食品・飼料サンプルの加水分解

食品・飼料サンプルの加水分解

3.1 はじめに

3.1 はじめに

食品や飼料は、成長や栄養のための必須アミノ酸を含む化学化合物で構成されています。アミノ酸含量の分析は、適切な栄養を保証するために重要です。しかし、これらの製品はバルク工程で製造されています。医薬品の製造と同様、バルク工程では、製造工程における生産量が様々になる場合があります。代表的なサンプルの構成成分の検討が必要です。通常、サブサンプリング戦略が必要です。これらの製品のアミノ酸分析では、サンプルの総タンパク質組成を適切に分析するために複数の方法が必要です。食品や飼料は大量に製造され、タンパク質以外の成分が含まれているため、液相加水分解が推奨されます。

注:含硫アミノ酸であるシステインとメチオニンおよび別のアミノ酸トリプトファンは、標準的な酸加水分解では不安定になります。これらのアミノ酸は、別の方法を用いることで効果的に分析することができます。

このセクションでは、3 種類の加水分解手順について説明します。

  • 酸加水分解 – 総タンパク質含有量と組成の測定
  • 過ギ酸酸化 – 含硫アミノ酸であるシステインおよびメチオニンの測定
  • アルカリ加水分解 – トリプトファン回収率の評価

3.2 食品および飼料の酸加水分解

3.2 食品および飼料の酸加水分解

タンパク質中に結合しているアミノ酸を分析する場合、ペプチド結合を壊し、アミノ酸を遊離させて分析する必要があります(図 1)。飼料タンパク質サンプルを加水分解するには、サンプル物質の pH と固体が存在することを考慮する必要があります。前のセクションで説明したように、加水分解の速度や程度は、タンパク質中に存在するアミノ酸ごとに異なります。これは特に、食品中の結合タンパク質に当てはまります。加水分解法と同様に、パラメーターは慎重に実験して選択する必要があります。

飼料の分析では、サンプル前処理に関する以下の 3 つの要素を考慮する必要があります。

  1. サンプルの処理
  2. 加水分解するサンプル量
  3. 加水分解に使用する酸の容量

3.2.1 サンプルの処理

通常、飼料穀物や類似のサンプルは均一ではありません。サンプルをできるだけ均一にするには、微細な粉末に破砕する必要があります。高脂肪含有サンプルは、最終的な破砕の前に標準的な手順で脱脂することができます。微細粉末を用いると、飼料タンパク質の加水分解が効果的に行えます。AOAC 法(4.1.11, 994.12b, J.AOAC Int.88, 2005, 飼料中のアミノ酸の分析)では、試験サンプルを 0.25 mm(60 メッシュ)のふるい(250 μm 粒子サイズ)を通過するまで破砕することが必要とされています。

3.2.2 サンプル量

飼料のアミノ酸分析のための AOAC 法では、飼料の分析で使用するサンプル量を決定するために、以下の計算を使用することを推奨しています。

試験部分のおおよその量を次のように計算します。

Ws = 1000/Ns

ここで、Ns は試験部分の窒素含有量(%)、Ws は窒素含有量 10 mg に相当する被験物質の重量(mg)。

一般的に、これは分析した各サンプルの物質 100 ~ 1000 mg の範囲内に収まります。

3.2.3 酸の容量

前述したように、タンパク質サンプルを効果的に加水分解するには、過剰な重量の酸が必要になります。飼料でも同様です。ただし、AOAC 法 994.12 では、セクション 2.1.2 で説明した 100 倍過剰ではなく、サンプル重量に加える酸の重量の比は 50 ~ 500 倍の範囲になります。この範囲、および飼料にタンパク質以外の粒子状物質が多量に含まれるという事実は、このメソッドを飼料の分析にルーチン使用する前に、慎重に範囲を調べる試験が必要であることを示唆しています。

3.2.4 内部標準試料

内部標準試料(IS)を使用することで、サンプル中の個々のアミノ酸の加水分解のばらつきを最もよく補正することができます。ウォーターズでは、IS として、UPLC での AccQ•Tag Ultra にはノルバリン(NVA)を、HPLC での AccQ•Tag には α-アミノ酪酸(AABA)またはノルロイシンを使用することを推奨しています。AOAC 法 994.12 で飼料の分析用に推奨されている内部標準試料はノルロイシンです。IS を選択する際には、クロマトグラフィーでのアミノ酸のピーク間で望ましい分離が得られるように注意する必要があります。

