サンプル導入

サンプル導入

サンプル注入はロースループット向けに手動で行うことも、ハイスループットアプリケーションのために自動化することもできます。手動注入では、レオダインバルブに接続されたサンプルループをバルブハンドルを回すことで流路から切り離します。ろ過済みサンプルをシリンジに吸い上げ、ブラントニードルチップを装着し、気泡を除去します。ニードルをサンプル注入ポートに挿入し、サンプルを注入ループに注入します。レオダインバルブハンドルを回してループを流路に戻します。この位置にすることでサンプルが流路に注入されます。

図 27.マニュアルレオダイン注入バルブコンポーネント

ハイスループットのためにサンプル注入を自動化することもできます。大容量オートサンプラーは、サンプルの吸引と注入を 1 つのプラットフォームで管理できます。ロボットアームは、マイクロタイタープレート、試験管、シンチレーションバイアル、または従来のオートサンプラーバイアルからのサンプル注入を制御するために、分取精製用ソフトウェアで設定します。

注入ループ

通常、注入ループは目的の注入量に基づいて選択します。ループの容量が大きすぎると、サンプルがループの余分な表面積に吸着して遅延が発生したりサンプル拡散が発生したりする可能性があり、クロマトグラフィーの質に悪影響を与えます。目的の注入量に近いループサイズにより、最高の再現性とクロマトグラフィープロファイルが得られます。

フラクションコレクター

アプリケーションで求められるスループットにより、フラクション分取に必要な自動化レベルを決定します。フラクションコレクターはスイッチとサンプル切替バルブで構成されています。切替バルブは、化合物の溶出時にそれらを分取できるように適時に開きます。

フラクション分取は、ロースループットアプリケーション向けにマニュアルで行うことも、ハイスループットアプリケーション向けに自動化することもできます。自動化のレベルは、求められるフラクションの数と量により決定されます。ハイスループットのフラクションコレクターは多くの場合、サンプリング用プローブとフラクション分取用プローブを装着したロボットアームを用いてサンプル注入とフラクション分取を 1 つのワークテーブル上で実施します。

図 28.オプションの換気用ドラフトを備えた Waters 2767 サンプルマネージャーおよびフラクションコレクター

分取容器

多くの分取精製システムは、幅広い分取容器の形状、サイズおよび容量に対応しています。最も一般的な分取容器は、試験管、バイアル、ボトル、大きな容器に分注するための漏斗などです。分取容器は清浄で乾燥しており、サンプルや溶媒に曝露しても反応しないものでなければなりません。一般的に、成分を分注できるようにするために分取容器は上部が開放された容器回収ベッドに配置されます。

分取されなかったフラクションが廃液には行かず、サンプル専用廃液回収容器に集められるシステムもあります。ユーザーが間違ったピークを分取したり、不適切な分析法を実行したり、ターゲットkagoubutu を検出できなかったり、トリガーが利かなかったりした場合、サンプルは専用廃液回収容器へ流れ、溶媒を蒸発させ、サンプルを再溶解して再注入することができます。

検出器

分取精製クロマトグラフィーを実施する際には検出について特別な検討が必要です。精製で使用される主な 4 種類の検出器は、UV/Vis、示差屈折率(RI)、エバポレイト光散乱(ELS)、および質量分析(MS)です。

UV/Vis 検出器でユーザーが設定した単一波長で検出することも、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器により特定の波長範囲にわたる吸光度を測定することもできます。PDA は、分析法開発で目的化合物に適した波長を選択する際によく利用されます。200 ~ 400 nm の間の波長、または可視光範囲で検出する場合にはそれより長い(≥ 350 nm)波長を測定することで、適切な波長を選択できます。目的化合物について最大のシグナル強度が得られる波長が分離に最適な波長です。近接して溶出する不純物の最適波長も決定しなければなりません。そうしないと、1 波長を用いて分離した「高純度分離物」を、異なる波長で観察すると、実際には不純物が含まれる場合があります。その場合、分離物をさらに精製するために 2 回目の分析法開発と精製が必要になる可能性があります。

