)になります。

誘導体化する前に加水分解物を 27 倍希釈する必要があります。例えば、サンプルの加水分解物 5 μL135 µL の 0.1 N 塩酸 で希釈すると、この目標値になります。

最後に、上記希釈液の 10 μL アリコートを誘導体化バイアルに移します。

6.3.2 AccQ•Tag 誘導体化のための中和

6.3.2 AccQ•Tag 誘導体化のための中和

AccQ•Tag 試薬によって加水分解物に含まれるアミノ酸が完全に誘導体化されるようにするには、サンプルを約 8.2 ~ 10.1 の pH 範囲にバッファー化する必要があります。酸加水分解物が適切に中和されておらず、pH が 8.2 を下回ると、誘導体化が不完全になります。pH の影響はアミノ酸ごとに異なります。すべてのアミノ酸が等しく影響を受けるわけではないことに注意してください。グルタミン酸やアラニンなどの酸性アミノ酸は、セリンやフェニルアラニンよりも大きく影響を受けます。pH は、元のサンプル中のすべてのアミノ酸を正確に定量するための重要な要素です。

  • アミノ酸溶液を 0.1 N 塩酸中に溶解する場合は、10 ~ 20 μLのサンプルを pH 調整しないで誘導体化カクテルに直接移すことができます。注:以下に説明するように、利用可能な誘導体化試薬が過剰であることを確認する必要があります。
  • アミノ酸溶液が高濃度の酸溶液(>0.1 N 塩酸)である場合、同じ濃度の等量の水酸化ナトリウムで中和する必要があります。これは、一括量の追加として行うことも、誘導体化ステップに統合することもできます。
    • 必要量のホウ酸バッファーを NaOH に置き換えて、サンプル中の塩酸を中和します。
    • 誘導体化反応のバイアルミックスに、10 μL の xM NaOH と 60 μL のホウ酸を入れます。10 μL の AA サンプル(xN 塩酸中)を添加します。20 μLの AccQ•Fluor 試薬で誘導体化します。
  • 適切な中和について疑問がある場合は、トライアルサンプルを調製し、使い捨ての pH ストリップを用いて最終的な pH を確認することができます。

警告: 誘導体化試薬を添加したときにサンプルが明るい黄色になる場合は、サンプルの pH が低すぎます。NaOH で中和します。

計算例:
中和に必要な NaOH の量を決定するには、以下の計算を行います。
上記の 6 N 塩酸中の 1.0 mg/mL のタンパク質サンプルについては、サンプル中に十分過剰な誘導体化試薬が存在するようにするために 27 倍希釈する必要があり、以下の計算を適用します。

ステップ 1:希釈後のサンプルの最終酸濃度を計算します。

ステップ 1:希釈後のサンプルの最終酸濃度を計算します。

サンプルの酸濃度をモルからマイクロモルに変換します。

希釈したサンプル中の酸の最終濃度を決定します。

注意:サンプルの加水分解物 5 μL を 135 µL の 0.1 N 塩酸で希釈すると、この目標値になります。

ステップ 2:誘導体化のためにバッファーに添加する塩基(NaOH)の量を決定します。

ステップ 2:誘導体化のためにバッファーに添加する塩基(NaOH)の量を決定します。

誘導体化ごとに必要な NaOH の合計量は 0.31 M です

誘導体化反応に添加するホウ酸バッファーの総量は 70 μL であるため、中和には次の 2 つの方法があります。

誘導体化反応ごとに 10 μL の 0.31 M NaOH および 60 μL のバッファーを加えます。

別のバイアルで、600 μLのホウ酸バッファーと 100 μL の 0.31 M NaOH を混合します。十分混合します。各サンプルに、この混合液 70 μL + 10 μL のサンプル + 20 μL の AccQ•Tag 誘導体化試薬を加えます。

