SPE メソッド開発

SPE メソッド開発

SPE はクロマトグラフィーである

固相抽出は、HPLC と同じ基本的原理に基づいています。適切な吸着剤および溶離液を選択する際に、目的の分析種およびその他のマトリックス成分のクロマトグラフィー挙動に関する知識が役立ちます。例えば、特定のクロマトグラフィー条件下で分析種を不純物から十分切り離すことが可能であるとわかっていれば、類似した SPE 吸着剤と溶媒の組み合わせを選択することができます。同様に、HPLC で共溶出する不純物を除去しようとしている場合、類似した SPE 条件ではうまくいかないことが推測できます

一般的な溶出プロトコル

目的のサンプル成分の分離と精製には一般的に 2 つのアプローチがあります:

  • 目的の成分がカートリッジに保持されずに通過する間にマトリックス干渉成分を吸着する。
  • マトリックス干渉成分がカートリッジに保持されずに通過する間に目的の成分を吸着する。

1 つ目の方法は通常、一般的に目的のサンプル成分が高濃度で含有される場合に選択されます。目的の成分が低濃度の場合や、極性が大きく異なる複数の成分を分離する場合には、一般に 2 つ目の方法を採用します。超低濃度で含まれる化合物の微量濃縮や希釈サンプルの濃縮も、2 つ目の方法で行えます。

固相抽出手順の各ステップ

次のセクションでは、完全な固相抽出手順に関連するステップについて説明します。多くのアプリケーションでは、以下にリストされており、後述する一般的な例で説明する 1 つ以上のステップを省略でき、手順を簡略化することができます。ここで説明する手順では、分離の様子が容易に見えるように、色素を含むサンプルを使用しています。ほとんどのサンプルに含まれる成分は無色で、回収したフラクション中の成分を検出するには、何らかの種類の検出器を使用する必要があります。あるいは、それらの場所を特定するための試験が必要です。独自の手順を開発したり、あるいは文献に報告されている手順を調整する場合には、以下の情報をガイドラインとして使用してください。

  1. サンプルの前処理
  2. カートリッジのコンディショニング
  3. サンプルのロード
  4. フラクションの溶出

固相抽出(SPE)の主な分離モード

固相抽出(SPE)の主な分離モード

順相クロマトグラフィー

このモードは、疎水性から中等度の極性までの化学的性質を持つ中性有機化合物の分離に従来から使用されています。

SPE カートリッジを使って順相クロマトグラフィーを実施するには、極性の充塡剤で非極性溶媒を使ってステップグラジエントを行います。

  1. カートリッジを 6 ~ 10 倍のホールドアップボリュームの非極性溶媒(通常、サンプルを溶解する溶媒と同じ)でコンディショニングします。
  2. サンプル溶液をカートリッジベッドにロードします。
  3. 非極性溶媒で望ましくない成分を溶出させます。
  4. 最初の目的成分をより極性の高い溶媒で溶出させます。
  5. 徐々により高極性の(強い)溶媒にして、残りの成分を溶出します。
  6. すべての成分を回収したら、使用済みカートリッジを安全で適切な方法で廃棄します。

この手順を下の図の例で説明します。サンプルには、中性で比較的非極性の有機色素 3 種(黄、赤、青)の混合物が含まれています。この混合物は、最初にカートリッジベッドにロードする際に黒色に見えます。

SPE カートリッジ(シリカ、フロリジル、アルミナ、ジオール、CN、NH2)を用いた順相クロマトグラフィーの一般的な溶出プロトコルの略図

逆相クロマトグラフィー

環境水から果物や野菜、飲料から生体液まで、水性サンプルの多様性によりそのアプリケーションの幅が広がり、逆相クロマトグラフィーが SPE の主要な使用モードとなりました。

SPE カートリッジを使って逆相クロマトグラフィーを実施するには、非極性の充塡剤で強極性溶媒から弱極性溶媒へのグラジエント(溶媒溶出強度は弱から強)を行います。

  1. 6 ~ 10 倍のホールドアップボリュームのメタノールまたはアセトニトリルで、シリカ結合相またはポリマー充塡剤を溶媒和させます。6 ~ 10 倍のホールドアップボリュームの水またはバッファーで、カートリッジをフラッシュ洗浄します。カートリッジが乾燥しないようにしてください(HLB を使用している場合を除く)。
  2. 強極性(弱)溶媒(通常は水)に溶解したサンプルをロードします。
  3. 望ましくない成分を強極性溶媒で溶出します。
  4. 弱く保持された目的成分を低極性溶媒で溶出します。
  5. より強固に結合した成分を、徐々に非極性(より強い)溶媒で溶出します。
  6. すべての目的成分を回収したら、使用済みカートリッジを安全で適切な方法で廃棄します。