3.2.5 AOAC 994.12 飼料中のアミノ酸

この文献には、飼料中のアミノ酸の分析に適応できるさまざまなメソッドが含まれています。ここで示すメソッドは、AOAC メソッド 994.12 飼料中のアミノ酸から適用したものです。

3.2.5.1 器具およびガラス製品:

3.2.5.1 器具およびガラス製品:
  • 分析天秤、可読性 ±0.1 mg
  • 上皿天秤
  • ポリエチレン製ボトル(50 mL)
  • 消化チューブ、沸騰フラスコが最適
  • 消化ブロック、加熱マントルまたは水浴が最適
  • フィルターユニット、0.22 μm(Millex GS、Millipore が最適)
  • pH 2.0、4.0、7.0 のバッファーで校正済みの pH メーター。
  • 還流冷却器
  • ロータリーエバポレーター
  • ガラスビーカー(250 mL、1000 mL)
  • 三角フラスコ(150 mL)
  • 丸底蒸発フラスコ(1000 mL)
  • メスシリンダー(100、500、1000 mL)
  • メスフラスコ(1000 mL)
  • ホールピペット(10 mL、20 mL)
  • ガラスろ過器(10 ~ 15 μm 多孔性)
  • シリンジ

3.2.5.2 試薬

3.2.5.2 試薬
  • 結晶 DL-ノルロイシン
  • 濃塩酸
  • 水酸化ナトリウム、30% 溶液(30 g/100 mL)
  • 結晶フェノール
  • チオジグリコール、98% 溶液
  • クエン酸三ナトリウム二水和物
  • pH バッファー(pH 2.0、4.0、7.0)

3.2.5.3 溶液の調製

3.2.5.3 溶液の調製

クエン酸ナトリウムバッファー(pH 2.20)

  1.  クエン酸三ナトリウム二水和物 19.60 g を 1000 mL ビーカー中に秤量します。
  2.  約 800 mL の H2O に溶解します。
  3.  撹拌しながら 10 mL の 98% チオジグリコール溶液と 15 mL の塩酸を加えます。
  4.  溶液を定量的に 1000 mL メスフラスコに移し、H2O で標線まで希釈します。
  5.  バッファーをガラスろ過器を通してろ過します。
  6.  塩酸または 2 M NaOH で pH を 2.20 に調整します。

6 M 塩酸-フェノール溶液

  1. 1 g のフェノール結晶を風袋を差し引いた 1000 mL ビーカーに秤量します。
  2. 500 mL の H2O 中に結晶を溶かします。撹拌しながら 500 mL の塩酸をゆっくりと加えます。

塩酸溶液(1 M)

  1.  約 800 mL の H2O を 1000 mL のメスフラスコに入れます。
  2.  ピペットを使用して 83.3 mL の塩酸を加えます。
  3.  H2O で標線まで希釈し、完全に混合します。

塩酸溶液(0.1 M)

  1.  約 800 mL の H2O を 1000 mL のメスフラスコに入れます。
  2.  ピペットを使用して 100 mL の 1 M 塩酸を加えます。
  3.  H2O で標線まで希釈し、完全に混合します。

水酸化ナトリウム溶液(2 M NaOH)

  1.  80.0 g の NaOH を風袋を差し引いた 1000 mL ビーカーに秤量します。
  2.  ビーカー中のペレットをゆっくりと約 600 mL の H2O に溶解します。
  3.  溶液を冷やし、1000 mL メスフラスコに定量的に移します。
  4.  H2O で標線まで希釈し、完全に混合します。

内部標準試料溶液

  1.  195 ~ 200 mg の DL-ノルロイシン結晶を 150 mL の風袋を差し引いた三角フラスコに正確に秤量します。
  2.  100 mL の 1 M 塩酸に溶解します。
  3.  溶液を定量的に 1000 mL メスフラスコに移し、H2O で標線まで希釈します。

