最新の分取 SFC 装置の進歩により、分取 SFC に関連する障害の多くが克服されました。図 7 に、分取 SFC 装置の一般的な流路を示します。SFC では、バイナリーポンプおよびメソッドの制御、注入による流路へのサンプル導入、カラムベースの分離、ピーク検出、およびフラクション分取が含まれ、HPLC と同じ基本的な流路を使用します。SFC では、その他にも必要なテクノロジーがあり、そのほとんどが CO2 の圧縮性および膨張性に対処するためのものです。熱交換器(HE)、背圧レギュレーター(BPR)、気液セパレーター(GLS)、および幅広く用いられている高圧ステンレススチールチューブが使用されています。
送液ポンプ:SFC では、LC と同じく、バイナリ―ポンプを使用して溶媒「A」を送液し(この場合常に CO2)、通常メタノールなどの極性有機溶媒を溶媒「B」として送液します。システムのスケールに応じて、CO2 は 2 つの方法で送液されます。通常、分析スケールで使用される容積に基づく送液(容積流速)または分取スケールで使用されることの多い質量に基づく送液(質量流速)です。CO2 は圧縮性があるため、密度差のために、同一の体積が必ずしも同一の質量に相当するとは限りません。どちらの送液方法も、環境条件にかかわらず、流速に再現性がある限り有用です。ほとんどの場合、CO2 はポンプの前またはポンプヘッド内で冷却され、続いて液体として送液されることで、移動相密度の差が低減します。さらに、すべてのシール、チェックバルブ、チューブ、およびフィッティングは、漏れずに高圧の圧縮性流体に対応できなければなりません。CO2 は隙間があればそこから容易に膨張するため、わずかな漏れであってもシステム性能とクロマトグラフィーに多大な影響を与えかねません。チューブの漏れ、シール、またはチェックバルブが原因の CO2 の送液不良は、保持時間や選択性の変化だけでなく、圧力(密度)制御不良やベースラインノイズの原因となる可能性があります。
注入:一般的に使用される注入モードはミックスストリームおよびモディファイヤーストリームの 2 種類で、これらのモードの詳細は「SFC における注入方法」のセクションで詳述します。ミックスストリーム SFC インジェクションスキームには、サンプルをロードする前に CO2 をループから排気する減圧ステップがあります。ミックスストリームインジェクションとモディファイヤーストリームインジェクションの両方を行うシステムでも、減圧を安全措置として行うことがあります。通常、これは第二の「排気」バルブで行われます。このセットアップの 1 つの欠点は、注入時に、システムでピークの広がりと分離能の低下を引き起こすことがあるカラム外ボリュームが加わることです。内径が小さなチューブを使用してボリュームを最小限に抑えることで、ピークの広がりが抑えられます。
カラムオーブンと加熱:SFC では、圧力と温度は移動相密度に影響を与えるため、これらは分離を左右する分析法パラメーターです。そのため、移動相およびカラムの適切な加熱および温度制御が必要です。温度が適切に制御されていない場合、カラム内で発生する温度グラジエントがピーク形状およびピーク分離に有害な影響を及ぼすことがあります。多くの SFC システムでは、カラムをオーブン内で加熱するか、移動相を事前に加熱するか、またはその両方を使ってこの問題を解決しています。
適切なカラムケミストリー(キラルとアキラルの両方)を特定することが SFC では非常に重要です。したがって、SFC アプリケーションではカラムスクリーニングが必要です。多くの SFC システムには、複数のカラムの中から選択できるように、切り替えバルブがオーブンに搭載されています。さまざまなカラムケミストリーが必要となる可能性の高い、多数の幅広いサンプルおよびターゲット化合物を精製するアプリケーションではこれは特に重要です。
検出器:UV/Vis、PDA、MS、および ELS など、精製で使用する一般的な検出法はすべて SFC と互換性があり、1 つのシステム内で複数の検出器を使用することができます。UV/Vis 検出および PDA 検出は非破壊型検出であり、一次検出に使用されるため、通常、メインの流路内に接続されます。これらの検出器のフローセルは、SFC で使用される圧力に対して適合している必要があります。MS や ELS のような破壊型検出器は、スプリット比を相対制御し、検出シグナルを最適化するために溶媒を調節するスプリッターテクノロジーを用いて接続されます。複数の検出器シグナル(またはチャンネル)を記録することも、フラクショントリガーに使用することもできるため、分析と分取の両方の SFC でテクノロジーのアプリケーション範囲が拡大します。SFC におけるこれらの検出器の使用については、本章の「SFC における光学検出および MS 検出」セクションに詳述しています。
