CONFIRM Sequence:合成オリゴヌクレオチドとその不純物の配列確認のための waters_connect™ アプリケーション
要約
このアプリケーションノートでは、オリゴヌクレオチドとその不純物の配列確認のための、自動コンプライアンス対応液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)ワークフローを実証します。
アプリケーションのメリット
- CONFIRM Sequence は、複雑なタンデム質量スペクトル(MS/MS)および MSE(特定のプリカーサーを選択しない)オリゴヌクレオチド質量スペクトルの迅速な解明用に開発された新しい種類の waters_connect アプリケーションです。
- CONFIRM Sequence アプリケーションにより、完全長プロダクト(FLP)、および UV ピーク面積の測定により存在量レベルが 0.2% の低存在量オリゴヌクレオチド不純物について、完全なシーケンスカバー率(100%)が得られることが示されています。
- CONFIRM Sequence アプリにより、複雑なオリゴヌクレオチドのフラグメンテーションスペクトルの迅速なデータ解釈が可能に
- 適切なコリジョンエネルギーランプを用いた、FLP のデータインディペンデント測定(MSE または DIA)により、個々のオリゴヌクレオチドプリカーサーに対してコリジョンエネルギーの最適化を行うことなく、完全なシーケンスカバー率が得られる
はじめに
合成オリゴヌクレオチドは、低分子医薬品およびタンパク質医薬品に代わるものとしてこの 10 年間に登場したクラスの医薬品です1-3。 オリゴヌクレオチド医薬品の製造および品質管理には、非常に選択性および感度の高い LC-MS 分析法が求められます。イオン対逆相クロマトグラフィー(IP-RP)は、合成オリゴヌクレオチドの特性解析に使用される最も一般的な LC-MS メソッドです。固相オリゴマー合成ケミストリーの大きな進展にも関わらず4、合成オリゴヌクレオチドには、複数種の低濃度(0.1 ~ 2%)不純物がいまだに含まれています3-5。
BioAccord™ システムを使用した合成オリゴヌクレオチドとその不純物の、規制環境で行うインタクト質量確認の自動ワークフローについては、以前に説明しました6–9。インタクト質量確認に加えて、完全なオリゴヌクレオチド特性解析のもう 1 つの基盤は、配列の検証/バリデーションプロセスです。ヌクレオチド配列は細胞内での生物学的機能に直接関連しているため、オリゴヌクレオチド医薬品やその他の核酸医薬品(mRNA など)の活性を保証するために、配列が正確であることは極めて重要です。曖昧な点がない配列割り当てを行うには、完全なシーケンスカバー率(100%)の達成が望まれます。予想されるオリゴヌクレオチド配列を確認するために、タンデム質量分析によるオリゴヌクレオチドプリカーサーの気相フラグメンテーションに続き、検出されたすべてのフラグメントイオンを分析します。これを手動で行うと、手間と時間がかかるプロセスになる可能性があります。それは、オリゴヌクレオチドのフラグメンテーションには多くの可能性があり、オリゴヌクレオチドプリカーサーの衝突誘起解離(CID)の後に通常、さまざまな a、b、c、d、w、x、y、z イオン10が観察されるからです。この多様なフラグメントイオンのため、配列の情報が得られないフラグメント(ヌクレオチドの喪失など)が存在することと相まって、オリゴヌクレオチドの曖昧な点のない配列確認は、ペプチドの配列確認よりも明らかに困難な課題です。
このような複雑な気相解離スペクトルの自動注釈を実現するために、この 20 年間にいくつかのコンピュータープログラムが開発されました11–18。
CONFIRM Sequence は、ターゲット MS/MS またはノンターゲット MSE(DIA)で取り込んだオリゴヌクレオチドの MS/MS スペクトルを自動的に解析することで、合成オリゴヌクレオチドとその不純物の配列確認を自動化する、最近導入された waters_connect アプリケーションです。
今回、合成オリゴヌクレオチドとその不純物の迅速な自動配列確認のための CONFIRM Sequence アプリケーションの機能について調査しました。
実験方法
試薬およびサンプル前処理
