アミノ酸の加水分解および分析に関する包括的ガイド
はじめに
食品、飼料、バイオ医薬品の研究、開発および製品化において、アミノ酸を正確に分離、同定、定量する作業は困難です。これらのアプリケーションに共通するのは、ペプチドやタンパク質などの結合アミノ酸を分析するワークフローの重要な最初のステップとして、適切なサンプル加水分解が必要である点です。加水分解により、遊離アミノ酸の分析が可能になります。これらの遊離アミノ酸は、イオン交換または逆相クロマトグラフィーのいずれかの方法で分離することができます。
このドキュメントでは、サンプル前処理ワークフローの課題を考慮して、サンプル加水分解の有用なガイドラインを提供するようにまとめました。このドキュメントに含まれる資料は、このプロセスの開始点としての役割のみを果たします。サンプルの種類とその複雑さによっては、記載されている加水分解法の改変が必要になる場合があります。加水分解または特定の手順に関する追加情報やトラブルシューティングのヒントについては、加水分解装置の製造者または適切な機関(Association of Official Analytical Chemists(AOAC))にお問い合わせください。ウォーターズでは、特定のサンプルの種類に関するガイダンスを提供できません。
ウォーターズでは、加水分解したサンプル(遊離アミノ酸)を HPLC または UPLC によって分析するために、プレカラム誘導体化を使用して、アミノ酸を光学検出によって分析する多くのソリューションを提供しています。これはワークフローに不可欠な要素であるため、Waters HPLC(AccQ•Tag)メソッドおよび UPLC アミノ酸分析(AccQ•Tag Ultra)ソリューションについても簡単に紹介します。このドキュメントに、Waters Pico-Tag(フェニルイソチオシアネートプレカラム誘導体化試薬)のアミノ酸分析法に関する情報は含まれていません。Pico-Tag メソッドは現在も使用可能ですが、AccQ•Tag ベースのメソッドではより大きな性能上のメリットが得られるため、新しいアプリケーションではこれを推奨しています。
注:この文書は、精製タンパク質/ペプチド、食品、および飼料の加水分解およびアミノ酸分析に特化しています。 尿、血漿、中心静脈栄養製品、細胞培養培地のサンプル中のアミノ酸の分析は特に想定していません。これらのアプリケーションに関する詳細については、www.waters.com/AAA および www.waters.com/Kairos を参照してください。
一般的な分析のガイドラインと推奨事項
環境中にアミノ酸が普遍的に存在することを考慮すると、バックグラウンド汚染により、目的のサンプル分析に対して 20 pmol 以上のアミノ酸が容易に混入する可能性があります(特にセリン(Ser)およびグリシン(Gly))。この量は、特別な予防策を講じることで低減できます。あるいは、1 種類のアミノ酸につき 200 pmol 以上が含まれる十分な量のサンプルを加水分解することで、バックグラウンド汚染の影響を 10% 未満に制限できます。いずれにしても、最新の誘導体化手法およびクロマトグラフィーシステムの感度(検出限界 1 pmol 以下が可能)を利用するには、清浄で優れたラボ手法が不可欠です。汚れたガラス製品、実験動物、空中の粉塵、指紋、タルク粉はどこにでもある一般的な汚染源です。
低濃度アミノ酸分析において全体的な品質を改善できる単一の完全なシステムはありませんが、以下の考慮事項とベストプラクティスが役立つでしょう。
- 50 mm 加水分解チューブ(製品番号:WAT007571)6 本を 500 ℃ で一晩、熱分解して、ガラスを可能な限り清浄にします。冷却炉からチューブを取り外した後、アルミホイル(アセトンでクリーニングしたもの)でチューブを覆い、遮蔽のある場所に保管します。
- この手順で使用するピペット、使い捨てチップ、シリンジおよびその他のアクセサリーから汚染物質が混入する可能性があることに注意してください。
- 加水分解の前に、清浄でパウダーフリーの手袋と清浄なピンセットを用いて、すべての取り扱いのステップを実行します。必要に応じて外科用マスクを使用します。
- 常に新しい試薬を使用します。すべての試薬が汚染源になり得ます。新しく開けたボトルを小さい清浄な容器に分けるのがベストプラクティスです。
- 対照のブランク誘導体化により、試薬の品質を毎週チェックします。
- 可能であれば、常に気相加水分解手順を使用します。低純度の塩酸が、加水分解の信頼性低下の原因になる可能性があります。最も一貫性のある結果は、定沸点塩酸を使用することで得られています。高純度の試薬グレードの濃塩酸は、おそらくあまり清浄ではなく、定沸点グレードよりもかなり高レベルの塩素を含んでいます。
- コントロールサンプルとして、水とバッファーの成分をバックグラウンド汚染への寄与について試験します。例えば、試験室の二重蒸留水が許容できないレベルのアミノ酸混入の原因になることがよくあります。最高の水質を得るためには、精製システム(18.2 mΩ-cm 水)の使用を強く推奨します。
- 加水分解の適切なコントロールブランクは、サンプルの処理と全く同様に処理したサンプルチューブです。これには加水分解ステップが含まれます。