SYNAPT MS シリーズ HDMS
高効率のイオンモビリティー分離のメリットを享受
ご使用の SYNAPT MS シリーズ装置を完全な HDMS 機能にアップグレードすることで、高効率イオンモビリティー分離 (IMS) を活用し、研究を新たな次元にまで拡張できます。HDMS のアップグレードにより、サイズ、形状、電荷、質量に基づいてサンプルを区別することができます。これにより、高次構造解析、さまざまな化合物クラスの分離、バックグラウンドと干渉物の除去、包括的な構造特性解析の実施など、さまざまな新規または向上した分析上のメリットが得られます。
SYNAPT MS シリーズ HDMS
概要
イオンモビリティー/HDMS モードにより、以下の機能を組み込むことで、現在の SYNAPT MS シリーズ装置の機能がさらに拡張します。
- Triwave テクノロジー：MS 検出の限界でイオンモビリティー分離を行う機能を提供し、デュアルコリジョンセル配置と組み合わせることで、さまざまな分析上のメリットを得ることもできます。
- IMS - 同重体成分の分離、分子の高次構造値（衝突断面積）の導出、バックグラウンドの除去、複雑さの低減（干渉物の分離と除去による情報量の増加）を行い、さまざまな化合物クラスを分離します。
- CID/IMS および IMS/CID - 複雑な分析種（トップダウンタンパク質配列決定など）の MS/MS スペクトルの複雑さの軽減や、分離されたまたは部分的に分離された (IMS) 分子種の独立した MS/MS スペクトルの生成により、より決定的な構造解析が行えます。
- タイムアラインドパラレル (TAP) フラグメンテーション (CID/IMS/CID) - 単一の実験で特性解析試験のための包括的な構造 (MS/MS/MS) 情報を提供します。
- 高デューティサイクル (HDC) モード：広い m/z 範囲で感度が大幅に向上
- DriftScope ソフトウェアモビリティー環境：3D および 4D のデータセットを強力かつ直感的に調査し、すべての経験レベルのユーザーの生産性が向上します。このソフトウェアには、多次元データの双方向視覚化、操作、解釈、およびエクスポートを強化するさまざまな機能が組み込まれています。
MALDI ソースユーザーは、特に Waters High Definition Imaging (HDI) MALDI ソリューションを使用したイメージングアプリケーションで HDMS をアップグレードすることで、大きなメリットを得ることができます。HDI MALDI は、質量が類似したバックグラウンドイオンからの干渉のない画像の生成を支援し、目的の薬物や代謝物の正確な局在性決定が可能になります。
Triwave テクノロジー
Triwave テクノロジーは、SYNAPT MS シリーズ HDMS のフィールドアップグレードの背後にある実用化システムです。このテクノロジーでは、3 つの T-Wave* イオンガイドを使用することで、イオンをトラップしてイオンモビリティーによって分離し、直交加速飛行時間型分析装置に移送して高分解能質量分析を行います。トラップして移送する領域は、フラグメンテーション分析にも使用できます。
Triwave テクノロジーの革新的な構成により、IMS が装置の基本感度を損なわないようにすることで、従来のイオンモビリティー分光分析 (IMS) にあった大きな性能上の欠点を克服しています。
MALDI とイオンモビリティーフィールドアップグレードの組み合わせにより、多価に荷電したバックグラウンドイオンとマトリックスイオンから分析種のイオンを分離し、分子種を構造のクラスごとに分離することができます。イオンモビリティー分離により、非常に複雑な生物学的サンプルから得たイメージングデータから同重体干渉物が分離することがわかっていることから、このことは MALDI イメージングアプリケーションにおいて特に重要であり、得られる画像の信頼性が高まります。
この例では、MassLynx ソフトウェアまたは DriftScope ソフトウェアを使用して一価のイオンを多価の成分から分離し、データの解釈を簡素化する方法を示します。さらなる調査（詳細画像を参照）により、ドリフト時間によって同重体ペプチドが分離していることが明らかです。それに続くデータベース検索により、同重体ペプチドの存在が確認され、実験におけるタンパク質の対象範囲が拡大しました。
DriftScope ソフトウェア
SYNAPT MS シリーズ HDMS のフィールドアップグレードの力を最大限に引き出す
DriftScope モビリティー環境ソフトウェアには、HDMS（イオンモビリティー）データセットに含まれる情報の包括的な読み出しが可能になる新しいテクノロジーが組み込まれており、一連のデータ視覚化およびデータエクスポート機能の強化により、（すべての経験レベルのユーザーにとって）データ解釈が容易になります。