トリエチルアミン(TEA、純度 99.5%、カタログ番号 65897-50ML)およびメタノール(LC-MS グレード、カタログ番号 34966-1L)は Honeywell(ノースカロライナ州 Charlotte)から入手し、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP、純度 99%、カタログ番号 105228-100G)は Sigma Aldrich(ミズーリ州 St Louis)から購入しました。HPLC グレードの脱イオン水(DI)タイプ I は、MilliQ システム(マサチューセッツ州 Bedford、Millipore)を使用して精製しました。移動相は試験日に新たに調製して使用しました。ヌクレオチドのうちの 19 種に 2'-OMe 修飾が含まれ、配列が GUA ACC AAG AGU AUU CCA UTT で元素組成が C229H306N76O143P20 の、長さ 21-mer の高度に修飾されたオリゴヌクレオチドは、ATDBio(英国、Southhampton)から購入しました。ストック溶液は、濃度 1 µM(または 2.34 µg/mL)で脱イオン水中に調製してから、10 µL を注入しました。これは、21-mer オリゴヌクレオチドの MS/MS 測定のためのオンカラムロード 10 ピコモルに相当します。
LC 条件
LC-MS システム: |
H-Class Bio UPLC™ システムと組み合わせた Xevo™ G2-XS QTof |
カラム: |
ACQUITY™ Premier OST カラム 1.7 µm、130 Å、2.1 × 100 mm、 (製品番号:186009485)
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カラム温度: |
60 ℃ |
流速: |
300 µL/分 |
移動相 |
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溶媒 A: |
40 mM HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)、7 mM TEA(トリエチルアミン)含有脱イオン水、pH 8.6 |
溶媒 B: |
20 mM HFIP、3.5 mM TEA 含有 50% メタノール |
サンプル温度: |
6 ℃ |
サンプルバイアル: |
LC-MS 認証マキシマムリカバリーバイアル(製品番号: 186005663CV) |
注入量: |
10 µL |
洗浄溶媒 |
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パージ溶媒: |
50% メタノール |
サンプルマネージャー洗浄溶媒: |
50% メタノール |
シール洗浄溶媒: |
20% アセトニトリル含有脱イオン水 |
グラジエントテーブル
MS 条件
キャピラリー電圧: |
2.5 kV |
コーン電圧: |
40 V |
イオン源温度: |
125 ℃ |
脱溶媒温度: |
400 ℃ |
脱溶媒ガス(N2)流量: |
600 L/時間 |
コーンガス流量: |
50 L/時間 |
ToF 質量範囲: |
500 ~ 5000 |
取り込み速度: |
1 Hz |
コリジョンエネルギー: |
5 ~ 70 V の範囲の 15 種の固定コリジョンエネルギー(2、5、10、15、20、 25、30、35、40、45、 50、55、60、65、70 V)を、二価、三価、四価のオリゴヌクレオチドプリカーサーのターゲット MS/MS 測定について検討しました。MSE(DIA)測定(20 ~ 40 V、40 ~ 60 V、60 ~ 80 V、80 ~ 100 V)についても、複数の高エネルギー CE ランプを検討しました。 |
ロックマス: |
100 fmole/µL GFP |
データ取り込みソフトウェア: |
waters_connect 1.9.13.9 |
データ解析ソフトウェア: |
CONFIRM Sequence 1.0 |
結果および考察
新しく導入した CONFIRM Sequence アプリケーションの機能を実証するために、21-mer のオリゴヌクレオチドとその不純物を被験サンプルとして選びました。実験セクションおよび図 1 にリストされている配列に示されているように、オリゴヌクレオチドのかなりの部分(21 ヌクレオチド中に 19)に修飾ヌクレオチドが含まれていました。2'-OMe 修飾は、オリゴヌクレオチド配列中に青色でラベル付けされた 3 つのグアノシン(G)、および緑色でラベル付けされた 7 つのアデノシン(A)に付加されました。同じ 2’-OMe 官能基がウリジンおよびシチジンに付加されることに加えて、これら 2 種のヌクレオシドの核酸塩基はさらに 5-メチル基を 1 つ付加して修飾され、2’-OMe 5-Me ウリジン 5 つ(U、紫色でラベル付け)と 2’-OMe 5-Me シチジン 4 つ(赤色でラベル付け)が生成されています。修飾されていないヌクレオチドは、21-mer の 3’ 末端にある 2 つのデオキシチミジン(TT)のみです。