背圧レギュレーター(BPR):あらゆる化合物の溶解度および保持係数は流体密度と密接に関連しているため、カラムに流れる移動相の密度を制御することは SFC 装置デザインにおいて最も重要な要素の 1 つとなります。密度制御は、主にシステム内の圧力を制御することで行えます。背圧レギュレーターは、システムのポストカラム圧力(背圧)を分析法で設定された圧力に制御するように設計されている自動装置です。適切で再現性のあるクロマトグラフィーを行うには、グラジエント条件下や分析間でも、カラムより後の圧力が(設定値において)一定でなければなりません。
CO2 は、74 bar(約 1073 psi)および 31 ℃ を超える場合に超臨界と見なされますが、この領域における温度や圧力の小さな変化は密度の大きな変化を引き起こすため、臨界点に近い条件で分析することは一般的に推奨されません。そのため、この領域で開発された分析法は保持および分離能に関して頑健性が低いと考えられます。また、共溶媒が使用されている場合には、低い圧力条件下で、相分離が発生する可能性が高くなるため、ベースラインノイズが発生します。したがって、ほとんどの SFC 分析法では、一般的に 100 bar(1,450 psi)以上の、臨界圧力より高い圧力を設定します。
分取のトリガー:SFC 分取では、しきい値、時間および傾きのモード(表 3 で定義)を使用し、複数の検出器をチャンネルとし、分取のきっかけ(トリガー)にすることができます。分取前に複数の条件を設定し、満たされた時のみ分取を実行するブール論理を使用し、より論理的な分取を行うこともできます。分取の条件には、しきい値と時間などのモードの組み合わせ、または UV のしきい値と MS などの検出器シグナルの組み合わせを含めることができます。
分取モード |
説明 |
しきい値 |
シグナル強度(高さ)が設定値を上回ると分取が行われる |
時間 |
シグナルの有無にかかわらず設定した開始時間および終了時間に分取が行われる(強制的分取) |
傾き(または微分) |
シグナルの変化(傾き)が設定した値または割合と一致する場合に分取が行われる |
表 3.分取 SFC で使用する分取モードの定義
分取するタイミングの補正も重要であり、ターゲット化合物を最適に分取するには検出器と分取システムとの間の適切な時間補正がされていなければなりません。分取 HPLC と同様、この補正は流速に依存します。しかしながら SFC では、分取のタイミングを変更すると、移動相の組成および圧力の変化も伴います。メイクアップ溶媒の使用や、CO2 の膨張を抑える他のテクノロジーを使用することで、所定の流速において広範な条件にわたりタイミングを制御することができます。
現在、SFC アプリケーションにおけるサンプル注入法には、ミックスストリームとモディファイヤーストリームという 2 つの方法があります。ミックスストリームインジェクションでは、すべての移動相(CO2 および共溶媒)がループを通過し、サンプルをカラムに運びます。ミックスストリームインジェクションでよくある問題は、溶解溶媒による強い影響が原因で、ピークがひずんだり、保持時間のシフトが起こることです。標準的な方法は、サンプルを極性モディファイヤー(共溶媒)で溶解することです。メタノールのような強溶媒の使用は、分析種の一部が固定相に吸着されない原因となり、ピークが保持されず溶出したり、ピークのひずみの原因となります。保持時間が短いピークについては、影響がさらに大きく、ひずみがさらに悪化します。注入量を増やすと、極性溶媒が移動相の中で局所的な乱れをもたらし、さらに大きなピークのひずみをもたらすだけでなく分離能も低下させます。この注入方法でも減圧が必要であり、これが注入の負荷量および再現性に影響を与えることがあります。ミックスストリームインジェクションでは、CO2 とほぼ同じ極性の溶解溶媒(ヘキサン、ヘプタン、またはその他の非極性溶媒)でピーク形状の改善が確認されています(図 8)。
2 つ目の注入方法はモディファイヤーストリームインジェクションです。この方法では、サンプルは CO2 と混合する前の移動相の有機溶媒部分(共溶媒)に注入されます。これは LC 精製で使用する At-Column Dilution スキームとほぼ同じです。その考えは、移動相の全体的な強度に影響を与えずにサンプルを導入し、注入と分析にわたってプログラムされた溶媒の割合を維持することで、溶解溶媒の影響を抑えるということです。この場合、溶解溶媒は分離に使用されている共溶媒と同じ溶媒が良いですが、他の溶解溶媒を使うこともできます。モディファイヤーストリームインジェクションでは、ピーク形状と分離能が向上するため、より多くの注入量とより高い負荷量が実現します(図 9)。
