• アプリケーションノート

Premier Protein SEC カラムを用いた SEC-MALS のデータ品質の評価

Premier Protein SEC カラムを用いた SEC-MALS のデータ品質の評価

  • Hua Yang
  • Stephan M. Koza
  • Ying Qing Yu
  • Waters Corporation

要約

多角度光散乱(MALS)検出器および UV/RI 検出と結合したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、分子量、凝集、サイズ、形態などの高分子の生物物理特性の特性解析にますます使用されるようになっています。これらの特性を正確に解析するには、データの品質が最も重要です。ここでは、XBridge™ Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラムおよび ACQUITY™ Premier Protein SEC 250 Å、1.7 µm カラムで、SEC-MALS ノイズレベルが低いことを示します。トラスツズマブの分子量を、Premier Protein 250 Å カラムおよび市販のウォーターズの SEC カラムでの SEC-UV-MALS データを使用して測定します。

アプリケーションのメリット

  • XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラムおよび ACQUITY Premier Protein SEC 250 Å、1.7 µm カラムでの低 MALS ノイズレベル
  • UV 検出および MALS 検出が後続する、Premier Protein SEC カラムを使用するタンパク質の分子量測定

はじめに

SEC は、高分子のサイズバリアント特性解析に広く使われています。これにより、高分子量凝集体および低分子量分子種やその他の不純物からモノマーが分離されます。多角度光散乱(MALS)検出器および UV 検出器と結合することにより、タンパク質バイオ医薬品の分子量、凝集、サイズ、形態などの多くの生物物理特性を特性解析できるため、SEC の有用性が大幅に向上します1,2。 SEC-MALS 実験のデータの品質は、正確な特性解析のために非常に重要です。

Waters MaxPeak™ Premier Protein SEC カラムには、末端がヒドロキシル化されたヒドロキシル化ポリエチレンオキシドと結合した BEH™ 粒子が充塡されています。その一方で、カラムハードウェアは、ステンレススチール製で MaxPeak Premier High Performance Surface(HPS)テクノロジーを採用しています。このアプリケーションノートでは、Premier Protein SEC カラムから得られた SEC-MALS ノイズレベルを、ウォーターズのジオール結合エチレン架橋型ハイブリッド(BEH)オルガノシリカベースの SEC カラムおよびジオール結合シリカベースの SEC カラムで得られたものと比較します。トラスツズマブおよびそのサイズバリアントの分子量測定も行いました。

実験方法

サンプルの説明

トラスツズマブ(21 mg/mL)は、LC システムにそのまま注入しました。

分析条件

LC 条件

LC システム:

ACQUITY UPLC H-Class PLUS Bio システム(平均バンド拡散:4 σ < 22 µL

検出:

ACQUITY UPLC TUV 検出器(5 mm チタンフローセル付き)、波長:280 nm

MALS 検出器:Wyatt µDAWN

バイアル:

ポリプロピレン 12 × 32 mm スクリューネックバイアル(キャップ付きおよびスリット入り PTFE/シリコーンセプタム付き)、容量 300 µL、100 個入り(製品番号:186002639)

カラム:

XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm、7.8 × 300 mm およびモノクローナル抗体サイズバリアント標準試料(製品番号:176005070)

ACQUITY Premier Protein SEC 250 Å、1.7 µm、4.6 × 300 mm およびモノクローナル抗体サイズバリアント標準試料(製品番号:176005072)

ACQUITY UPLC Protein BEH SEC カラム、200 Å、1.7 µm、4.6 × 300 mm(製品番号:186005226)

BioResolve SEC mAb カラム、200 Å、2.5 µm、7.8 × 300 mm およびモノクローナル抗体サイズバリアント標準試料(製品番号:176004595)

ジオール結合シリカベース SEC、250 Å、5 µm、7.8 × 300 mm

カラム温度:

室温

サンプル温度:

10 ℃

注入量:

10 µL(内径 7.8 mm のカラム)

3.5 µL(内径 4.6 mm のカラム)

流速:

0.75 mL/分(内径 7.8 mm のカラム)

0.38 mL/分(内径 4.6 mm のカラム)

移動相:

2 x DPBS(リン酸緩衝生理食塩水、Dulbecco 処方)

データ管理

クロマトグラフィーソフトウェア:

Empower™ 3(FR 4)