CONFIRM Sequence アプリの重要なコンポーネントは、合成ライブラリーです。合成ライブラリーにより、対象のオリゴヌクレオチド配列を定義できます。このライブラリーは、サブコンポーネントライブラリー、モノマーライブラリー、配列ライブラリー、モディファイヤーライブラリーの 4 つの個別のライブラリーに分かれています。個々のヌクレオチド構造は 3 つの固有の分子(塩基、糖、リンカー)に分けられ、それぞれ個別にサブコンポーネントライブラリーに保存されます。これらのヌクレオチド構成要素はモノマーに組み立てられ、モノマーは個別にモノマーライブラリーに保存されます。さまざまなヌクレオチドモノマーを組み合わせて必要なオリゴヌクレオチド配列にすることができ、それらは配列ライブラリーに保存されます。配列ライブラリーの配列は、必要に応じて簡単に編集できます。オリゴヌクレオチドに非標準(独特)のヌクレオチド修飾が含まれている場合、それらをモディファイヤーライブラリーセクションから手動で設定できます。今回分析した 21-mer の高度修飾オリゴヌクレオチドの場合、2’-OMe-5-Me シチジンと 2’-OMe-5-Me ウリジンの 2 つのモノマーが既定のライブラリーに含まれていないため、これらのモノマーをモノマーライブラリーに設定しました。図 1 に示されているスクリーンショットに、これら 2 つのヌクレオチドモノマーが対応するサブコンポーネントからどのように組み立てられたかが示されています。CONFIRM Sequence アプリケーションでは、この高度に修飾された 21-mer オリゴヌクレオチドの配列は、OMEG 2-OMe-5-MeU OMEA OMEA 2-OMe-5-MeC 2-OMe-5-MeC OMEA OMEA OMEG OMEA OMEG 2-OMe-5-MeU OMEA 2-OMe-5-MeU 2-OMe-5-MeU 2-OMe-5-MeC 2-OMe-5-MeC OMEA 2-OMe-5-MeU dT dT として入力されています。
2.1 × 100 mm ACQUITY Premier OST カラム(製品番号:186009485)で分析すると、図 2 に示されているように、21-nt オリゴヌクレオチドの分離により、非常に複雑な不純物プロファイルが明らかになります。11 種のオリゴヌクレオチド不純物が分離され、TUV 検出器および MS 検出器の両方で検出されました。最初のサンプル注入では、1 µM の 21-mer オリゴヌクレオチドを 2 µL 注入し、データをネガティブ ESI フルスキャンモード(m/z = 500 ~ 5000)で測定して、このオリゴヌクレオチドとその不純物(表 I に記載)に対応する最も存在量の多いプリカーサーを検出しました。連続注入では、10 µL のサンプルを注入し、四重極を使用して Xevo G2-XS 装置を MS/MS モードで操作し、(約 5 Da のウィンドウで)特定の多価オリゴヌクレオチドプリカーサーを単離しました(表 I を参照)。四重極分離に続いて、装置のコリジョンセル内で各プリカーサーに CID(衝突誘起解離)フラグメンテーションを受けさせ、対応するフラグメントイオンが含まれている MS/MS スペクトルを生成しました。各オリゴヌクレオチドの(フラグメントイオンのシーケンスカバー率が高い)最適なフラグメンテーションが起きる最適固定コリジョン電圧を見つけるために、10 ~ 80 V の範囲の印加電圧でコリジョンエネルギー試験を行いました。CONFIRM Sequence アプリを使用して、記録されているすべての MS/MS スペクトルの MS/MS シーケンスカバー率を評価しました。21-mer オリゴヌクレオチドの場合、その三価のプリカーサーイオン([M-3H]-3 = 2341.45)が固定コリジョン電圧 63 V でフラグメンテーションされたときに、完全(100%)なシーケンスカバー率が得られました。CONFIRM Sequence アプリでは、ドットマップ画像表示が使用され、図 3 のスクリーンショットに示されているように、予測配列のカバー率の評価が簡単です。この図によると、さまざまなフラグメントイオンが検出され、オリゴヌクレオチドフラグメンテーション命名法に従って割り当てられました10。