共溶媒の割合が低い場合にモディファイヤーストリームインジェクションを使用すると、共溶媒ポンプの流速が低いため、サンプルをカラムヘッドまで運ぶ時間が長くなります。移動相は非常に拡散性が高いため、注入時間が長くなることでミックスストリームインジェクションと比べるとピークが広がる可能性があります。ただし、ピーク形状については、共溶媒の割合が低い場合の大容量のミックスストリームインジェクションと比べると向上しています。サンプルのカラムへのトランスファーが速くても、これらの条件下における乱れの大きさはミックスストリームのあらゆるメリットを打ち消すものです。共溶媒の割合が上昇すると、注入法の選択はそれほど重要ではなくなりますが、共溶媒の割合が低い場合にはモディファイヤーストリームインジェクションの方がはるかに有利です。
SFC における光学検出に関しては、SFC に特有の検討事項があります。移動相密度の変化および CO2 と共溶媒の間の屈折率の差により、UV/Vis 検出器および PDA 検出器においてベースラインドリフトとベースラインノイズが発生します。これらの影響はグラジエント条件下で特に顕著です。PDA 検出器では、単一波長チャンネルと、ベースラインノイズを抑えて感度を向上させる波長補正を使用して、ベースラインを調整することができます(図 10)。UV/Vis 検出器では、単一波長を設定することでベースラインノイズとベースラインドリフトを目立たなくすることができます。
ハードウェアの観点からは、専用フローセルは、SFC アプリケーションの高圧に対応するように設計されており、ウォーターズの 2998 PDA 検出器および 2489 UV/Vis 検出器で使用できます。光路長、形状、およびセル材料などのフローセルのデザイン特性は、SFC アプリケーションにおける検出を最適化するために研究されてきました。
SFC の大きなメリットの 1 つは、順相の選択性を MS 適合性と組み合わせることができることです。SFC において CO2 はヘキサンやヘプタンなどの MS に適合しない溶媒を代替するだけでなく、ガス膨張を介して MS ソース内での噴霧と粒子形成に役立ちます。SFC は、さまざまな MS 装置における ESI、APCI、およびデュアルモードの取り込みに適合します。Waters ACQUITY QDa 検出器は、使いやすく、特に分取 SFC で役立ちます。ただし、共溶媒の割合が低い場合は、最適なシグナル検出に十分なイオンが存在しないことがよくあります。そのため、MS におけるシグナルを強化するために通常、スプリットにおいてコンディショニング溶媒(またはメイクアップ溶媒)を追加します。一般的なコンディショニング溶媒として、メタノール、水、添加剤(多くの場合、水酸化アンモニウムまたはギ酸)の混合物などがあります。その他にも MS 装置の種類、アプリケーションのスケール、あるいは使用者の好みに応じて、数多くのコンディショニング溶媒混合物が、さまざまな流速で使用されます。Waters ACQUITY QDa 検出器でコンディショニング溶媒を使用した場合と使用しない場合の MS-ESI 検出の例を図 11 に示します。
SFC は ELS 検出器にも適合します。MS と同様、スプリットを使用し、シグナルを向上させるためにメイクアップ溶媒を添加します。SFC 移動相は非常に揮発性が高いため、サンプルを運び、ELS 検出器で良好なシグナルを得るために追加の溶媒が必要です。ELSD の操作は、SFC においても LC とほぼ同じです。
分取 SFC における分取:CO2 の膨張に関する考慮事項
膨張するという移動相の性質は、分取 SFC で分取の制御を検討する上で重要です。31 ℃ で 74 bar という臨界点では、純粋な CO2 の大気条件(1 bar で 15 ℃)への体積膨張は約 250 倍です。
分取 SFC システムでは、高圧の CO2 が背圧レギュレーター(BPR)から排出されます。この体積膨張は、排出される CO2 の圧力が高くなると指数関数的に増加します。バイナリーシステムでは、一般的な SFC 移動相と同様に、CO2 の割合が減少し、有機溶媒の割合が増えるにしたがって膨張が減少します。膨張が発生すると、溶媒和力の低下およびジュール・トムソン効果による冷却により移動相の溶出力が低下します。この冷却は、チューブを詰まらせる可能性があるドライアイスの形成の原因にもなります。膨張制御が十分でないと、分取流路におけるピークひずみが生じ、フラクション純度が低下します。また、ターゲット化合物が廃液へと押し出されたり、分取時における蒸発により失われたりするため、回収率が低下することもあります。
