カラムの選択は、対象ポリマーの正しい分子量分布を確実に得るために重要です。
最初に検討する必要がある要素は溶解性です。
水溶性
有機溶媒可溶性
HR カラム、HT カラム、HMW カラムは、以下のいずれかが封入されています。
HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)を溶媒として用いて室温で分析するためにメタノールが封入された専用カラムもご利用いただけます。ここに挙げた 4 種類以外の溶媒をアプリケーションで使用する場合、大体の目安があります。クロロホルム、塩化メチレンといった溶媒を用いて「室温」分析を行う場合は、THF から置換します。TCB、ODCB といった溶媒を用いて高温分析を行う場合、約 85 ~ 90℃ で、トルエンから置換します。また、DMAC(ジメチルアセトアミド)や NMP(n-メチルピロリドン)などの非常に極性の高い溶媒を使用する場合は、DMF から置換します。
一般には、2 つの溶媒が混和するものであれば、0.1 ~ 0.2 mL/分の流速で直接置換できます(カラムの取扱説明書を参照)。もし溶媒が混和しない場合は、(両溶媒と混和する)中間の溶媒を使用しなければなりません。
通常、カラムの順序は関係ありません。順序は溶出ポリマーの分子量分布の計算に影響しません。ただし、ポアサイズ 100 Å または 50 Å のスチレン/ジビニルベンゼンゲルカラムは、比較的柔らかく耐性が低い傾向にあるため、必ず接続順の最後に配置するのがよいでしょう。
内径 7.8 mm の分析カラムでは、流速が 1.0 mL/分を超えないよう推奨されています。これらのカラムでの「最適な」分離能は、約 0.70 ~ 0.80 mL/分で得られます。内径 4.6 mm のカラムの最適流速は、0.3 ~ 0.35 mL/分です。詳しくは、各カラムの取扱説明書を参照してください。
分析用 GPC カラム、特に HR シリーズでは、流速を徐々に上げていくのは必須です。急な流速 (と結果的に背圧) の増加は、カラムを確実に損傷します。温度の上昇はそこまで重要ではありません。一般に、流速は 0.0 mL/分 から 1.0 mL/分 に 60 秒かけて上昇させ、温度は室温から 150℃ まで (例えば) 数時間かけて上昇させます。
ポアサイズは、対象サンプルのおおよその分子量範囲から判断して選択します。例えば、ポリマーの分子量範囲が低い場合(エポキシ樹脂など)、500 Å、100 Å、50 Å カラムの 103 カラムセットを使用します。分子量範囲が中間領域の PVC が対象サンプルの場合は、103、104、および 105 のカラムセットを使用します。ポリマーの分子量範囲に合ったポアサイズを選択することで、最大の分離能が得られます。分子量範囲が未知の場合、または非常に広い場合は、ポアサイズが混合されたミックスベッド(「リニア」または「拡張範囲」)カラムを使用するとよいでしょう。
GPC 分析において、分離能は単位溶出容量あたりに分離される分子量の範囲を意味します。できるだけ大きいほうが望ましく、最大化する最も簡単な方法は、カラムを追加することです(結果として残念ながら分析時間も長くなります)。その他、カラム効率を上げるためにより小さな粒子径(約 5 µm)を使用する方法もあります。これは、カラムの耐久性と寿命とのトレードオフになります。オリゴマーや添加剤、マルチモードの分布が存在する分離では、分離能は重要かもしれませんが、サンプルの分子量分布が広い高密度ポリエチレンの場合、分離能はそれほど重要ではありません。
ウォーターズは、粒子径 5 µm の高分離能の HR シリーズ、粒子径約 10 µm の(高温分析やさまざまな溶媒に変更する場合に最適な)HT シリーズ、粒子径 20 µm の HMW シリーズを製造しています。HMW シリーズは、せん断が問題になり、分離能はそれほど重要でない超高分子量サンプルに適しています。
従来の RI 検出器を使用する GPC では、溶出するスタンダードが十分に分離する限り、スタンダードの混合物の注入は許容されます。ただし、その上限は 3 種類とすることを推奨します。スタンダードのピーク面積を正確に知る必要のある粘度計のようなより高度な検出器の場合、1 回に 1 種類のスタンダードを注入すべきです。
多くの場合、単分散スタンダードでの相対キャリブレーションがよいでしょう。その場合、有機 GPC ではポリスチレンスタンダードを選択するのが一般的ですが、PMMA、ポリイソプレン、ポリブタジエン、あるいは ポリ THF の単分散スタンダードが使用されることもあります。水系 GPC では、単分散ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、プルラン(多糖)が使用できます。「真の」分子量が必要(で単分散スタンダードがキャリブラントとして不十分)な場合は、サンプルと同じ化学特性のブロードスタンダード(またはレファレンス)を使用するとよいでしょう。