データ分析では、CONFIRM Sequence で、社内で作成したターゲット同位体クラスタリングアルゴリズムを使用して、予測されたオリゴヌクレオチドフラグメントを生データ中に検出されたオリゴヌクレオチドフラグメントとマッチさせます。ソフトウェアにより、関連するマッチ情報が(グラフ形式および表形式で)表示され、マッチした各フラグメントの統計分析が行われます。ドットマップ表示により、予測配列の範囲を簡単に評価したり、不純物修飾の位置を特定したりすることができます。さらに、CONFIRM Sequence アプリでは、図 4 に示されている生の MS/MS フラグメンテーションスペクトルを調べることもできます。このスペクトルのイオンシグナルの大部分はこの図中で緑色に着色されており、予測フラグメントイオンとマッチ済みであることが示されています。サンプルを MSE 取り込みを使用して分析すると、同じオリゴヌクレオチドに対して同じ最大シーケンスカバー率(100%)が得られました。このケースでは、1 秒間の交互 MS スキャンをプリカーサー検出のための低コリジョンエネルギー(10 V)で開始し、続いてコリジョンエネルギーのランプ(40 ~ 60 V)を行って、すべてのプリカーサーの CID フラグメンテーションを同時に誘発することで、データインディペンデント測定(プリカーサー単離なしで)を行いました。図 5 に示されている CONFIRM Sequence アプリケーションで得られたドットマップの結果では、コリジョンエネルギーを最適化する必要なしに、単一のサンプル注入で質の高いフラグメンテーションデータを生成できる MSE 測定の機能が実証されています。図 6 の解析結果に示されているように、BioAccord 装置(小型卓上 TOF MS システム)で同じ種類のデータ測定モード(MSE)を使用して、比較的高いシーケンスカバー率(> 70%)を得ることができます。図 3 および図 5 に示されているデータと比較して、BioAccord での取り込みではシーケンスカバー率が低くなっています。これは、いくつかの低 m/z フラグメントイオンが取り込み質量範囲 m/z = 400 ~ 5000 Da から外れているためです。
完全長プロダクト(FLP)に加え、7 種類の低レベル不純物を、表 I に示されている値に従って各オリゴヌクレオチドプリカーサー用に最適化した固定コリジョンエネルギーを使用して、Xevo G2-XS 装置で配列を決定しました。
このサンプル中に検出された存在量が最も低い不純物は、UV ピーク面積測定に基づいて 0.2% のレベルで存在する 11-mer オリゴヌクレオチドに対応します。この 11-mer は、図 2 に示されている LC-UV クロマトグラムで最初のクロマトグラフィーピークとして溶出し、ピーク 1 とラベル付けされています(図 1 および表 I を参照)。図 7 に示されているように、この不純物の ESI-MS スペクトルにより、MS/MS フラグメンテーションに使用できるオリゴヌクレオチドプリカーサーは 2 つのみ存在することが示されています。存在量が最も多いプリカーサーである m/z = 1196.89 の三価の [M-3H]-3 イオンのフラグメンテーションにより、固定コリジョン電圧 39 V を使用して、フラグメントが豊富な MS/MS スペクトルが生成されました。図 8 の CONFIRM Sequence の結果に示されているように、この多様なフラグメントイオンにより、このオリゴヌクレオチド不純物の配列は 100% カバーされました。図 3 と図 8 に示されているデータにより、存在量が多いオリゴ(FLP 21-mer など)だけでなく、0.2% 程度の低存在量のオリゴ不純物(11-mer 不純物)でも、Xevo G2-XS QTof 装置で配列決定すると完全なシーケンスカバー率の結果が得られることが実証されています。11-mer のオリゴ不純物は、その他の 4 種の不純物(ピーク 2 ~ 5)と共に、すべて CONFIRM Sequence アプリで確認され、親オリゴの 5’末端から 5 ~ 10 ヌクレオチドのストリングが欠落した 21-mer FLP の切断バージョンに対応しました。これらの失敗配列はクラス I 不純物5であり、3’末端から 5’末端までのオリゴヌクレオチド合成の副産物としてかなり一般的に存在します3,4。CONFIRM Sequence アプリでは、同じオリゴヌクレオチド不純物の複数のプリカーサーのフラグメンテーションから得られた結果を組み合わせて、シーケンスカバー率を高めることができます。このようにして、表 I の組み合わせによるシーケンスカバー率の列に示されているように、ピーク 4 および 5 とラベル付けされた不純物のシーケンスカバー率が増加しました。