フラクションの分取を成功させるために、SFC 装置では CO2 膨張とその影響を制御するために数多くの技術が使用されています。まず、冷却とそれに関連する問題を緩和するために、背圧レギュレーターの直後、最初の膨張点で移動相を加温します。次に、多くの場合、メイクアップ溶媒を添加します。この溶媒は、化合物を溶液中に保つだけでなく、CO2 の体積割合を減らすことで膨張を制御するのに役立ちます。膨張をより適切に制御することで、BPR 後のピーク形状が向上し、回収率が向上します。最後に、CO2 を排気または除去します。一般的に、この目的には、高圧サイクロンや気液セパレーター(GLS)などの相分離装置が使用されます(図 12)。
高圧サイクロンにより、移動相の重い部分(液体)をサイクロンの外側と底に押し出し、CO2 ガスを中央部および上部に逃がします。そのメリットとして、高圧サイクロンでは CO2 の溶媒和力が分取バルブによって維持され、相分離がサイクロン内で発生するため、(共溶媒の割合が低い場合でも)メイクアップ溶媒が不要になります。しかしながら、いくつかの欠点もあります。高圧分取システムでは、ステンレススチールなどの高圧材料が必要で、フラクションの回収に伴う噴霧や膨張により、安全性のリスクが高まります。このような「クローズベッド」システムでは利用可能なフラクションの数が限られているという使用者への制限もあります気液セパレーター(GLS)は、数多くのメリットのある低圧オプションです。低圧システムでは、定格圧力の低い材料を使用でき、安全性が大幅に向上します。分取時に追加の溶媒が一般に必要となりますが、低圧条件下でより完全に CO2 除去ができることでオープンベッドでの分取が可能になるため、分取可能なフラクション数が大幅に増加し、テクノロジーの適用性が広がります。
分取 SFC により、精製プロセスの選択性が大幅に向上します。SFC では一般的に順相分離が使用されますが、SFC では一部の従来の RPLC カラムおよび溶媒を使用することができ、化合物適合性の範囲が広がるため、非常に高い柔軟性が得られます。これにより、1 つのプラットホームで直交的な分離が可能になり、精製プロセス全体が効率化するため、このような広範な選択性が得られることは、SFC の明らかなメリットとなります。
SFC は、基本のレベルにおいて、順相クロマトグラフィー分離モードで動作します。一般的な分析条件では、移動相の大部分は極性有機溶媒のごく一部と組合わせた非極性の CO2 です。そして分離は、さまざまな機能を持つ比較的極性が高いカラムケミストリーを充塡した微粒子充塡カラムで行われます。移動相の粘性が低く、カラムに充塡された粒子が小さいため、SFC は主に低分子化合物のアプリケーションで使用されます。しかしながら、SFC を使用した高分子化合物のアプリケーションの範囲も拡大し続けています。また、化合物が SFC に適しているかどうかは主に溶解度に左右されます。SFC は非常に幅広い溶解度に対応しています。実際、原則的には、有機溶媒に溶解できるサンプルであればすべて SFC を使用できる可能性があります。このことは、多くのサンプル前処理では有機溶媒にサンプルを溶解するため、分取 SFC 装置に直接注入できて非常に有用です。
有機溶媒中の化合物の溶解度に関する有用な情報の 1 つは分配係数で、一般に LogP と表記します。一般的には、LogP は化合物の親油性または疎水性の尺度です。具体的には、分配係数(P)は、2 種類の非混和性溶媒の平衡状態にある混合物の 2 つの相における化合物の濃度の比率であり、これには一般的に水と 1-オクタノールが使用されます。CO2 は非極性溶媒であるため、LogP 値は SFC 条件下での化合物の挙動に関する良い指標になります。LogP 値が低いことは極性が高いことを示し、その結果として CO2 中の溶解度が低く、極性カラムケミストリーに対する親和性が高くなります。一方、LogP 値が高いと極性が低く、CO2 に対する溶解度が高く、カラムに対する親和性が低くなります。移動相が極性で固定相が非極性の RPLC では、これと反対のことが当てはまります。
