UPLC テクノロジーによる生産性の向上

UPLC テクノロジーによる生産性の向上

総合的システム設計

総合的システム設計

この入門書に概説されているクロマトグラフィー原理を理解すると、分離性能を最大化するために考慮する必要があるのは、小さい粒子や高い圧力だけではないことが明らかになります。粒子径 2 µm 以下のカラムfがクロマトグラフィーにもたらすメリットを得るには、これらのカラムを、特に小さい粒子によって生じる高圧に対応するとともに、バンドの広がりを最小限に抑えるように設計された装置で使用する必要があります。これは、従来の HPLC システムでは達成できません。

ACQUITY UltraPerformance LC システムは、装置設計およびカラム設計のすべての側面を検討することによって、クロマトグラフィー分離の性能および分析データの質を向上させることができる総合的に設計されたソリューションです。

図 50:総合的に設計された UPLC テクノロジー。

UPLC 分離の鍵は、クロマトグラフィーにおいて粒子径 2 µm 以下のカラムの性能を理解して活用できる、装置とカラムの性能の組み合わせであることが今や明らかであるはずです。内部(カラム内)および外部(カラム外)でのバンドの広がりを最小限に抑え、これらの小粒子カラムの最適な線速度(毎秒)で動作させることができればこれが達成できます(図 51)。

図 51:最適な線速度で動作できる高速で低バンド拡散の LC 装置で動作させることができる能力は、粒子径 2 µm 以下のカラムの性能の向上を実現するために極めて重要です。この例では、同じクロマトグラフィー条件(注記のように流量を除く)を使用して 4 種類のカフェイン代謝物を分析し、完全に最適化されたマイクロボア HPLC 装置と標準 ACQUITY UPLC 装置とを比較しています。効率、分離能、ピーク形状、ピーク高さの向上により、UPLC テクノロジーおよびその総合的システム設計のメリットが明らかになっています。

分離能の最大化

分離能を最大にするため、小粒子を高温および高圧と組み合わせて、UPLC テクノロジーを使用する超高効率の分離を開発することができます。

図 52A は、90 ℃ で 40,000 弱の理論段数が得られる単一の長さ 150 mm の 1.7 µm UPLC カラムです。2 番目のカラムを直列に追加することで長さが 300 mm で、理論段数が 83,000 になります(図 52B)。ACQUITY UPLC システムの全圧力範囲を利用するために、3 番目のカラムを直列に追加して、1.7 µm の粒子を充塡した長さ 450 mm の UPLC カラムにしました。図 52C に見られるように、理論段数 121,000 の効率がわずか 8 分で達成されます。

図 52:高温と UPLC テクノロジーを組み合わせることによる理論段数の最大化

グラジエントの分離能も、同じロジックを用いて向上させることができます。この例では、2 本の長さ 150 mm の 1.7 µm UPLC カラム(合計長 300 mm)を直列に接続することで、代謝物同定のために得られる情報が大幅に改善しました(図 53)。1,000 を超えるピークキャパシティが、分析時間 1 時間以内に達成されました。この尿サンプルを完全に特性解析する性能により、候補薬剤代謝物の同定、毒性マーカーの検出と同定、治療薬剤モニタリングでの毒素の検出が可能になります。この場合、分解能(つまりスペクトルの質)が大幅に向上し、その結果、データ解析が簡素化し、検出限界が向上し、アッセイの信頼性が高くなります。

図 53:高温と UPLC テクノロジーを組み合わせることにより、糖尿病の尿サンプルにおけるピークキャパシティを最大化する。

HPLC 分離および UPLC 分離用の単一のシステム

ACQUITY UPLC システムは、市場により早く製品を届けると同時に情報の質を維持・改善するという、増大する組織の課題に適合するように設計されています。2004 年以来、無数の組織が UPLC テクノロジーをルーチンのプラットホームとして採用し、従来の HPLC と置き換えてきました。