3.2.5.4 加水分解の手順

3.2.5.4 加水分解の手順
  1. 100 ~ 1000 mg の細かく破砕した試験サンプルを 0.1 mg 単位で(約 10 mg 窒素含量相当)ラベル付けした消化チューブに正確に秤量します。上記のセクションで説明した計算を使用して、使用するサンプルの実際の量を決定します。
  2. 50 mL の 6 M 塩酸-フェノール溶液を秤量したサンプルに加え、軽く撹拌します。溶液に 2 ~ 3 個の沸騰石を加えます。
  3. 排気フード内で、温度を平衡化した加熱ブロックまたは水浴を使用して、110 ~ 120 ℃ で 24 時間、還流させて加水分解します。
  4. 消化チューブの加熱を止め、室温まで冷まします。
  5. ホールピペットを使用して、各試験溶液に 20 mL のノルロイシン内部標準試料溶液を加えます。フラスコを旋回させて溶液を混合します。
  6. 加水分解物を、ガラスろ過器を通して、ラベル付けした 1000 mL 丸底蒸発フラスコにろ過します。
  7. フラスコをロータリーエバポレーターに接続し、60 ℃ で蒸発乾固させます。
  8. 約 20 mL の H2O を加えて洗浄し、蒸発を繰り返します。洗浄と蒸発のステップを 2 回繰り返します。
  9. エバポレーターからフラスコを取り外します。
  10. 蒸発させた加水分解物に 50 mL のクエン酸ナトリウムバッファーを加え、よく混合してラベル付けした 50 mL ポリエチレンボトルに移します。
  11. これで、サンプルを誘導体化する準備ができました。

3.3 システイン、シスチン、メチオニンの測定のための過ギ酸酸化

3.3 システイン、シスチン、メチオニンの測定のための過ギ酸酸化

システインとメチオニンは、飼料物質の分析において重要なアミノ酸であり、いずれも飼料を摂取する動物の成長制限因子となります。これらの特定のアミノ酸には標準的な酸加水分解の条件ではうまくいかないため、通常は過ギ酸を使用する代替法による酸化を行います。このアプローチでは、システインとシスチンをシアヌル酸に、メチオニンをメチオニンスルホンに変換します(図 3)。これでサンプルを酸加水分解して効果的に誘導体化することができます。

文献では、過ギ酸酸化には複数のバージョンがあります。全体的な工程は似ていますが、詳細が異なります。このガイドでは、開始点として使用できる可能性のある 2 つの手順について説明します。1 つ目の方法は AOAC 994.12 からのものです。2 つ目の方法は、MacDonald et al., 1985 をベースにした別の方法です。特定のアプローチを採用する前に、慎重に評価して最適化する必要があります。

3.3.1 過ギ酸酸化、メソッド 1、AOAC 994.12

3.3.1 過ギ酸酸化、メソッド 1、AOAC 994.12

3.3.1.1 器具とガラス製品

3.3.1.1 器具とガラス製品
  • 分析天秤、可読性 ±0.1 mg
  • 上皿天秤
  • ポリエチレン製ボトル(50 mL)
  • 消化チューブ、沸騰フラスコが最適
  • 消化ブロック、加熱マントルまたは水浴が最適
  • フィルターユニット、0.22 μm(Millex GS、Millipore が最適)
  • pH 2.0、4.0、7.0 のバッファーで校正済みの pH メーター。
  • 還流冷却器
  • ロータリーエバポレーター
  • ガラスビーカー(250 mL、1000 mL)
  • 三角フラスコ(150 mL)
  • 丸底蒸発フラスコ(1000 mL)
  • メスシリンダー(100、500、1000 mL)
  • メスフラスコ(1000 mL)
  • ホールピペット(10 mL、20 mL)
  • ガラスろ過器(10 ~ 15 μm 多孔性)
  • 氷浴
  • シリンジ

3.3.1.2 試薬

3.3.1.2 試薬
  • ギ酸(88%)
  • 過酸化水素(30%)
  • ピロ亜硫酸ナトリウム
  • 結晶 DL-ノルロイシン
  • 濃塩酸
  • 水酸化ナトリウム、30% 溶液(30 g/100 mL)
  • 結晶フェノール
  • チオジグリコール、98% 溶液
  • クエン酸三ナトリウム二水和物
  • pH バッファー(pH 2.0、4.0、7.0)

3.3.1.3 溶液の調製

3.3.1.3 溶液の調製

クエン酸ナトリウムバッファー(pH 2.20)

  1. クエン酸三ナトリウム二水和物 19.60 g を 1000 mL ビーカー中に秤量します。
  2. 約 800 mL の H2O に溶解します。
  3. 撹拌しながら 10 mL の 98% チオジグリコール溶液と 15 mL の塩酸を加えます。
  4. 溶液を定量的に 1000 mL メスフラスコに移し、H2O で標線まで希釈します。
  5. バッファーをガラスろ過器を通してろ過します。
  6. 塩酸または 2 M NaOH で pH を 2.20 に調整します。