強力で自動化されたピーク検出（新規 APEX 3D および 4D テクノロジー）
- HDMS データ（例：IMS/MS、LC/IMS/MS、TAP フラグメンテーション）内のすべてのコンポーネントが包括的に明らかになり、各分析の見かけ上の特異性が向上
- データの解釈から主観性を排除し、分析間およびユーザー間で再現性の高い結果が得られる
視覚化機能の強化（例：3D ピークプロファイルの表示、x/y 軸の切り替え、ピーク/生データ重ね描き、軸ロック機能、生データのオン/オフを切り替える機能）
- より簡単で直感的なデータ解釈
- ピークとそれを裏付ける生データを簡単に比較可能
データエクスポート機能（生データまたはピークリストのエクスポートおよびピークのコピー/貼り付け機能）
- ダウンストリーム解析ルーチンへのデータ転送が円滑に
- データ解析ワークフローを合理化
分析能力が向上
- 部分的に (IM) 分離された化合物を確実に検出（例：異性体や配座異性体）
- 複雑な混合物中の新しい分子トレンドを視覚化（例：原油、PEG、MALDI イメージング）
- IMS/CID および TAP フラグメンテーションによるより効率的な特性解析（検出されたピークを Massfragment ソフトウェアに直接エクスポート）
高次構造 (IMS) 試験
イオンのモビリティー（またはドリフト時間）を測定することで、その構造に関する情報が得られ、それを使用して、低分子と高分子のサイズと形状を調べることができます。
分子の高次構造は、多くの生物系の完全性にとって重要です。つまり、生物学的に重要な成分（タンパク質、ペプチド、炭水化物、ヌクレオチドなど）の形状に関する知識を深めることで、多くの研究分野にメリットがもたらされます。
サンプルの複雑性の低減
SYNAPT MS シリーズの装置 HDMS のアップグレードにより、さまざまなアプリケーションの情報コンテンツを増強する独自の方法が提供されます。DriftScope ソフトウェアにより、分析から一般的な干渉物が除かれ、低レベルの成分にアクセスできるようになります。
- 干渉物、PEG 混入物、ケミカルノイズなどの分離および除去
- 検出限界の向上。ペプチド、PEG、糖鎖などの電荷状態に基づく分離
- 情報コンテンツの増強。トップダウンプロテオミクスなどの構造特性解析
フラグメンテーションの強化
SYNAPT MSシリーズの装置 HDMS のアップグレードにより、Triwave のトラップ・移送領域を使用したフラグメンテーションの誘発による、構造特性解析試験用の幅広いフラグメンテーションプロトコールが得られます。
タイムアラインドパラレル (TAP) フラグメンテーション Triwave テクノロジーにより、高効率イオンモビリティー分光分析とデュアルステージフラグメンテーションプロセスを組み合わせることで、詳細な構造特性解析が実現します。
- 1 回の実験で、プリカーサーイオンから第 1 世代および第 2 世代のプロダクトイオンが得られる
- 各サンプルからの情報コンテンツが最大化
- タンパク質の翻訳後修飾 (PTM)、脂質、低分子分析など、幅広いアプリケーションで使用可能
装置および取り付け
SYNAPT MS シリーズ HDMS システムのアップグレードは、以下の装置で利用できます。
- SYNAPT MS、MALDI SYNAPT MS
- SYNAPT G2 MS、MALDI SYNAPT G2 MS
- SYNAPT G2-S MS、MALDI SYNAPT G2-S MS
- SYNAPT G2-SIMS、MALDI SYNAPT G2-SI MS
アップグレードキットに含まれるもの：
- 完全な SYNAPT HDMS 機能の提供（ファームウェアおよび制御ソフトウェアの更新）
- DriftScope モビリティー環境ソフトウェア
- 外部気体セルレギュレーター（SYNAPT MS のみ）
- 交換装置バッジと照明 pcb（該当する場合）
このアップグレードでは、現在の Triwave 気体セルテクノロジーを完全な HDMS 機能に再構成するために、上記のハードウェアの設置および新しいシステムソフトウェアおよびファームウェアのインストールが必要です。DriftScope モビリティー環境ソフトウェアもインストールされます。インストール作業も初期の操作トレーニングも、ウォーターズの認定フィールドサービスエンジニアが実施します。
HDMS のアップグレードが完了した後、該当する場合、MALDI ソースを含む MS 装置全体には、コンポーネントの不具合についてさらに 90 日間の保証が適用されます。
