• アプリケーションノート

XBridge Premier Protein SEC カラムを用いた USP モノグラフの mAb SEC 分析法の頑健性

XBridge Premier Protein SEC カラムを用いた USP モノグラフの mAb SEC 分析法の頑健性

  • Hua Yang
  • Stephan M. Koza
  • Ying Qing Yu
  • Waters Corporation

要約

サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、サイズベースの不純物分析に幅広く使用されています。本研究では、モノクローナル抗体の HMWS、モノマーおよび LMWS の測定において、Waters XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラムを使用し、Waters MaxPeak High Performance Surfaces(HPS)および BEH ポリエチレン SEC パーティクルテクノロジーを使用した SEC の性能面でのメリットを組み合わせた、SEC ベースの mAb 分析のための USP モノグラフ分析法が頑健であることを実証しています。XBridge Premier Protein SEC カラムで実行する USP 分析法は、他のモノクローナル抗体中の不純物のサイズベースの測定のための分析法開発の有効な出発点となる可能性があります。

XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラムを使用して得られた結果は、粒子径 5 µm、ポアサイズ 250 Å を充塡した 7.8 × 300 mm の L59 SEC カラムおよび USP 分析法で指定された移動相を使用して得られた結果と一貫していました。更に、XBridge カラムは、SEC 移動相における pH および塩濃度の変動やカラム間の変動に関しても頑健であることが示されました。

アプリケーションのメリット

  • Waters XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラムを使用して得られた mAb サイズバリアントの分析のための頑健な USP SEC 分析法
  • Waters XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラムは、USP に記載されている L59 カラムで、mAb 分析のための USP モノグラフに指定されている L59 カラムで得られる結果と同等の定量結果が得られます。更に、XBridge カラムでは、HMWS および LMWS 不純物のいずれについても、分離能が著しく改善していました。
  • USP mAb SEC 分析での実証済みカラム間再現性

はじめに

米国薬局方(USP)General Chapter <129>(Analytical Procedures for Recombinant Therapeutic Monoclonal Antibodies)には、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により組換え医薬品モノクローナル抗体(mAb)中の不純物を測定する手順が記載されています1。この分析法では、粒子径 5 µm、ポアサイズ 250 Å の 7.8 × 300 mm SEC カラムを使用して、高分子量分子種(HMWS)、mAb モノマー、低分子量分子種(LMWS)をモニターしています。LMWS は mAb の 3 分の 1(Fab または Fc ドメイン)と推定されます2。  

MaxPeak Premier High Performance Surfaces(HPS)を使用したウォーターズの最新技術を新規の BEH ベースのヒドロキシ末端を持つポリエチレン SEC 粒子結合テクノロジーと相乗的に組み合わせることで、望ましくない二次イオン性相互作用および疎水性相互作用が最小限に抑えられ、mAb サイズバリアントの信頼性の高い SEC 分析の実現に役立っています。

このアプリケーションノートでは、Waters XBridge Premier Protein SEC 250 Å、7.8 × 300 mm カラムを使用した場合、USP モノクローナル IgG 標準の分析において、USP 分析法が頑健であることを示しています。更に、現在バイオシミラーとして米国で入手できる 4 種のバイオシミラーモノクローナル抗体(mAb)の HMWS および LMWS の測定において、XBridge カラムを使用した場合、USP 分析法の指定に従って粒子径 5 µm のパーティクルを充塡した 7.8 × 300 mm SEC カラムを使用した場合と一貫した結果が得られました。

実験方法

サンプルの説明

モノクローナル IgG システム適格性標準は USP から購入しました。バイオシミラー mAb はベバシズマブ(Mvasi)、インフリキシマブ(Avsola)、リツキシマブ(Ruxience)、オリジネーターはトラスツズマブ(Herceptin)を用いました。

LC 条件

LC システム:

ACQUITY UPLC H-Class Bio

検出:

ACQUITY UPLC TUV 検出器、5 mm チタンフローセル装着、波長:280 nm

バイアル:

ポリプロピレン 12 × 32 mm スクリューネックバイアル(キャップ付きおよびスリット入り PTFE/シリコーンセプタム付き)、容量 300 µL、100 個入り(製品番号:186002639)