6 M 塩酸-フェノール溶液

  1. 1 g のフェノール結晶を風袋を差し引いた 1000 mL ビーカーに秤量します。
  2. 500 mL の H2O 中に結晶を溶かします。撹拌しながら 500 mL の塩酸をゆっくりと加えます。

塩酸溶液(1 M)

  1. 約800 mL の H2O を 1000 mL メスフラスコに入れます。
  2. ピペットを使用して 83.3 mL の塩酸を加えます。
  3. H2O で標線まで希釈し、完全に混合します。

塩酸溶液(0.1 M)

  1. 約800 mL の H2O を 1000 mL メスフラスコに入れます。
  2. ピペットを使用して 100 mL の 1 M 塩酸を加えます。
  3. H2O で標線まで希釈し、完全に混合します。

水酸化ナトリウム溶液(2 M NaOH)

  1. 80.0 g NaOH を風袋を差し引いた 1000 mL ビーカーに秤量します。
  2. ビーカー中のペレットをゆっくりと約 600 mL の H2O に溶解します。
  3. 溶液を冷やし、1000 mL メスフラスコに定量的に移します。
  4. H2O で標線まで希釈し、完全に混合します。

内部標準試料溶液

  1. 195 ~ 200 mg の DL-ノルロイシン結晶を 150 mL の風袋を差し引いた三角フラスコに正確に秤量します。
  2. 100 mL の 1 M 塩酸に溶解します。溶液を定量的に 1000 mL メスフラスコに移し、H2O で標線まで希釈します。

過ギ酸試薬

  1. 排気フード内で調製します。25 mg のフェノール結晶を 25 mL の試験チューブに秤量します。
  2. マイクロピペットを使用して、0.5 mL の 30% H2O2 を加えます。
  3. 88% ギ酸溶液 4.5 mL を添加します。
  4. 試験チューブに栓をし、混合液を室温で 30 分間放置します。
  5. 30 分後、試験チューブを氷浴に入れ、過ギ酸の混合液を 15 分間冷却します。
  6. 試薬は使用直前に調製してください。

3.3.1.4 過ギ酸酸化

3.3.1.4 過ギ酸酸化
  1. 100 ~ 1000 mg の細かく破砕した試験サンプルを 0.1 mg 単位で(約 10 mg 窒素含量相当)ラベル付けした消化チューブに正確に秤量します。前に説明した計算を使用して、使用するサンプルの実際の量を決定します。
  2. 各チューブにマグネチックスターラーを入れ、消化チューブを氷浴(0 ℃)に入れます。
  3. 過ギ酸と試験部分の両方を 15 分以上冷却した後、各消化チューブに 5 mL の過ギ酸試薬を加え、すべてのチューブに栓またはキャップをして 15 分間撹拌します。
  4. 消化チューブを氷浴に戻し、サンプルを 16 時間酸化させます。
  5. ガラス栓を外し、約 0.84 g のピロ亜硫酸ナトリウムを加えて、過ギ酸を分解します。15 分間撹拌して、SO2 を遊離させます。
  6. これで、サンプルを酸加水分解段階に進める準備ができました。

3.3.1.5 加水分解の手順

3.3.1.5 加水分解の手順
  1.  50 mL の 6 N 塩酸-フェノール溶液を秤量した部分に加え、軽く撹拌します。この溶液に 2 ~ 3 個の沸騰石を加えます。
  2.  排気フード内で、温度を平衡化した加熱ブロックまたは水浴を使用して、110 ~ 120 ℃ で 24 時間、還流させて加水分解します。
  3.  消化チューブの加熱を止め、室温まで冷まします。
  4.  ホールピペットを使用して、各試験溶液に 20 mL のノルロイシン内部標準試料溶液を加えます。フラスコを旋回させて溶液を混合します。
  5.  ステップ(a ~ d)または(e ~ g)に進みます。
    1. 加水分解物を、ガラスろ過器を通して、ラベル付けした 1000 mL 丸底蒸発フラスコにろ過します。
    2. フラスコをロータリーエバポレーターに接続し、真空下 40 ℃ で約 0.5 mL になるまで蒸発させます。注: 乾固するまで溶液を蒸発させないでください。
    3. エバポレーターからフラスコを取り外します。
    4. 蒸発させた加水分解物に 50 mL のクエン酸ナトリウムバッファーを加え、よく混合してラベル付けした 50 mL ポリエチレンボトルに移します。
    5. 加水分解物をガラスろ過器を通して 250 mL の真空フラスコにろ過してから、ろ過液を 250 mL ビーカーに移します。
    6. ビーカーを氷浴に入れます。
    7. 撹拌しながら約 40 mL の 7.5 M NaOH で加水分解物を部分的に中和します。注:温度は 40 ℃を超えてはなりません )2 M NaOH を使用して pH を 2.20 に調整します。