結果および考察

ブランクサンプルを 40 ~ 50 分間平衡化後の新品の SEC カラムに注入し、2 x DPBS(リン酸緩衝生理食塩水、Dulbecco 処方)移動相で SEC-MALS ノイズを評価しました。このようなノイズは、注入時の圧力パルスおよびカラムからの粒子のこぼれ出しの影響を受けている可能性があります。図 1 に、5 本の SEC カラムから取得した MALS データが示されています。データ収集速度は、2 本の 4.6 × 300 mm カラムでは 5 Hz、3 本の 7.8 × 300 mm カラムでは 2 Hz です。y 軸は、図 1a のジオール結合シリカベースの SEC カラムを除き、y 値の範囲(最大値と最小値の差)が同じになるように設定されています。これにより、カラム間でのノイズレベルの視覚的比較が容易になります。図 1a に分析全体のデータが、図 1b に分析の 2 分間の部分のデータが示されており、ノイズレベルは 2 分間の部分に基づいて評価しました。一般に、Premier Protein SEC カラムのノイズレベルは、対応する ACQUITY BEH 200 SEC 1.7 µm カラムおよび BioResolve SEC 2.5 µm カラムの 1.5 ~ 2 倍高い値です。ジオール結合シリカベース SEC、250 Å、5 µm カラムの MALS ノイズは、ACQUITY Premier Protein SEC カラムおよび BioResolve SEC カラムのそれぞれ 2.5 倍および 4 倍です。さらに、ジオール結合シリカベースの SEC、250 Å、5 µm、7.8 × 300 mm カラムでは、約 2 分 および 6 分に 2 つの早期溶出ピークが発生しました。これは、注入時の圧力パルスによってカラムから粒子や微粒子がこぼれ出たことが原因の可能性があります。試験したカラムには上向きのスパイクが観察されず、カラムからの粒子のこぼれ出しは最小限であることが示されています。これらの結果は、以前に分かったことと一致しています3

図 1.  5 本の新しい SEC カラムへのブランク注入で収集した SEC-MALS ベースラインノイズ。移動相は 2 x DPBS です。
1a.  フルクロマトグラムで表示されたベースライン。
1b.  クロマトグラムの 2 分間の部分。ノイズはここで測定され、右上隅に注記されています。

分子量(MW)を測定するために、2x DPBS 移動相を用いてトラスツズマブを 5 本の SEC カラムすべてで分離しました。図 2a および 2b に、MALS(上のトレース、赤)および 280 nm の UV(下のトレース、青)で検出した分離が示されています。以前の結果と同様3–7、高分子種(HMWS2、HMWS1)と低分子種(LMWS2)がモノマーピークから十分に分離されました。ジオール結合シリカベースカラムを除き、LMWS1 の部分的分離がすべてのカラムで観察されました。ジオール結合シリカベースカラムでは、LMSW1 がモノマーピークの下に埋め込まれていました。LMWS1 とモノマーの間の分離は、ACQUITY BEH 200 SEC、4.6 × 300 mm 1.7 µm カラムの方が、ACQUITY Premier SEC 250 Å、4.6 × 300 mm 1.7 µm カラムよりもわずかに良好です(図 2a)。おそらくこれは、Premier SEC カラムの方がピーク容量がわずかに小さいため、Premier SEC カラムの性能がバンド拡散による悪影響をより受けやすいためです。ジオール結合シリカベースのカラム(破線の円)では 6 ~ 7 分辺りに余分のピークが現れました。これも、注入時の圧力パルスの影響が原因の可能性があります。 

MALS 検出の平均シグナル/ノイズ比が図 2 の右上隅に示されています。この値は、トラスツズマブモノマーのピーク高さを、ベースラインが比較的安定しているノイズレベルで除算することで得られます(n = 4 または 5)。ACQUITY Premier Protein SEC カラムのシグナル/ノイズ比は、対応する ACQUITY BEH 200 SEC 1.7 µm カラムおよび BioResolve SEC 2.5 µm カラムの 1.5 ~ 2 倍低く、これは主にノイズレベルがわずかに高いためです。ジオール結合シリカベースカラムのシグナル/ノイズ比は、他の 4 本のカラムよりもほぼ 1 桁低く、これはシグナルが小さくノイズが大きいためです。

図 2.  トラスツズマブとそのサイズバリアントが、2 x DPBS を移動相として用いて試験した 5 本の SEC カラムで分離されています。赤色のトレース(上)は MALS シグナル、青色のトレース(下)は UV 280 nm シグナルです。
2a.2 本の 4.6 × 300 mm、1.7 µm カラムで得られたクロマトグラム。
2b.  3 本の 7.8 × 300 mm、2.5 µm または 5 µm カラムで得られたクロマトグラム。HMWS:高分子種。LMWS:低分子種。