カラム:

XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 μm、7.8 × 300 mm カラムおよび mAb サイズバリアント標準(製品番号:176005070)

BioSuite Diol(OH)カラム、250 Å、5 μm、7.8 × 300 mm(製品番号:186002165)

カラム温度:

室温

サンプル温度:

10 ℃

注入量:

5 ~ 20 μL

流速:

0.5 ~ 1 mL/分

移動相 A:

400 mM リン酸カリウム、一塩基性

移動相 B:

400 mM リン酸カリウム、二塩基性

移動相 C:

1 M 塩化カリウム

移動相 D:

送液するバッファー濃度:

200 mM

グラジエントテーブル(Auto·Blend メソッド、経験的な表を使用)

汎用クオータナリー LC システムのための同等のグラジエントテーブル

結果および考察

A. XBridge Premier Protein SEC カラムでの USP 分析法の頑健性

図 1 に示すように、XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラム(7.8 × 300 mm)で USP モノクローナル IgG を分析しました。USP 分析法で使用している移動相は 200 mM リン酸カリウムおよび 250 mM 塩化カリウム(pH 6.2)です。pH(6.0 および 6.4)と塩濃度(塩化カリウム 200 mM および 300 mM)を変えた場合の分析法の頑健性を調査するため、4 つの追加の移動相条件でも実行しました。

様々な移動相条件を使用した場合に、同様の分離が得られました(図 1b)。このことは、同じ XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm、7.8 × 300 mm カラムを使用した場合に、試験した pH および塩濃度の範囲内において USP 分析法が頑健であることを示しています。USP General Chapter <129> で設定されている定量基準では、HMWS のピーク面積割合が 0.4% ~ 0.67% の範囲、LMWS のピーク面積割合が 0.2% 以下(NMT)であることが必要です。図 1b に示すように、HMWS は 10.7 ~ 12.3 分に溶出し、LMWS は 15.5 ~ 16.3 分に溶出しています。クロマトグラム(n = 2)に示すように、すべての移動相条件において、HMWS および LMWS の平均ピーク面積比はいずれも基準を満たしています。

図 1.  XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm SEC カラムで、5 つの移動相条件下でのモノクローナル IgG サイズバリアント測定のための USP モノグラフ分析法を分析しました。A. フルスケールのクロマトグラムの重ね描き。B. HMWS および LMWS の拡大図。それぞれの平均ピーク面積割合をクロマトグラムに示しています(n = 2)。

図 2 に、粒子径 5 µm のパーティクルを充塡した L59 SEC カラム(モノクローナル IgG サイズバリアント測定のための USP 分析法カラム)で USP 指定の移動相を使用して行った分析を示します。HMWS および LMWS の平均ピーク面積割合がクロマトグラム中に示されており、定量基準を満たしています(n = 2)。

図 2.  モノクローナル IgG サイズバリアント測定のための USP モノグラフ分析法を、粒子径 5 µm のパーティクルを充塡した USP SEC カラムで、General Chapter <129> で指定されている移動相条件(200 mM リン酸カリウムおよび 250 mM 塩化カリウム、pH 6.2)を用いて分析しました。HMWS および LMWS の平均ピーク面積割合がクロマトグラムに示されています(n = 2)。挿入図には、クロマトグラムがフルスケールで表示されています。

B. USP 分析法を使用したバイオシミラー mAb の不純物分析

USP モノクローナル IgG および現在米国で市販されている 4 種の mAb(ベバシズマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ)のサンプルを、異なるバッチの 3 本の XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラムと 1 本の粒子径 5 µm のパーティクルを充塡した SEC カラムを使用して、USP 分析法で分析しました(図 3 ~ 7)。バイオシミラーおよびオリジネーター mAb の分析で用いた流速は 0.5 mL/分です。ただし Premier カラム #3 の流速は 1 mL/分です。ほとんどのカラムで 2 回繰り返し注入を行いました(n = 2)。エラーバーは結果の範囲を示します。