     6. これで、サンプルを誘導体化する準備ができました。

3.3.2 MacDonald et al, 1985 に基づく、シスチンおよびメチオニンの過ギ酸酸化および酸加水分解(メソッド 2)

3.3.2 MacDonald et al, 1985 に基づく、シスチンおよびメチオニンの過ギ酸酸化および酸加水分解(メソッド 2)

注記:このアッセイに関するさまざまな参考文献があります。 過ギ酸と臭化水素の量や蒸発温度について、文献で一致した見解はありません。量や温度を変更すると、ステップ 7 の蒸発時間に影響が出ます。

3.3.2.1 材料

3.3.2.1 材料
  • キャップ付き 25 × 150 mm チューブ
  • 氷と氷浴
  • ホールピペット
  • 真空エバポレーター
  • 清浄な窒素源
  • オーブンまたは加熱ブロック
  • 容積測定用ガラス製品
  • 過ギ酸
  • 過酸化水素
  • ギ酸
  • 超純水
  • HBr 溶液(48% 重量)

3.3.2.2 過ギ酸試薬

3.3.2.2 過ギ酸試薬
  1. 9 倍容量の 88% ギ酸に、1 倍容量の 30% 過酸化水素を加えます。
  2. 混合液を、頻繁に旋回させながら 1 時間放置します。
  3. 混合液を氷浴中に 30 分間放置した後、直ちに使用します。

3.3.2.3 手順

3.3.2.3 手順
  1.  タンパク質約 20 mg(mg 単位)に対応するサンプルを 25 × 150 mm のチューブに秤量します。
  2.  サンプルを氷浴に入れて 30 分間放置します。
  3.  10 mL の冷たい過ギ酸をサンプルに加え、穏やかに旋回させ、Teflon 裏打ちキャップを付けます。
  4.  サンプルは、(十分に氷がある状態で)0 ℃ で一晩(16 時間)、冷蔵庫に保管してください。
  5.  16 時間後、0 ℃ のままのサンプルに、オクタノールを 3 滴加えてから、3 mL の冷却 48% HBr を加え、サンプルをゆっくりと旋回させます。このステップは排気フード内で行ってください。サンプルを 0 ℃ で 30 分間放置します。
  6.  真空エバポレーターで 37 ℃ で乾燥させます。これには 1 ~ 2 時間かかります。
  7.  5 mL の 6 N 塩酸をチューブに添加します。窒素で 30 秒間パージしてから、すぐにキャップを閉めます。
  8.  サンプルを 110 ℃ のオーブン中に 24 時間放置します。
  9.  サンプルをオーブンから取り出して冷まします。
  10.  10 mL の希釈済み内部標準試料(5.0 μmol/mL)を加え、完全に混合します。注記: 使用する内部標準の実際の濃度は、装置に注入するのと同じ量になるように計算する必要があります。
  11.  サンプルを定量的に 250 mL のメスフラスコに移し、HPLC グレードの水でサンプルチューブをすすぎ、フラスコをすすぎ液で標線まで満たします。
  12.  ステップ 12 のサンプル約 1 mL を 0.45 μm サンプルフィルターでろ過します。誘導体化をすぐに行わない場合は、キャップしたサンプルを冷凍庫に保管します。注記:このろ過ステップを行う代わりに、遠心分離を行うことができます。遠心分離して透明な上清を得ます。

3.4 飼料中のトリプトファンの分析向けのアルカリ加水分解

3.4 飼料中のトリプトファンの分析向けのアルカリ加水分解

酸加水分解の標準条件ではトリプトファン(Trp)は不安定で、効果的に分析することができません。飼料中のこのアミノ酸を遊離および分析するための代替法として、塩基加水分解が提唱されています。このメソッドでは、4.2 M NaOH を使用してタンパク質を加水分解します。このメソッドの利点は、完了時に誘導体化ステップが不要であることです。280 nmでの UV 検出を使用する装置分析のみが必要です。