UV/Vis 検出器および PDA 検出器を使用する場合、分取精製では一般的な大量注入や高濃度サンプルによる高い感度が、障害になることがあります。そのため、光路長の長い(10 mm)分析用フローセルではなく光路長の短い(1 ~ 3 mm)検出器用フローセルを使用します。

図 29.2998 フォトダイオードアレイ(PDA)検出器

RI 検出器には、アルコール、糖類、糖質、脂肪酸およびポリマーなど、UV 吸収がわずかまたは UV 吸収がない成分の検出において、いくつかの利点があります。RI 検出器では、示差屈折率の差を検出して化合物の存在の有無を判定します。RI 検出器は、化合物のイオン化や発色団の含有に依存しないため「汎用的な」検出器と呼ばれることもあります。RI 検出器の欠点は、ベースラインドリフトの原因となるグラジエントによる乱れの検出を回避するため、アイソクラティック分離でしか使用できないことです。

図 30.Waters 2414 示差屈折率(RI)検出器

ELS 検出器は UV/Vis 検出器や RI 検出器の代替として使用できます。ELS 検出器は、溶出物を加熱ネブライザーを通過させて、分析種を揮発させ、溶媒を蒸発させることで検出を行います。溶媒は気体として排出されますが、分析種は微粒子の流れを形成し、これが光源と検出器の間を通過し、検出器が光を散乱させてその散乱光を測定します。ELS 検出器の主な利点は、発色団を持たない化合物を検出できること、そしてアイソクラティック分離だけでなくグラジエント分離でも使用できることです。ELS 検出器の欠点は、サンプルを破壊するため、メイン流路中にインラインで設置できないことです。少量が ELS 検出器、残りがフラクションコレクターに向かうように流路をスプリットしなければなりません。

MS 検出器では、カラムから出てくる分離されたサンプル化合物をその質量に基づいて質量分析計により同定します。MS は最も感度が高く選択性の高い分子分析法の 1 つであり、分子量、そして分析種のアイデンティティー確認に非常に重要な分析種のフラグメンテーションパターンに関する情報が得られます。さまざまな種類のインターフェースを搭載したさまざまな種類の MS システムを利用できます。最も広く使用されているインターフェースは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)と大気圧化学イオン化(APCI)です。各インターフェースはさまざまな適用分野、流速、感度、レスポンスの直線性に関連しています。ELS 検出器と同じく、MS は破壊的な検出方法であるため、少量が検出器に、主要部分がフラクションコレクターに向かうように流れをスプリットしなければなりません。

図 31.Waters ACQUITY QDa 検出器

フロースプリッタ-

MS や ELS など化学的破壊型検出器では、カラムからのフローの一部をメインのフローからスプリットしてフラクションのトリガーのために検出器に向かわせなければなりません。検出器は、フラクションコレクターがトリガーされる前にピークを検出しなければならないため(遅延時間)、メインのフローがフラクションコレクターに到達する前にスプリットしたフローが検出器に到達しなければなりません。そのため、「メイクアップポンプ」および「メイクアップ溶媒」を使用してスプリットしたフローの流速を上げます。

フロースプリッターは「パッシブ」または「アクティブ」のどちらかで使用できます。パッシブフロースプリッターとアクティブフロースプリッターは、メインのサンプルフローのサンプリング効率が同等であるため、使用するスプリッターの種類はユーザーの好みによります。

パッシブスプリッターでは、特定の流速範囲とスプリット比を維持するためにディレイコイルや「T フィッティング」などのリストリクターを使用します。

図 32.パッシブスプリッターボックス
図 33.パッシブスプリッターボックスの流路図

スプリッターの製品番号

流速範囲(mL/分)

