アミノ酸の定量

アミノ酸の定量

7.1 はじめに

7.1 はじめに

このガイドでは一般にアミノ酸分析の初期段階に重点を置いていますが(加水分解のためのサンプル前処理を強調)、このセクションではアミノ酸分析で使用するより一般的な定量メソッドについて簡単に説明します。これらの例では、アミノ酸分析の結果はすでに得られており、元のサンプル濃度を計算する必要があります。これらの例では、誘導体化に AccQ•Tag または AccQ•Fluor 試薬が使用されたことを想定しています。

定量を進める前に、

  • すべてのピークが正しく同定されていることを確認します。
  • 保持時間が一致しない場合は、キャリブレーションテーブルの値を確認します。
  • すべてのピークが正しく波形解析されていることを確認します。

7.2 アミノ酸の絶対定量

7.2 アミノ酸の絶対定量

7.2.1 サンプル中のタンパク質濃度

7.2.1 サンプル中のタンパク質濃度

一部の分析では、単に分析したサンプルの濃度を決定することが目的です。これらの結果は通常、μmol/L などのモル濃度で表します。クロマトグラフィーの結果は通常、ピコモルで得られます。濃度を決定するには、クロマトグラフィーソフトウェアによって報告されたアミノ酸のピコモル数を注入量で除算します。この値に希釈液のボリュームを乗算し、誘導体化したボリュームで除算します。計算を完了するには、希釈係数を乗算してから、単位を 1 リットルあたりの μmole 数に変換します。

計算例:
報告された値に基づいて元のサンプルのアミノ酸濃度を求めるには、次の式を使用します。

ここで、

pmol AA = サンプル中のアミノ酸の報告量 Vi = 注入量(μL、通常 1 μL)

Vd = 誘導体化したボリューム(μL、通常は 10 μL)

Vr = サンプルの再溶解に使用した希釈液のボリューム(μL)

Dil. Factor = 希釈係数

例:

加水分解したタンパク質サンプルのはじめの 100 μL サンプルを内部標準溶液で 1:1 に希釈しました。10 μL のアリコートを誘導体化しました。注入量は 1 μL で、アスパラギン(Asn)の報告値は 312.5 pmole でした。

Asn 濃度(μmol/L)は以下のとおりです。

7.3 アミノ酸の相対定量

7.3 アミノ酸の相対定量

加水分解したタンパク質のアミノ酸組成を決定するには、サンプル中の成分のモル比を計算する必要があります。

個々の純粋なタンパク質には、含まれているそれぞれの残基に固有の化学量数があります。理想的には、分析の結果から、整数のモル比が得られます。測定値がこの理想値に近づく度合いは、タンパク質またはペプチドの純度、加水分解条件の適切さ、アミノ酸分析の質の関数です。

7.3.1 ペプチド組成の計算

7.3.1 ペプチド組成の計算

例 1(下表に反映):

  1. (分析によって得られた)各アミノ酸の実測ピコモル数が表に示されています。
  2.  検査により、各アミノ酸の残基数(推定組成)を推定します。注記:実測残基数は、各アミノ酸の相対モル濃度です。すべての実測ピコモル数を最少アミノ酸存在量で除算し、四捨五入します。
  3.  すべてのアミノ酸のピコモル数と残基数を合計します。
  4.  実測ピコモル数の合計を推定組成の合計で除算して、平均 pmol/残基を計算します。
  5.  各実測ピコモル数をピコモル/残基の値で除算し、実測組成を決定します。
平均 pmol/残基

注意:大きいタンパク質では、より高い精度が必要なため、残基数の推定はより困難です。

注意:一部のアミノ酸の加水分解からの回収率はばらつく可能性があります(Ser、Tor、Tyr、Met は分解し、Val 結合および Ile 結合は切断しにくいことがあります)。   

注記:このような場合に定量改善するために、時間経過試験を行うことを推奨します。通常、サンプルは 24 時間、48 時間、72 時間(または 96 時間)加水分解します。不安定なアミノ酸の値はゼロ時間に外挿して求めIle および Val の値は最長の加水分解時間から取得します。