ここで説明する手順は、食料品および食品・飼料中のトリプトファン分析のための AOAC メソッド 988.15 に基づいています。

3.4.1 器具と材料

3.4.1 器具と材料
  • 改良ミクロ Kjeldahl フラスコ(Ace Glass, Inc. から入手可能) – 長さ 15 cm のネックが付いた内径 12 mm の 25 mL ミクロ Kjeldahl フラスコ。ネックによって、フラスコの球の上約 5 cm で内径が 6 mm に狭くなります。
  • 真空ポンプ
  • メンブレンフィルター器具および 0.45 μm のフィルター
  • ドライアイス
  • 水浴
  • 水浴用のエタノール
  • ホールピペットとガラス製品
  • pH メーター

3.4.2 試薬

3.4.2 試薬
  • Milli-Q システム(Millipore Corp.)または同等品で精製した水
  • 4.2 M NaOH
  • 1-オクタノール
  • pH 4.25 のクエン酸ナトリウムバッファー溶液
  • 塩酸
  • トリプトファン標準溶液
    • 原液 — 1 mg/mL。250 mg の L-トリプトファンを、塩酸を 6 滴加えた 100 mL の H2O に溶解します。H2O で 250 mL に希釈します。
    • 希釈溶液 I — 0.1 mg/mL。10 mL の原液を H2O で 100 mL に希釈します。
    • 希釈溶液 II — 0.04 mg/mL。4 mL の原液を H2O で 100 mL に希釈します。
    • 標準溶液は、使用していないときは冷蔵します。新しい溶液を毎月調製します。

3.4.3 試験サンプルの調製

3.4.3 試験サンプルの調製
  1.  1 mm のふるいを取り付けた遠心式製粉機で試験室サンプルを破砕し、完全に混合します。
  2.  改良ミクロ Kjeldahl フラスコに 100 mg タンパク質を含む試験部分を秤量します。
  3.  5% を超える脂質を含む試験サンプルの場合、
    1. フラスコ中の秤量済み試験部分に 10 mL の石油エーテルを加えます。
    2. ゆっくり旋回させて、20 分間混合して超音波処理します。落ち着かせます。必要に応じて遠心分離します。
    3. 固体を除去しないように注意して、石油エーテルをできるだけ多く吸い出します。
    4. N2 の穏やかな気流下で残った石油エーテルを蒸発させます。加水分解に進みます。
  4.  5% 未満の脂質を含む試験サンプルの場合、加水分解に進みます。

3.4.4 塩基加水分解の手順

3.4.4 塩基加水分解の手順
  1.  N2 を 10 分間バブリングして 4.2 M NaOH を脱気します。
  2.  各フラスコに 10 mL の脱気済み 4.2 M NaOH を加えます。
  3.  1-オクタノールを 3 滴添加します。
  4.  処理済み溶液をドライアイス/エタノール浴中で直ちに凍結します。次に、フラスコをエタノール浴から取り出し、10 mm になるまで真空引きします。
  5.  真空をオフにし、フラスコを密閉します。
  6.  密閉したフラスコを室温の H2O を含むビーカーに入れ、試験溶液が溶けるまで放置します。
  7.  フラスコを 110 ℃ のオーブンに 20 時間放置します。
  8.  フラスコを室温まで冷まします。
  9.  フラスコのネックを 1 mL の pH 4.25 のクエン酸ナトリウムバッファーですすぎ、すすき液をビーカーに集めます。
  10.  加水分解物を同じ 50 mL ビーカーに定量的に移し、フラスコを pH 4.25 のクエン酸ナトリウムバッファーで 2 回すすぎます。
  11.  3.5 mL の塩酸で溶液を中和し、激しく撹拌します。pH を 4.25 ± 0.05 に調整します。
  12.  この溶液を 25 mL メスフラスコに定量的に移し、H2O で標線まで希釈します。
  13.  溶液を 40 mL の遠心チューブに入れ、1150 G で 20 分間遠心分離します。
  14.  ガラスフィルターペーパー(Whatman GF/A)を通して上清をろ過します。
  15.  ろ液を遠心チューブに移し、23,000 G で 10 分間遠心分離します。

注:この時点で、上清のアリコートを、誘導体化を行わずに UV (289 nm)分析することができます。

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