このガイドでは一般にアミノ酸分析の初期段階に重点を置いていますが(加水分解のためのサンプル前処理を強調)、このセクションではアミノ酸分析で使用するより一般的な定量メソッドについて簡単に説明します。これらの例では、アミノ酸分析の結果はすでに得られており、元のサンプル濃度を計算する必要があります。これらの例では、誘導体化に AccQ•Tag または AccQ•Fluor 試薬が使用されたことを想定しています。
定量を進める前に、
一部の分析では、単に分析したサンプルの濃度を決定することが目的です。これらの結果は通常、μmol/L などのモル濃度で表します。クロマトグラフィーの結果は通常、ピコモルで得られます。濃度を決定するには、クロマトグラフィーソフトウェアによって報告されたアミノ酸のピコモル数を注入量で除算します。この値に希釈液のボリュームを乗算し、誘導体化したボリュームで除算します。計算を完了するには、希釈係数を乗算してから、単位を 1 リットルあたりの μmole 数に変換します。
計算例:
報告された値に基づいて元のサンプルのアミノ酸濃度を求めるには、次の式を使用します。
ここで、
pmol AA = サンプル中のアミノ酸の報告量 Vi = 注入量(μL、通常 1 μL)
Vd = 誘導体化したボリューム(μL、通常は 10 μL)
Vr = サンプルの再溶解に使用した希釈液のボリューム(μL)
Dil. Factor = 希釈係数
例:
加水分解したタンパク質サンプルのはじめの 100 μL サンプルを内部標準溶液で 1:1 に希釈しました。10 μL のアリコートを誘導体化しました。注入量は 1 μL で、アスパラギン(Asn)の報告値は 312.5 pmole でした。
Asn 濃度(μmol/L)は以下のとおりです。
加水分解したタンパク質のアミノ酸組成を決定するには、サンプル中の成分のモル比を計算する必要があります。
個々の純粋なタンパク質には、含まれているそれぞれの残基に固有の化学量数があります。理想的には、分析の結果から、整数のモル比が得られます。測定値がこの理想値に近づく度合いは、タンパク質またはペプチドの純度、加水分解条件の適切さ、アミノ酸分析の質の関数です。
例 1(下表に反映):
注意:大きいタンパク質では、より高い精度が必要なため、残基数の推定はより困難です。
注意:一部のアミノ酸の加水分解からの回収率はばらつく可能性があります(Ser、Tor、Tyr、Met は分解し、Val 結合および Ile 結合は切断しにくいことがあります)。
注記:このような場合に定量を改善するために、時間経過試験を行うことを推奨します。通常、サンプルは 24 時間、48 時間、72 時間(または 96 時間)加水分解します。不安定なアミノ酸の値はゼロ時間に外挿して求め、Ile および Val の値は最長の加水分解時間から取得します。
例2:
前述したように、モルパーセント(タンパク質の 100 残基あたりの各アミノ酸の残基数)の計算で十分な場合があります。これは以下のように決定されます。
タンパク質の分子量の推定値がわかっている場合は、以下の 2 つのアプローチを使用しておおよその組成を計算できます。
この代替手順では、サンプルについてのより多くの知識が必要です。
元のサンプル中のペプチドまたはタンパク質の濃度は、各アミノ酸のピコモル数に対応する分子量を乗算して得た積の合計から計算できます。
セクション 7.3.1 の表に引用した例を使用すると、計算は以下のように始まります。
計算例:
サンプル中の Asp(アスパラギン)の場合:133.10 g/mole のアミノ酸の分子量で得られる 220 ピコモルは、以下のようになります。
この同じ計算が、対象の各アミノ酸に適用されます。下の表に、各アミノ酸について計算したピコグラム数が示されており、そのサンプルから注入したタンパク質の合計ピコグラム数が右下に示されています。
食品および飼料の分析では、上記の計算値も適用されます。ただし、ほとんどの飼料分析でより重要な情報は、メチオニンやシステインなどの特定の成長を制限するアミノ酸の含有量です。最も一般的に関心が持たれる値は、サンプル中の %アミノ酸重量含有量です。
アミノ酸の重量 % を計算するには:
計算例:
報告された濃度値(pmol/μL)に、残基の MW (gm/mol)と変換係数を乗算する必要があります。
次に、報告濃度(g/mol)に希釈係数を乗算します。続いて、結果をサンプルの重量で除算し、100 を乗算してパーセントに変換します。
計算例:
ここで、
濃度 = アミノ酸の濃度(g/mL)
希釈 = サンプルの希釈
サンプル重量 = 重量(mg)
このメソッドでは、内部標準を使用する必要があります。
計算例:
内部標準溶液のピーク面積に、アミノ酸の重量(mg)を乗算します。次にこの値を、アミノ酸のピーク面積に内部標準の重量を乗算した結果で除算します。
ここで、
RFaa = アミノ酸のレスポンスファクター
Pn = 内部標準のピーク面積
Paa = サンプル中のアミノ酸のピーク面積
Waa = アミノ酸の重量(mg)
Wn = 内部標準溶液の重量(mg)
% 含有量の計算は、まずアミノ酸のピーク面積にレスポンスファクターの計算値を乗算します。次に、これに内部標準係数を乗算します。この数字を、内部標準溶液のピーク面積の被乗数と分析したサンプルの重量で除算します。これをパーセントに変換します。
ここで、
Paa = アミノ酸のピーク面積
Pn = 内部標準溶液のピーク面積
RFaa = レスポンスファクター計算値
IS = 内部標準係数計算値
例:
飼料サンプル中のアミノ酸について、以下の値が決定されました。
アミノ酸の重量(Waa) = 0.5 mg
アミノ酸のピーク面積(Paa) = 100,000
内部標準のピーク面積(Pn) = 110,000
内部標準の重量(Wn) = 0.5 mg
被験サンプルの重量(Ws) = 10 mg
0.5 mg × 2 × 10-2 = 0.05
対象のアミノ酸は、飼料中に 0.9%(重量)のレベルで存在します。