3 つのバッチからの XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm 粒子および上述した USP 分析法で推奨されているカラムを使用して、5 種の mAb すべてで、HMWS および LMWS のいずれについても一貫した結果が得られました。LMWS1 については、Premier カラム #3 で割合が低くなりました。これは、高流速において、モノマーピークと LMWS1 の間の分離が低下したことが原因と考えられます。一方、ほとんどの場合、3 本の XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラムでは、低流速であっても HMWS と LMWS のピーク面積割合がほぼ同様であり、XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラムを使用することでサンプルスループットが向上することが示唆されます。試験したすべての mAb について、USP 分析法カラムでは LMWS1 は十分に分離されず、信頼性の高い定量ができませんでした。そのため、プロットにデータを含めていません。場合によっては、HMWS1 のピーク面積割合が、XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラムよりも USP 分析法カラムの方が低くなりました。粒子径 5 µm のパーティクルを充塡した USP 分析法カラムにおいては HMWS1 とモノマーピークの間の分離が悪いことがその原因として考えられます。

図 3.  3 本の異なるバッチの XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラムおよび 1 本の粒子径 5 µm のパーティクルを充塡した USP SEC 分析法カラムで、General Chapter <129> で指定されている移動相条件を用いて USP モノクローナル IgG サイズバリアントを測定して得られた結果の比較。見やすいように、LMWS2 のピーク面積割合を実際の値の 10 倍にしてプロットしました。
図 4.  3 本の異なるバッチの XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラムおよび 1 本の粒子径 5 µm のパーティクルを充塡した USP SEC 分析法カラムで、General Chapter <129> で指定されている移動相条件を用いてベバシズマブバイオシミラーを測定して得られた結果の比較。流速は 0.5 mL/分です。ただし Premier カラム #3 の流速は 1 mL/分です。見やすいように、LMWS2 のピーク面積割合を実際の値の 10 倍にしてプロットしました。
図 5.  3 本の異なるバッチの XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラムおよび 1 本の粒子径 5 µm のパーティクルを充塡した USP SEC 分析法カラムで、General Chapter <129> で指定されている移動相条件を用いてインフリキシマブバイオシミラーを測定して得られた結果の比較。流速は 0.5 mL/分です。ただし Premier カラム #3 の流速は 1 mL/分です。見やすいように、HMWS2 と LMWS2 のピーク面積割合を実際の値の 10 倍にしてプロットしました。
図 6.  3 本の異なるバッチの XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラムおよび 1 本の粒子径 5 µm のパーティクルを充塡した USP SEC 分析法カラムで、General Chapter <129> で指定されている移動相条件を用いてリツキシマブバイオシミラーを測定して得られた結果の比較。流速は 0.5 mL/分です。ただし Premier カラム #3 の流速は 1 mL/分です。
図 7.  3 本の異なるバッチの XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラムおよび 1 本の粒子径 5 µm のパーティクルを充塡した USP SEC 分析法カラムで、General Chapter <129> で指定されている移動相条件を用いてトラスツズマブを測定して得られた結果の比較。流速は 0.5 mL/分です。ただし Premier カラム #3 の流速は 1 mL/分です。

結論

Waters XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラムを使用した USP 分析法による mAb の HMWS および LMWS の測定は頑健です。XBridge Premier Protein SEC 250 Å、2.5 µm カラムを使用して、一貫性のある結果が得られました。また、粒子径 5 µm のパーティクルを充塡した USP 分析法カラムと同等の結果が得られました。

したがって、XBridge カラムで実行する USP モノグラフ mAb SEC 分析法は、モノクローナル抗体中の不純物のサイズベースの測定のための分析法開発の有効な出発点となる可能性があります。更に、XBridge カラムにより、指定された粒子径 5 µm のパーティクルを充塡した USP SEC 分析法カラムの 2 倍のサンプルスループットが得られます。

参考文献

  1. Analytical Procedures for Recombinant Therapeutic Monoclonal Antibodies.USP General Chapter <129>.2017.
  2. Hong P.; Koza S. M.; Fountain K. J. Analysis of Proteins by Size-Exclusion Chromatography Coupled With Mass Spectrometry Under Non-denaturing Conditions.Waters Application Note.720004254EN.2012.

720007481JA、2021 年 12 月

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