SEC-UV-MALS 実験のデータは、Wyatt の Astra ソフトウェアで解析しました(図 3 および表 1)。モノマー、およびおそらくダイマーである HMWS1 の分子量について、すべてのカラムで一貫した結果が得られました。試験したカラムの間で LMWS1 の MW のばらつきが観察されます。これはおそらく、ピークのほとんどがモノマーピークのテールの下で溶出するためです。カラムの間での LMWS2 の MW のばらつきは、おそらくピークの存在量が少ないことによるものです。ジオール結合シリカベースカラム(図 3e)での LMWS2 のピークにわたって MW の大きなばらつきが発生しています。これは、低シグナルと高ノイズの組み合わせによるものと考えられます。

図 3.  移動相として 2 x DPBS を用いて試験した 5 本の SEC カラムで得られたデータによる、トラスツズマブとそのサイズバリアントの分子量測定。データは、Wyatt Technology の Astra ソフトウェアで解析されています。結果は表 1 にリストされています。
表 1.  SEC-UV-MALS 実験に基づいて Wyatt の Astra ソフトウェアを用いて測定した、トラスツズマブとそのサイズバリアントの分子量

結論

高分子の分子量やその他の生物物理学的特性の正確で再現性のある測定をするために、SEC-MALS のデータ品質が重要です。このアプリケーションノートでは、MaxPeak Premier Protein SEC カラム(ACQUITY Premier Protein SEC 250 Å、1.7 µm および XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm)、ならびに ACQUITY UPLC Protein BEH SEC 200 Å、1.7 µm カラム、BioResolve SEC mAb 200 Å、2.5 µm カラム、ジオール結合シリカベースカラムで、SEC-MALS ノイズレベルを評価しました。データにより、ACQUITY Premier Protein SEC カラムでの SEC-MALS ノイズレベルが、ACQUITY Protein BEH 200 SEC カラムでの SEC-MALS ノイズレベルよりもわずかに高いことが示されています。ジオール結合シリカベースの 250 Å、5 µm カラムと比較して、ACQUITY Premier Protein SEC カラムでは SEC-MALS ノイズレベルが大幅に改善されていました。トラスツズマブのサイズバリアントでは、モノマーおよび HMWS1 の分子量について、すべてのカラムの間で一貫した結果が得られました。LMWS1 および LMWS2 の MW のカラム間で発生するばらつきは、それぞれ分離が部分的であることおよび存在量の低さに起因する可能性があります。ジオール結合シリカベースカラムで LMWS2 ピークにわたって大きな MW のばらつきが生じているのは、低シグナルと高ノイズの組み合わせが原因であると考えられます。

参考文献

  1. Some D., Amartely H., Tsadok A., Lebendiker M. Characterization of Proteins by Size-Exclusion Chromatography Coupled to Multi-Angle Light Scattering (SEC-MALS). Journal of Visualized Experiments. 2019; (148), e59615, doi:10.3791/59615.
  2. Huang R. Y.-C., Wang F., Wheeler M., Wang Y., Langish R., Chau B., Dong J., Morishige W., Bezman N., Strop P., Rajpal A., Gudmundsson O., and Chen G. Integrated Approach for Characterizing Bispecific Antibody/Antigens Complexes and Mapping Binding Epitopes with SEC/MALS, Native Mass Spectrometry, and Protein Footprinting. Anal.Chem.2020; 92, 10709–10716.
  3. Koza S. M., Chen W. Improving SEC-MALS Data Quality with Ethylene Bridged Hybrid HPLC Size-Exclusion Columns.Waters Application Note.2018, 720006289.
  4. Koza S. M., Yang H., Yu Y. Q. Expanding Size-Exclusion Chromatography Platform Method Versatility for Monoclonal Antibody Analysis Using Waters XBridge Premier Protein SEC Columns.Waters Application Note.2022, 720007500.
  5.  Koza S. M., Yang H., Yu Y. Q. Modern Size-Exclusion Chromatography Separations of Biosimilar Antibodies at Physiological pH and Ionic Strength.Waters Application Note.2022, 720007484.
  6. Koza S. M., Yang H., Yu Y. Q. MaxPeak Premier Protein SEC 250 Å Column Lifetimes at Physiological pH for Polysorbate (Tween) Formulated Biosimilar Monoclonal Antibodies.Waters Application Note.2022, 720007523.
  7. Yang H., Koza S. M., Yu Y. Q. USP Monograph mAb SEC Method Robustness on the XBridge Premier Protein SEC Column.Waters Application Note.2021, 720007481.

720007670JA、2022 年 7 月

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