新しいテクノロジーを導入する際、既存の需要および将来の需要に適合する機能を考慮することが重要です。UPLC テクノロジーにより、2 µm 以下のカラムを最適に機能させられる機能、並びに古い HPLC メソッドを実行できる頑健性と堅牢性を備えた単一のシステムを活用することによって、将来を見据えて投資することができます。つまり、単一のテクノロジーのプラットホームを分離のニーズとは無関係に利用できることで、ラボ間の分析法移管が容易になり、生産性向上が促進されます。

図 54 に、ACQUITY UPLC システムを標準 HPLC として実行する能力の例を示します。これは、従来の HPLC システム(図 54A)および ACQUITY UPLC システム(図 54B)で実行した、エキセドリン(市販の鎮痛薬)に用いた USP メソッドです。クロマトグラフィーメソッド、移動相、サンプル、カラムを、単純にある装置から別の装置に移しました。最適なシステム設計の結果、同じ ACQUITY UPLC システムで、より高い効率および感度が得られ、選択性や相対保持は変わりませんでした。

図 54:標準的な HPLC としての ACQUITY UPLC 装置の性能XBridge C18 4.6 × 100 mm、5 µm カラムを、2.0 mL/分、45 ℃、73:23:3 水:メタノール:酢酸移動相で実行。275 nm、5 Hz、デジタルフィルター = 0.1 で検出。

結論

このテクノロジー入門書は、UPLC テクノロジーの基本であるクロマトグラフィー原理の基礎的理解を読者に提供するように設計されています。当社の望みは、クロマトグラフィー分離において、装置とカラムの両方に起因するバンドの広がりを最小限に抑えることによって得られる分離能、感度、速度の著しい向上を、読者に理解していただくことです。このようなシステムは、バンドの広がりが最小であることに加えて、小粒子(2 µm 以下)のカラムにおいて最適な線速度(および圧力)で動作できる必要があります。ACQUITY UPLC システムは、分離を行う科学者の現在および将来のニーズに適合するように設計されています。

この入門書に記載されている理論的効率および分離能の向上は、何十年も前に予測されていました。2004 年に初めて、ACQUITY UPLC の導入により、この理論が市販のスケールで実用化されました。それ以来、世界中の何千人もの科学者が、UPLC テクノロジーおよびこれが組織にもたらす実用的なメリットを活用してきました。ACQUITY UPLC システムにより、組織は、クロマトグラフィー情報の質を改善し、情報の取得に必要な時間を減らして、会社の資産をより効果的に管理できるようになりました。これにより、分析的分離を行うラボに存在する多くの課題やボトルネックが克服されて、組織の生産性が高まります。明白で大幅な消耗品コストの削減に加えて、信頼できる分離が短時間で行えることにより、有機溶媒の必要量が著しく減少することによる環境に対するメリットもあります。 

興味深いことに、(安全性、堅牢性、サンプル適合性などを挙げて)高圧対応クロマトグラフィーシステムを最初は軽視していた最主要装置製造者が、さまざまな独自の高圧力対応システムを開発することによって、そのような LC システムのニーズを立証しています。これらのシステムにはそれなりの妥協(低圧力限界、大きなバンドの広がり、限定された検出選択肢など)を伴いますが、より高度なクロマトグラフィー性能に向けてのこの間違いのない傾向は、依然として進行し続けています。


追加の参考資料:

  1. U.D. Neue, “HPLC Columns: Theory, Technology, and Practice,” Wiley-VCH(1997)
  2. J.C. Aresenault and P.D. McDonald, “Beginners Guide to Liquid Chromatography,” Waters(2009)
  3. P.D. McDonald, “The Quest for Ultra Performance in Liquid Chromatography: Origins of UPLC Technology,” Waters(2009)
  4. M.P. Balogh, “The Mass Spectrometry Primer,” Waters(2009)

本入門書の内容

はじめに

バンド、ピーク、およびバンドの広がり

小粒子の明るい見通し

性能向上の結果

UPLC テクノロジーによる生産性の向上

 

関連情報

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