分析(UPC2)アプリケーションでは、負荷量および濃度が低いサンプルは、LogP 値が -2 ~ 9 の化合物に対応できる可能性があります。ただし、分取 SFC では、高負荷量条件で CO2 に導入する際に、化合物が溶液中に溶解した状態が保たれていることが重要です。分取用濃度や分取量で非常に極性の高い化合物や親水性の化合物を含むサンプルについては、システムに注入する前に溶解度を確認する必要があります。通常、この確認は、サンプルを適切な有機溶媒に溶解し、少量のヘキサンまたはヘプタンを添加することで実施します。サンプルが溶液から析出する場合は、一般的に分取 SFC には適していないと見なされます。
分取 SFC の欠点の 1 つは、高極性化合物の溶解度が低い点です。ただし、移動相の有機部分に少量の水(添加剤として、通常 5% v:v 未満)を加えることで、SFC はさらに広い範囲の極性を持つサンプルに使用できるようになります。水は親水性化合物の溶解度を高め、それらの化合物が分離・精製できるようになります。したがって、SFC の適用範囲は、ペプチド、タンパク質、核酸塩基、およびその他の親水性分析種の試験にまで拡張することができます。この手法は、極性アプリケーションで役に立つことが確認されていますが、分取 SFC ではシステム出口でのサンプルの析出や氷の形成を回避するために、利用の際には注意が必要です。
共溶媒の選択は、クロマトグラフィー分析法開発と最適化における SFC の重要なパラメーターです。順相液体クロマトグラフィーでも逆相液体クロマトグラフィーでも、溶媒の混和性には限界があります。順相における脂肪族炭化水素および逆相における水により、これらの分離で使用できる溶媒の極性範囲が限定されます。SFC では、超臨界 CO2 はメタノールからヘプタンまで逆相と順相の両方の有機溶媒に混和できるため、分離法の開発において幅広い溶媒の選択性が得られます。このような幅広い選択性により、SFC 対応アプリケーションの範囲がさらに大きく広がります。
逆相クロマトグラフィーでは、ほとんどの分離を、通常 C18 カラムやこれと類似した疎水性カラムなど、限られた数の固定相で行います。SFC では、逆相(非極性)と順相(極性)の両方の範囲に及ぶさまざまなキラルおよびアキラルのカラムケミストリーが適用可能です。ほとんどのカラムで、塩基性、中性、酸性の化合物が十分溶出し、幅広い化学機能に対して分取 SFC が適合することが示されています。さまざまなカラムを使用することは欠点とも考えられますが、特定の化合物の精製における選択性を最適化できる機会でもあります。最新の分取 SFC 固定相により、キラル・アキラル精製に SFC を使用できる可能性がさらに高くなっています。特に、Waters Viridis カラムおよび Torus カラムは、SFC アプリケーション専用に設計されており、安定性が改善し、選択性が幅広くなり、ピーク形状が向上するとともに、添加剤の必要性が低減しています。表 4 に分取 SFC の適用性の範囲に対応するウォーターズのカラムのリストを示します。カラムの選択は分析法開発と最適化のための重要なパラメーターです。
Viridis(アキラル) |
Torus(アキラル) |
Trefoil(キラル) |
Silica/BEH |
2-PIC(2-ピコリルアミン) |
AMY 1(アミロース) |
BEH 2-エチルピリジン |
DEA(ジエチルアミン) |
CEL 1(セルロース) |
Silica 2-エチルピリジン |
Diol(高密度ジオール) |
CEL 2(セルロース) |
CSH フルオロフェニル |
1-AA(アミノアントラセン) |
SFC は、キラル化合物の分離用のクロマトグラフィーソリューションとしては間違いなく最高のものであり、順相 HPLC などの他のクロマトグラフィー手法と比べると、分離の効率とスピードが大幅に向上しています。キラル分離は通常、順相 HPLC を用いて行います。SFC では、キラル分離を非常に短時間で実施できる上、分離能が向上し、溶媒消費量が削減できます。
したがって SFC 環境では、キラルカラムは、キラルアプリケーションだけでなく、ジアステレオマー、代謝物、位置異性体、およびその他の構造的に関連する化合物の分離にもよく使用されます。セルロースおよびアミロースベースの相が最も一般的ですが、その他のキラル固定相とも互換性があります。分取 SFC は、上記化合物の精製において、フラクションの純度向上、効率向上および溶媒使用量削減によるコスト削減などのメリットがあります。図 13 に、順相 HPLC と SFC を使用したペルメトリンのエナンチオマーとジアステレオマーのキラル分離を示します。
HPLC では 4 つのピークすべてを分離することはできませんでしたが、SFC では、全てのピークをより短いカラムを使用してより短時間で分離できました。