6.3.3 AccQ•Tag 誘導体化のための誘導体化試薬が過剰であることの確認

6.3.3 AccQ•Tag 誘導体化のための誘導体化試薬が過剰であることの確認

すべてのアミノ酸を完全に誘導体化するには、反応に 4 ~ 6 倍のモル過剰量の AccQ•Tag 誘導体化試薬が必要です。試薬が不十分な場合、一部の比較的反応しやすいアミノ酸が完全には誘導体化されません。各アミノ酸の誘導体化率は、アミノ酸の化学的性質によって異なります。例えば、アラニンの回収率は、AccQ•Tag のモル過剰が不十分であることによって顕著に影響を受ける可能性がありますが、フェニルアラニンは影響をそれほど受けません。

試薬バイアルに添加するサンプル量を決定するには、各バイアル中の試薬量を知る必要があります。AccQ•Tag 試薬バイアルには 3 ~ 4 mg の試薬が含まれ、これは試薬 10 ~ 14 μmol に相当します。試薬は 1 mL のアセトニトリルに溶解し、100 μL の誘導体化反応ごとに 20 μL を使用するため、各反応容器には 210 ~ 280 nmol の誘導体化試薬が含まれています。

各反応バイアルには 210 ~ 280 nmol の試薬が含まれており、各サンプルに 4 ~ 6 倍のモル過剰量が必要であるため、各反応には合計 40 ~ 140 nmol 以上のアミンが必要です。

計算例:
タンパク質サンプルの場合、サンプルの重量とアミノ酸の平均重量を使用して、必要な過剰量を推定します。

ステップ 1:アミノ酸原液の mg/mL 濃度をモル濃度に変換します。

ステップ 1:アミノ酸原液の mg/mL 濃度をモル濃度に変換します。

例えば、タンパク質濃度 1 mg/mL で平均分子量 110 の場合、サンプル中のタンパク質量は次のように決定します。

ここで、MW は g/mol から μg/μmol に変換します。

    1 mL = 103 μL

    1 mmol = 103 μmol = 106 nmol

ステップ 2:各反応中のアミノ酸のモル量を決定します。

ステップ 2:各反応中のアミノ酸のモル量を決定します。

モル濃度を決定すると、サンプル中のアミノ酸量が算出されます。

ステップ 1 の 1 mg/mL(セクション 6.3.1 によると、27 倍希釈(5 μL 加水分解物原液 + 135 μL バッファー)が必要)のタンパク質を使用する場合、希釈サンプル 10 μL 中の nmol 数を以下のように計算します。

3.3 nmol は 140 nmol の限界値を十分に下回っているため、サンプルは許容範囲内です。

6.4 HPLC ベースのアミノ酸分析

6.4 HPLC ベースのアミノ酸分析

1992 年にウォーターズコーポレーションが発売開始した HPLC AccQ•Tag メソッドは、2006 年に導入した AccQ•Tag Ultra メソッドと同じプレカラム誘導体化ステップを使用しています。AccQ•Fluor 試薬であるカルバミン酸 6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシンイミジル(AQC)により、第一級アミンと第二級アミンが単一ステップで誘導体化され、非常に安定した蛍光付加イオンが生成されます。AccQ•Tag メソッドは、事前にパッケージ化した試薬と様々な文書を含むシステムパッケージとして提供しています。AccQ•Tag ケミストリーパッケージには、タンパク質およびペプチドの加水分解物であるアミノ酸を最大 250 回分析するのに必要なアイテムが含まれています。

AccQ•Tag 誘導体化キットには、5 セットの誘導体化試薬が含まれています。各試薬セットには、以下の各バイアルが 1 本ずつ含まれています。

  • AccQ•Fluor ホウ酸バッファー – サンプルに添加して、誘導体化に最適な pH を確保。
  • AccQ•Fluor 試薬粉末 – カルバミン酸 6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシンイミジル。(AQC)誘導体化試薬(安定性を最大にするために乾燥状態で出荷)。
  • AccQ•Fluor 試薬希釈液 – アセトニトリル(誘導体化のための試薬の再溶解に使用)。
図 11.Waters AccQ•Tag メソッドを用いた、アミノ酸の HPLC 分析の代表的なクロマトグラム