この手順を下図で説明します。サンプルは 2 種類の極性食用色素(赤、青)、砂糖、および人工香料が含まれている水系グレープ飲料です(本物のグレープジュースではありません)。この飲料は、サンプル前処理時には色素濃度が希釈されているため、グラスの中で薄い紫色に見えます。一部を前処理済み SPE カートリッジにロードすると、強く保持される色素はインレット付近で濃い紫色のバンドとして確認されます。

SPE カートリッジ(C18、tC18、C8、CN、ジオール、HLB、Porapak RDX、NH2)を用いた逆相クロマトグラフィーの一般的な溶出プロトコルの略図

イオン交換クロマトグラフィー

イオン性化合物やイオン化する化合物は多くの場合、何らかの形のイオン交換クロマトグラフィーを用いることで最も効果的に分離することができます。この分離モードは、より広く使用されている順相モードや逆相モードと直交的であるため、サンプル前処理プロトコルに強力で別次元の選択性がもたらされます。

2 つの主要な種類の相(陰イオン交換と陽イオン交換)
、および反対電荷の分子を選択的に引き付けて保持する様子の略図

SPE カートリッジを使ってイオン交換クロマトグラフィーを実施するには、イオン交換充塡剤での pH またはイオン強度のグラジエントを行います。

  1. カートリッジを 6 ~ 10 倍のホールドアップボリュームの脱イオン水または弱いバッファーでコンディショニングします。
  2. 脱イオン水またはバッファー溶液に溶解したサンプルをロードします。
  3. 弱いバッファーで、結合の弱い望ましくない成分を溶出します。
  4. 最初の目的成分をより強いバッファーで溶出します(pH または塩濃度を変化させます)。
  5. バッファーを徐々に強くして他の成分を溶出させます。
  6. すべての成分を回収したら、使用済みカートリッジを適切な方法で廃棄します。

この手順を下の図の例で説明します。サンプルは、pKa 値の異なる 2 種類のイオン性色素を含む水系混合物です。これらのイオン性色素は、カートリッジにロードされると強く保持され、青色と黄色の成分が組み合わさって、インレット付近に緑色のバンドとして現れます。

SPE カートリッジ(NH2、Accell™ Plus QMA、Accell Plus CM、SCX、SAX、WCX、WAX)を用いた逆相クロマトグラフィーの一般的な溶出プロトコルの略図

陽イオン交換体および陰イオン交換体は、表面のイオン性基の種類に応じて、弱交換体または強交換体にさらに分類されます。強陽イオン交換体は、pH 範囲全体にわたって常にイオン化(負電荷)しているスルホン酸などの酸性表面部分を有します。弱陽イオン交換体は、高 pH では負に荷電し、低 pH では中性であるカルボン酸などの酸性表面部分を有します。同様に、強陰イオン交換体は通常、常に正に荷電している第 4 級アンモニウム基を有する一方、弱陰イオン交換体は、低 pH では正に荷電し、高 pH では中性の第 1 級、第 2 級、第 3 級アミン基を有します。

次の表をガイドラインとして使用して、特定の分析種に適した SPE イオン交換カートリッジの種類を選択してください。

ミックスモードのイオン交換クロマトグラフィーでは、単一の SPE カートリッジでの単一のプロトコルに、逆相モードおよびイオン交換モードを組み合わせて使用します。これを使用することで、単一の複雑なマトリックスから中性、酸性、および塩基性の化合物を分離することができます。理想的なミックスモード SPE 吸着基材は、水湿潤性を維持しつつ、疎水性化合物に対して強い逆相保持を示します。表面には、前述の一般的な 4 種類のイオン交換機能のいずれかを有します。適切な溶出強度の有機溶媒混合液を用いて、途中で洗浄することで、中性化合物(中性状態でイオン化する分析種を含む)を分離することができます。分析種(強イオン交換体に結合している場合)または吸着剤(弱イオン交換体に結合している分析種の場合)の電荷を操作することで、イオン結合した分析種を選択的に溶出することができます。

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