スプリット比

ターゲットカラム

205000435

0.5 ~ 2.0

15:01

4 mm

205000436

2.0 ~ 8.0

100:01:00

10 mm

205000437

8.0 ~ 30

1,000:1

19 mm

205000438

8.0 ~ 30

5,000:1

19 mm

205000439

30 ~ 100

5,000:1

30 mm

205000440

100 ~ 150

10,000:1

50 mm

表 6.ウォーターズが提供するパッシブスプリッターのオプション

アクティブフロースプリッターは、2 つの完全に独立した流路、およびメインフローの一部をプログラムされたスプリット比で希釈されるメイクアップフローへと送る高速切替バルブを備えています。

チューブ

流路で使用するのに適切なチューブを決定する際に検討しなければならない点がいくつかあります。まず、システムと流路チューブのインテグリティは、チューブの材料の適合性およびアプリケーションに大きく左右されます。チューブは、高性能ポリマー加工された PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)製またはステンレス製のいずれかで、サンプルがチューブ表面に吸着してサンプル損失、収率低下、またはキャリーオーバーが起きるのを防ぐため、サンプルおよび移動相と化学的に適合するものでなければなりません。

またシステムチューブは流路の圧力および動作温度に耐えられるものでなければなりませんが、分取精製クロマトグラフィーでは多くの場合、流路の温度管理は実施されていないため重要な問題ではありません。

圧力限界を検討する際、分取精製クロマトグラフィーシステムを 3 つのゾーンに分けることができます。溶媒リザーバーとポンプの間の「低圧」ゾーン、ポンプとカラム入口の間の「高圧」ゾーン、そしてカラムの出口と検出器下流の廃液リザーバーまたはフラクションコレクターの間の第 2 の「低圧」ゾーンです。各ゾーンのチューブには、特有の圧力保持要件があります。重要な要件のある圧力ゾーンで不適切なチューブ材を選択すると、性能の低下やクロマトグラフィーの問題だけでなく、漏れや破裂の恐れがあります。

チューブ内径およびチューブ長という 2 つの変数を検討しなければなりません。一般に内径が小さいほど内部速度が速くなりサンプル拡散が抑えられるため、サンプルを可能な限り濃縮した状態に保つことができます。ただし、チューブ内径が小さくなるとチューブから発生する圧力が大幅に高まり、検出器フローセルやその他のシステムコンポーネントが対応できないシステム背圧となる可能性があります。異なる内径のチューブを接続すると、連結部またはその付近でデッドボリュームが発生します。このデッドボリュームは、流体(移動相)により十分スイープされないため、ピーク形状の問題やキャリーオーバーの原因となります。

チューブの長さを検討する際、流路の容量が大きいほど、サンプルが移動相中で希釈され、分離された成分がまた一緒になってしまう確率が高まります。チューブの長さもシステム圧、遅延容量、およびカラム外ボリュームに寄与します。これらの問題を防ぐために、チューブの長さが問題になります。

大スケールの分取精製システムは通常、高流速で使用します。流速が原因の背圧を軽減するには、分取精製システムを適切な内径のチューブと接続して高い質のクロマトグラフィー結果が得られるようにすることが重要です。0.05 mL/分 ~ 130 mL/分の流速に対応するさまざまなチューブ内径が提供されています。

内径

流速(mL/分)

µL/ft

耐圧(psi)

耐圧(bar)

0.0025"

ナチュラル

0.05 ~ 0.2

0.9

7000

483

0.005"

0.2 ~ 0.5

3.5

7000

483

0.007"

0.5 ~ 1.5

8

7000

483

0.010"

1.0 ~ 10

13

7000

483

0.020"

オレンジ

10 ~ 30

50

7000

483

0.030"

30 ~ 65

140

7000

483

0.040"

65 ~ 130*

250

5000

344

*この流速範囲では、ステンレス製のチューブを推奨します。

圧力は室温にて水を使用して測定

表 7.チューブ直径および適切な流速(mL/分)。「色」は PEEK ポリマーチューブ用です。

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