6.5 UPLC ベースのアミノ酸分析ソリューション

6.5 UPLC ベースのアミノ酸分析ソリューション

Waters UPLC アミノ酸分析ソリューションは、すぐに使えるアミノ酸分析用に包括的に設計されています。プレカラム誘導体化したアミノ酸を、付属の AccQ•Tag Ultra、逆相 UPLC カラム、溶離液およびメソッドを使用して、Waters ACQUITY UPLC システムで分離します。頑健な誘導体化ケミストリー、安定したクロマトグラフィーベースライン、および優れたアミノ酸の分離能により、正確、精密かつ一貫した定量結果が得られます。

UPLC アミノ酸分析ソリューションには以下が含まれます。

  • Waters AccQ•Tag Ultra ケミストリーの消耗品(カラム、試薬、溶離液など) – すべてアミノ酸分析アプリケーションで QC 試験済み
  • Empower 2 ソフトウェア、事前設定済みプロジェクト、メソッドおよびレポート型式
  • 全システムおよびアプリケーションレベルのサポートマニュアル

Waters ACQUITY UPLC システムは、チューナブル UV 検出器、PDA 検出器、蛍光検出器の 3 種類の光学検出器に対応しています。

図 12.Waters UPLC アミノ酸分析ソリューション

6.5.1 さまざまなサンプルマトリックスからの正確なアミノ酸分析

6.5.1 さまざまなサンプルマトリックスからの正確なアミノ酸分析

UPLC アミノ酸分析ソリューションには、同じ装置とケミストリーを使用する 2 つの完全なメソッドが含まれています。1 つ目はタンパク質加水分解物に由来するアミノ酸に適しています。2 つ目は、細胞培養液や発酵培養液のような工程サンプルに含まれるより多数の遊離アミノ酸に適しています。これらのメソッドでは、AccQ•Tag Ultra 溶離液 A の希釈係数と分離カラム温度が異なります。ユーザー側で溶離液 A または溶離液 B の pH を調整したり組成を変更したりする必要はありません。

図 13.UPLC AccQ•Tag ソリューションの代表的なクロマトグラム。(A)UPLC アミノ酸分析ソリューション加水分解メソッドを用いた標準アミノ酸の分離。(B)UPLC アミノ酸分析ソリューション細胞培養メソッドを用いた、より大きなセットの標準アミノ酸の分離。移動相や組成を変更する必要はありません。

6.5.2 加水分解タンパク質のアミノ酸分析

6.5.2 加水分解タンパク質のアミノ酸分析

タンパク質のアミノ酸分析は、構造決定の一環として、またサンプル中の総タンパク質量の測定に使用されます。サンプルは分析の前に加水分解されます。構造解析では、アミノ酸の実測モル比を配列から予想される値と比較します。

タンパク質量の場合、アミノ酸の重量を合計します。このタンパク質濃度の測定値は、サンプル組成が一般的なタンパク質アッセイを妨害する場合の吸光係数の計算に使用します。各アミノ酸の重量パーセントと総タンパク質質量の両方を、食品および飼料の栄養成分の評価に使用します。Waters UPLC アミノ酸分析ソリューションにより、これらすべてのアプリケーションにわたる頑健なルーチン分析が可能になります。

図 14.純粋なタンパク質加水分解のアミノ酸分析
図 15.加水分解した家禽飼料のアミノ酸分析

関連情報

従来の HPLC または UHPLC 装置を使用して、タンパク質/ペプチド加水分解物、生体液、飼料、食品、医薬品製剤、そして多種多様なその他のサンプルから、正確なアミノ酸組成を取得できます。

HPLC、UHPLC、および UPLC 用の Waters AccQ•Tag および AccQ•Tag Ultra アミノ酸分析用標準品およびキットを使用することによって、細胞培養培地、タンパク質加水分解物、食品、および飼料中のアミノ酸を正確に分離、同定、定量できます。

ウォーターズは、正確なアミノ酸分析のための、非常に信頼性の高い 3 つの分析法を提供しています。これら 3 つの分析法ではすべて、プレカラム誘導体化メソッドに続いて、UV 吸光度または蛍光検出のいずれかを使用してピークを十分分離し、オンライン検出を行う逆相クロマトグラフィーを利用しています。

Waters サンプル前処理キットを用いてオートメーションワークステーションの機能を最大限に発揮させ、Waters ワークフローをシームレスに自動化して、ラボの効率を改善できます。
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