例2:
前述したように、モルパーセント(タンパク質の 100 残基あたりの各アミノ酸の残基数)の計算で十分な場合があります。これは以下のように決定されます。

7.3.2 タンパク質の分子量の推定

7.3.2 タンパク質の分子量の推定

タンパク質の分子量の推定値がわかっている場合は、以下の 2 つのアプローチを使用しておおよその組成を計算できます。

7.3.2.1 アミノ酸のサイズと総収量に基づく組成

7.3.2.1 アミノ酸のサイズと総収量に基づく組成
  1.  サンプル分子量(MW)を推定します。
  2.  アミノ酸の総収量(ピコモル)を合計します。
  3.  アミノ酸の平均分子量である 110 でその分子量を除算します。注記:これにより、全鎖長または総アミノ 酸の良好な近似が得られます。
  4.  総収量を鎖長で除算します(注入したサンプルのモル量に等しくなります)。
  5.  アミノ酸ごとに、この量を注入したモル量で除算します(1 モルあたりの残基数に等しくなります)。整数量からの偏差を調べます。
  6.  整数量(ステップ 5 で取得)からの偏差を最小限に抑えるために、除数(注入モル量)を上下にわずかに変えます。このステップは、コンピューターのスプレッドシートプログラム、または最小偏差を特定できるカスタマイズされたアミノ酸ソフトウェアを使用して、簡略化できます。
  7.  不安定なアミノ酸および安定な結合を形成するアミノ酸の値は、加水分解からの回収率が低いため、整数量から大きく外れることがあります。

7.3.2.2 単一アミノ酸への正規化に基づく組成

7.3.2.2 単一アミノ酸への正規化に基づく組成

この代替手順では、サンプルについてのより多くの知識が必要です。

  1. 以下の 2 つの規準を満たすアミノ酸を、分析で選択します。
    • 加水分解および誘導体化(Asp、Glu、His、Arg、Ala、Pro、Leu、Phe、Lys など)で良好な収量が得られる。Gly は一般的なバックグラウンド汚染物質であるため、良い選択ではない可能性があります。
    • サンプル 1 モルあたり数残基のみ(サンプルの推定分子量およびアミノ酸収量に基づく)の場合があります。このような情報は、臭化シアン消化などの他の手順から得ることができ、この方法では、インタクトポリペプチド鎖がメチオニン部位で選択的に切断されます。
  2. この情報に基づき、このアミノ酸の整数値を選択します。
  3. 選択したアミノ酸の収率を、選択した整数値で除算し、注入したサンプルの推定モル量を取得します。
  4. セクション 7.3.2.1 のステップ 5 と 6 に従います。
  5. 値(1 つは選択した整数値より大きく、1 つは選択した整数値より小さい値)を確認して、整数からの偏差がより小さいものが得られるかを調べます。

7.3.2.3 ペプチド/タンパク質濃度の計算

7.3.2.3 ペプチド/タンパク質濃度の計算

元のサンプル中のペプチドまたはタンパク質の濃度は、各アミノ酸のピコモル数に対応する分子量を乗算して得た積の合計から計算できます。

セクション 7.3.1 の表に引用した例を使用すると、計算は以下のように始まります。

計算例:

サンプル中の Asp(アスパラギン)の場合:133.10 g/mole のアミノ酸の分子量で得られる 220 ピコモルは、以下のようになります。

この同じ計算が、対象の各アミノ酸に適用されます。下の表に、各アミノ酸について計算したピコグラム数が示されており、そのサンプルから注入したタンパク質の合計ピコグラム数が右下に示されています。

注入したタンパク質の合計ピコグラム数

7.4 飼料中のアミノ酸の定量

7.4 飼料中のアミノ酸の定量

食品および飼料の分析では、上記の計算値も適用されます。ただし、ほとんどの飼料分析でより重要な情報は、メチオニンやシステインなどの特定の成長を制限するアミノ酸の含有量です。最も一般的に関心が持たれる値は、サンプル中の %アミノ酸重量含有量です。

7.4.1 食品/飼料中のアミノ酸の % 重量の計算

7.4.1 食品/飼料中のアミノ酸の % 重量の計算

アミノ酸の重量 % を計算するには:

計算例:

ステップ 1:報告されたモルアミノ酸濃度を報告された重量(g/mL)に変換します。

ステップ 1:報告されたモルアミノ酸濃度を報告された重量(g/mL)に変換します。

報告された濃度値(pmol/μL)に、残基の MW (gm/mol)と変換係数を乗算する必要があります。

ステップ 2:各アミノ酸の報告重量を重量に変換します。

ステップ 2:各アミノ酸の報告重量を重量に変換します。

次に、報告濃度(g/mol)に希釈係数を乗算します。続いて、結果をサンプルの重量で除算し、100 を乗算してパーセントに変換します。

計算例:

ここで、

    濃度 = アミノ酸の濃度(g/mL)

    希釈 = サンプルの希釈

ステップ 3:各アミノ酸の % 重量の報告重量を変換します。

ステップ 3:各アミノ酸の % 重量の報告重量を変換します。

サンプル重量 = 重量(mg)

7.4.2 AOAC 公定メソッド 994.12 「飼料中のアミノ酸分析」:サンプル中のアミノ酸の重量 % の計算

7.4.2 AOAC 公定メソッド 994.12 「飼料中のアミノ酸分析」:サンプル中のアミノ酸の重量 % の計算

このメソッドでは、内部標準を使用する必要があります。

計算例:

ステップ 1:各アミノ酸のレスポンスファクター(RFaa)を計算します。

ステップ 1:各アミノ酸のレスポンスファクター(RFaa)を計算します。

内部標準溶液のピーク面積に、アミノ酸の重量(mg)を乗算します。次にこの値を、アミノ酸のピーク面積に内部標準の重量を乗算した結果で除算します。

ここで、

    RFaa = アミノ酸のレスポンスファクター

    Pn = 内部標準のピーク面積

    Paa = サンプル中のアミノ酸のピーク面積

    Waa = アミノ酸の重量(mg)

    Wn = 内部標準溶液の重量(mg)

ステップ 2:内部標準(IS)係数を計算します。

ステップ 2:内部標準(IS)係数を計算します。

ステップ 3:% アミノ酸(重量)を決定します。

ステップ 3:% アミノ酸(重量)を決定します。

% 含有量の計算は、まずアミノ酸のピーク面積にレスポンスファクターの計算値を乗算します。次に、これに内部標準係数を乗算します。この数字を、内部標準溶液のピーク面積の被乗数と分析したサンプルの重量で除算します。これをパーセントに変換します。

ここで、

    Paa = アミノ酸のピーク面積

    Pn = 内部標準溶液のピーク面積

    RFaa = レスポンスファクター計算値

    IS = 内部標準係数計算値

例:

飼料サンプル中のアミノ酸について、以下の値が決定されました。

    アミノ酸の重量(Waa) = 0.5 mg

    アミノ酸のピーク面積(Paa) = 100,000

    内部標準のピーク面積(Pn) = 110,000

    内部標準の重量(Wn) = 0.5 mg

    被験サンプルの重量(Ws) = 10 mg

ステップ 1:レスポンスファクターを計算します。RFaa

ステップ 1:レスポンスファクターを計算します。RFaa

ステップ 2:内部標準係数を計算します。IS:

ステップ 2:内部標準係数を計算します。IS:

0.5 mg × 2 × 10-2 = 0.05

ステップ 3:両方の計算値を使用して、% アミノ酸を決定できます。

ステップ 3:両方の計算値を使用して、% アミノ酸を決定できます。

対象のアミノ酸は、飼料中に 0.9%(重量)のレベルで存在します。

関連情報

従来の HPLC または UHPLC 装置を使用して、タンパク質/ペプチド加水分解物、生体液、飼料、食品、医薬品製剤、そして多種多様なその他のサンプルから、正確なアミノ酸組成を取得できます。

HPLC、UHPLC、および UPLC 用の Waters AccQ•Tag および AccQ•Tag Ultra アミノ酸分析用標準品およびキットを使用することによって、細胞培養培地、タンパク質加水分解物、食品、および飼料中のアミノ酸を正確に分離、同定、定量できます。

ウォーターズは、正確なアミノ酸分析のための、非常に信頼性の高い 3 つの分析法を提供しています。これら 3 つの分析法ではすべて、プレカラム誘導体化メソッドに続いて、UV 吸光度または蛍光検出のいずれかを使用してピークを十分分離し、オンライン検出を行う逆相クロマトグラフィーを利用しています。

Waters サンプル前処理キットを用いてオートメーションワークステーションの機能を最大限に発揮させ、Waters ワークフローをシームレスに自動化して、ラボの効率を改善できます。
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