ほとんどの場合、市販のブロードスタンダードは、妥当な Mw、Mn、Mz などが得られる手法によって十分特性解析されています。これらのスタンダードを購入する際には、報告された値が正確であり、優れた精度で得られているという一定の信頼があります。検量線はこれらの値に基づいているからです。また、これらの補助的な方法で分析してもらうために、ラボで分析する典型的なサンプルを代表サンプルとして送ることもできます。多くの研究所や大学では、ブロードスタンダードとして使用するサンプルを分析し、Mn、Mw、Mz などを報告するサービスを行っています。
対数分子量の代わりに対数流体力学的容積に基づいてキャリブレーションを行うというユニバーサルキャリブレーションの概念により、未知物質の「絶対」分子量がわかるようになりました。対数 [分子量] に対する対数 [固有粘度] のプロットは、「Mark-Houwink」プロットまたは「粘性法則」プロットと呼ばれます。この曲線の傾きが α で、切片から k(Mark-Houwink 定数)が決まります。粘度計を直列につないで使用していない場合、ユニバーサルキャリブレーションを行う単分散スタンダードだけでなく未知物質についても Mark-Houwink 定数が既知であれば、この値を使用することができます。『Polymer Handbook』に記載されている値が正しい対象ポリマーのもので、正しい分子量範囲にあり、使用する溶液中で分析温度において得られたものでなければなりません。
ほとんどの場合、移動相の調製に必要なステップはろ過だけです。溶媒は、0.45 µm のフルオロカーボンフィルター(水系 GPC の場合にはアセテートタイプ)でろ過してください。
移動相の添加剤が必要となる場合もあります。例えば、DMF、DMAC、NMP のような極性溶媒には 0.05 M の臭化リチウムを加えます。これらの極性溶媒は、分布の高分子側の端に現れる不自然なショルダーの原因として存在する双極子相互作用のあるポリウレタンやポリイミドのような極性ポリマーを分析するときに使用されます。この相互作用は、塩を添加することで解消することができます。ポリオレフィンの高温分析では、4 L あたり約 1 g の抗酸化剤(ほとんどのヒンダードフェノールが使えます)を移動相(例えば TCB)に添加する必要があります。これにより、注入前に高温のサンプルカローセルに置かれているサンプルの酸化が低減します。
GPC 分析を行う前に、分析対象サンプルがどの溶媒に溶解するかを確認する必要があります。ウォーターズは GPC を扱う企業として出発し、GPC で分析されたことのあるほぼすべてのポリマーについて、溶媒と温度の一覧表を作成しました。サンプルが溶解するまでの時間は(室温でも高温でも)通常、分子量および結晶化度の 2 つの条件によって異なります。ポリマーの分子量が大きく結晶化度が高いと、溶解に時間がかかります。通常は、少し撹拌して 2 ~ 3 時間待つとサンプルが溶解します。場合によっては(超高分子量のポリエチレンなど)、数時間かかる場合もあります。高速撹拌、超音波溶解、およびマイクロ波溶解は、実施してもポリマーが分解しない場合を除いて、行わないでください。
目安として、ピーク分子量が 100,000 のポリマーは、約 0.10 ~ 0.12%(質量/体積)の濃度で溶媒に溶解してください。これで、溶媒 1 mL あたり約 1 ~ 1.2 mg のサンプル(またはスタンダード)が含まれることになります。分子量が大きいほど濃度を下げる必要があります。高分子量ポリマー(重量平均が約 3,000,000 など)は、濃度が 0.02%(w/v)未満の状態で分析してください。逆に、分子量が 1,000 未満のエポキシ樹脂は、濃度が 0.20% の状態で分析できます。
これらの濃度で分析する場合、7.8 × 30 mm カラムあたりの最大注入容量は、100 µL を超えてはなりません。
ポリマーの特性解析を行う化学者は、特定のサンプルについてより多くの情報を得たいと望んでおり、「高度な検出法」に興味を持つ人が増えてきています。粘度計を示差屈折率検出器とオンラインで併用することで、RI 単独では得られない以下の 3 つの大きなメリットが得られます。
光散乱検出器を使用すると、以下のメリットが得られます:
検量線を作成しなくてもわかる「絶対」重量平均分子量(Mw) ポリマーの回転半径 粘度計と同様の分岐情報
GPC/SEC に関するよくある質問