食品や飼料は、成長や栄養のための必須アミノ酸を含む化学化合物で構成されています。アミノ酸含量の分析は、適切な栄養を保証するために重要です。しかし、これらの製品はバルク工程で製造されています。医薬品の製造と同様、バルク工程では、製造工程における生産量が様々になる場合があります。代表的なサンプルの構成成分の検討が必要です。通常、サブサンプリング戦略が必要です。これらの製品のアミノ酸分析では、サンプルの総タンパク質組成を適切に分析するために複数の方法が必要です。食品や飼料は大量に製造され、タンパク質以外の成分が含まれているため、液相加水分解が推奨されます。
注:含硫アミノ酸であるシステインとメチオニンおよび別のアミノ酸トリプトファンは、標準的な酸加水分解では不安定になります。これらのアミノ酸は、別の方法を用いることで効果的に分析することができます。
このセクションでは、3 種類の加水分解手順について説明します。
タンパク質中に結合しているアミノ酸を分析する場合、ペプチド結合を壊し、アミノ酸を遊離させて分析する必要があります(図 1)。飼料タンパク質サンプルを加水分解するには、サンプル物質の pH と固体が存在することを考慮する必要があります。前のセクションで説明したように、加水分解の速度や程度は、タンパク質中に存在するアミノ酸ごとに異なります。これは特に、食品中の結合タンパク質に当てはまります。加水分解法と同様に、パラメーターは慎重に実験して選択する必要があります。
飼料の分析では、サンプル前処理に関する以下の 3 つの要素を考慮する必要があります。
通常、飼料穀物や類似のサンプルは均一ではありません。サンプルをできるだけ均一にするには、微細な粉末に破砕する必要があります。高脂肪含有サンプルは、最終的な破砕の前に標準的な手順で脱脂することができます。微細粉末を用いると、飼料タンパク質の加水分解が効果的に行えます。AOAC 法(4.1.11, 994.12b, J.AOAC Int.88, 2005, 飼料中のアミノ酸の分析)では、試験サンプルを 0.25 mm(60 メッシュ)のふるい(250 μm 粒子サイズ)を通過するまで破砕することが必要とされています。
飼料のアミノ酸分析のための AOAC 法では、飼料の分析で使用するサンプル量を決定するために、以下の計算を使用することを推奨しています。
試験部分のおおよその量を次のように計算します。
Ws = 1000/Ns
ここで、Ns は試験部分の窒素含有量(%)、Ws は窒素含有量 10 mg に相当する被験物質の重量(mg)。
一般的に、これは分析した各サンプルの物質 100 ~ 1000 mg の範囲内に収まります。
前述したように、タンパク質サンプルを効果的に加水分解するには、過剰な重量の酸が必要になります。飼料でも同様です。ただし、AOAC 法 994.12 では、セクション 2.1.2 で説明した 100 倍過剰ではなく、サンプル重量に加える酸の重量の比は 50 ~ 500 倍の範囲になります。この範囲、および飼料にタンパク質以外の粒子状物質が多量に含まれるという事実は、このメソッドを飼料の分析にルーチン使用する前に、慎重に範囲を調べる試験が必要であることを示唆しています。
内部標準試料(IS)を使用することで、サンプル中の個々のアミノ酸の加水分解のばらつきを最もよく補正することができます。ウォーターズでは、IS として、UPLC での AccQ•Tag Ultra にはノルバリン(NVA)を、HPLC での AccQ•Tag には α-アミノ酪酸(AABA)またはノルロイシンを使用することを推奨しています。AOAC 法 994.12 で飼料の分析用に推奨されている内部標準試料はノルロイシンです。IS を選択する際には、クロマトグラフィーでのアミノ酸のピーク間で望ましい分離が得られるように注意する必要があります。
この文献には、飼料中のアミノ酸の分析に適応できるさまざまなメソッドが含まれています。ここで示すメソッドは、AOAC メソッド 994.12 飼料中のアミノ酸から適用したものです。
クエン酸ナトリウムバッファー(pH 2.20)
内部標準試料溶液
システインとメチオニンは、飼料物質の分析において重要なアミノ酸であり、いずれも飼料を摂取する動物の成長制限因子となります。これらの特定のアミノ酸には標準的な酸加水分解の条件ではうまくいかないため、通常は過ギ酸を使用する代替法による酸化を行います。このアプローチでは、システインとシスチンをシアヌル酸に、メチオニンをメチオニンスルホンに変換します(図 3)。これでサンプルを酸加水分解して効果的に誘導体化することができます。
文献では、過ギ酸酸化には複数のバージョンがあります。全体的な工程は似ていますが、詳細が異なります。このガイドでは、開始点として使用できる可能性のある 2 つの手順について説明します。1 つ目の方法は AOAC 994.12 からのものです。2 つ目の方法は、MacDonald et al., 1985 をベースにした別の方法です。特定のアプローチを採用する前に、慎重に評価して最適化する必要があります。
クエン酸ナトリウムバッファー(pH 2.20)
6. これで、サンプルを誘導体化する準備ができました。
注記:このアッセイに関するさまざまな参考文献があります。 過ギ酸と臭化水素の量や蒸発温度について、文献で一致した見解はありません。量や温度を変更すると、ステップ 7 の蒸発時間に影響が出ます。
酸加水分解の標準条件ではトリプトファン(Trp)は不安定で、効果的に分析することができません。飼料中のこのアミノ酸を遊離および分析するための代替法として、塩基加水分解が提唱されています。このメソッドでは、4.2 M NaOH を使用してタンパク質を加水分解します。このメソッドの利点は、完了時に誘導体化ステップが不要であることです。280 nmでの UV 検出を使用する装置分析のみが必要です。
ここで説明する手順は、食料品および食品・飼料中のトリプトファン分析のための AOAC メソッド 988.15 に基づいています。
注:この時点で、上清のアリコートを、誘導体化を行わずに UV (289 nm)分析することができます。