別のクラスのオリゴ不純物には、図 2 に示されているクロマトグラムのピーク 7、10、11 として識別されているピークダブレットがあります。この場合、各ダブレットは同一の(同重体)プリカーサーがある一対のオリゴに対応します。このため、これらの不純物は、親分子に由来する配列変異と予想され、クラス III 不純物です5。 最後に溶出するダブレット(ピーク 11)は、FLP の脱アミノ化バージョンに対応する可能性が非常に高く、おそらく 21-mer 配列中の脱アミノ化を受けやすい 2'-OMe-5-Me シチジンの存在に関連しています19。 ACQUITY Premier OST カラムによって、図 2 に示されているように、主要なオリゴ成分の末尾にある小さな修飾(+1 Da)を分離できることは、注目に値します。
21-mer オリゴヌクレオチドに存在する最も存在量の多い不純物は、図 2 でピークダブレット 10 として特定されている、2’-OMe-5-Me シチジンが欠落した 2 種類の 20-mer の配列変異です。21-mer 配列には 4 つの修飾システインがありますが、これらはペアで存在するため、2’-OMe-5 Me シチジンが 1 つ欠落した可能性のある 20-mer 不純物は 2 種類のみです。CONFIRM Sequence アプリケーションでは、既知の配列およびプリカーサー質量の MS/MS フラグメントイオンをマッチさせる試行で、配列の修飾(欠落または付加)を検索できます。この場合、このソフトウェアは、21-mer の配列で欠落している 2’-OMe-5 Me シチジンを探し、この不純物を位置 5 で欠落している配列 GUA A*C AAG AGU AUU CCA UTT に割り当てるための強い証拠が見つかりました(シーケンスカバー率 80%)。このオリゴヌクレオチド配列は、16 番目の位置の同じ残基が欠落している別の配列(シーケンスカバー率がわずか 50%)と比較して、著しく高いシーケンスカバー率(80%)を示しました。両方の解析結果が図 9 に示されています。20-mer のペアの存在量が最も多い配列変異(図 1 でダブレットピーク 10 に含まれ、FLP の直前に溶出する)について記録された MS/MS スペクトルが、図 10 に示されています。このオリゴ(m/z = 2230.42)の三価のプリカーサーを、Xevo G2-XS QTof 装置のコリジョンセルで最適固定コリジョンエネルギー(59 V に設定)を使用して、フラグメンテーションしました。m/z = 1506.29 で検出された B5 フラグメントイオンにより、このオリゴの 5’末端付近に 2’-OMe-5-Me シチジンが 1 つ存在することが確認されます。その一方で、m/z = 1656.77 に存在する w10 フラグメントイオンにより、他の 2 つの 2’-OMe-5-Me シチジンがその分子の他方の末端に存在することが示されています。このようにして、図 10 のMS/MS スペクトルにより、最も存在量の多い不純物の配列が GUA AC AAG AGU AUU CCA UTT と確認されます。
結論
- 複雑な MS/MS および MSE(DIA)オリゴヌクレオチド質量スペクトルを迅速に解明するために、waters_connect に新しいアプリケーション CONFIRM Sequence が導入されました。
- CONFIRM Sequence アプリケーションにより、完全長プロダクト(FLP)および UV ピーク面積の測定値による存在量レベル 0.2% の低存在量オリゴヌクレオチド不純物について、完全なシーケンスカバー率(100%)が得られることが示されています。
- 適切なコリジョンエネルギーランプを用いた FLP についてのデータインディペンデント測定(MSE)により、個々のオリゴヌクレオチドプリカーサーに対してコリジョンエネルギーの最適化を行う必要なしに、完全なシーケンスカバー率が得られます。
- CONFIRM Sequence アプリにより、FLP 配列由来の配列の脱落、挿入、または配列変異を見つけることができます。
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ソリューション提供製品
720007677JA、2022 年 7 月