• アプリケーションノート

XBridge™ Premier GTx BEH™ SEC 450 Å 2.5 µm カラムのサイズベースの核酸分離への適合性

XBridge™ Premier GTx BEH™ SEC 450 Å 2.5 µm カラムのサイズベースの核酸分離への適合性

  • Lavelay Kizekai
  • Balasubrahmanyam Addepalli
  • Nabeel Jawdat
  • Vlad Chumakov
  • Martin Gilar
  • Matthew A. Lauber
  • Waters Corporation
  • Nitto BioPharma

研究目的のみに使用してください。診断用には使用できません。

要約

サイズ排除クロマトグラフィーは、分子の完全性分析にルーチンベースで使用されています。今回、ポアサイズ 450 Å、粒子径 2.5 µm の XBridge Premier GTx BEH SEC カラムを使用した、一本鎖および二本鎖の核酸の分析について報告します。複数の種類の移動相を用いて、優れた分離およびシャープで対称的な核酸ピークを示す分離を得ることができます。このカラムテクノロジーを使用することにより、ssRNA および dsDNA を効率的に分析でき、それぞれ最大 6000 および 3000 ヌクレオチド/塩基対の長さの核酸を分画する能力が得られます。これらの結果は、サイズが小から中程度の治療用 mRNA を含む核酸原薬の分析に XBridge Premier GTx BEH SEC 450Å 2.5 µm カラムが適用できることを確認したシステム適合性試験の例になります。

はじめに

サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、タンパク質の分析に広く使用されています。最近では、SEC は、抗体オリゴ複合体およびシングルガイド RNA(sgRNA)の分析に使用されています1,2,3。 これらの試験で使用される充塡剤のポアサイズ(110 ~ 300 Å)は 100 ~ 200 ヌクレオチド(nt)の核酸を分析するのに十分ですが、長さが 1000 nt を超えるメッセンジャー RNA(mRNA)などのより長い核酸を容易に分離するには、ポアサイズがより大きい充塡剤が必要です。今回、より長い核酸の分離における XBridge Premier GTx BEH SEC 450Å 2.5 µm カラムの有用性について報告します。これらのカラムに充塡されている BEH-ジオール粒子は、アデノ随伴 AAV キャプシドの分析だけでなく、さまざまな移動相条件での RNA および dsDNA の分析にも適しています4。 カラムハードウェアの構築に使用されているワイドポア BEH 粒子と High Performance Surface テクノロジーにより、長い核酸の SEC 分離の迅速な開始および信頼性の高い分離を確保できます。このポアサイズは、サイズが小から中程度の核酸分子種の分離に最適です。このカラムテクノロジーを使用することにより、ssRNA および dsDNA を効率的に分析でき、それぞれ最大 6000 および 3000 ヌクレオチド/塩基対の長さの核酸を分画する能力が得られます。

実験方法

2 × PBS の調製: 4 パック分のリン酸バッファー生理食塩水混合液(Sigma、製品番号:P-3583)を 2 L の 18.2 MΩ 水に溶解し、20 mM リン酸、276 mM NaCl、5.4 mM KCl を含む溶液(pH 7.4)を調製しました。この溶液を 1000 mL の Nalgene™ Rapid-Flow™ 滅菌済み使い捨て PES フィルター(ポアサイズ 0.1 µm、製品番号:567-0010)でろ過しました。

50 bp DNA ラダー(NEB 製品番号:N3236L)、100 bp plus DNA ラダー(Thermo Scientific GeneRuler 製品番号:SM1143):凍結サンプルを室温で 15 分間かけて解凍し、上下に 10 回ピペッティングして混合してから、300 µL の PE キャップ付きポリプロピレン製スクリューネックバイアル(製品番号:186004169)を使用して 50 µL アリコートのロットを作製します。-20 ℃ の冷凍庫での保管中の蒸発を防ぐために、キャップをきつく締めます。

1 本鎖 RNA(ssRNA)ラダー:広範囲の RNA ラダー(Thermo RiboRuler 製品番号:SM1821)、NEB ssRNA ラダー(N0362S)を使用しました。これらのバイアルを -80 ℃ で保管し、常温で解凍した後、20 µL の RNA ラダーを 80 µL の 1.25 mM EDTA で希釈し、上下にピペッティングして混合してから注入バイアルに移しました。

100 mM 酢酸アンモニウム(pH 6.2):200 mM 酢酸アンモニウムのストック溶液を調製し、1 M 水酸化ナトリウムで pH を6.2 に調整しました(当初の pH は 6.099)。200 mM 酢酸アンモニウム(pH 6.2)溶液を 18.2 MΩ 水で 1:1 希釈して、100 mM 酢酸アンモニウム(pH 6.2)を調製しました。

1× PBS、75 mM 過塩素酸ナトリウム、20% アセトニトリル:この移動相は、Milli-Q 水 900 mL に 10× PBS 200 mL、過塩素酸ナトリウム一水和物 21 g、アセトニトリル 400 mL を混合して調製しました。次に、混合液の最終容量を 18.2 MΩ 水で 2 L にしました。これを室温で保管しました。

LC 条件

LC システム:

ACQUITY™ UPLC™ H-Class Bio100 µL ミキサー付きクオータナリーソルベントマネージャー、15 µL MP35N ニードル(製品番号:700005421)付き FTN-SM、18.5 インチアクティブプレヒーター(製品番号:205001755)付き CH-30A ヒーターを搭載し、TUV までのポストカラムチューブは内径 0.005 インチ x 長さ 22.5 インチの MP35N 溶接チューブ(製品番号:700008914)を使用[高 pH キットを取り付けた ACQUITY Premier QSM FTN 装置と同等]

検出:

ACQUITY TUV 検出器(チタン製フローセル、5 mm、1,500 nL)

波長:

260 nm

検出:

ACQUITY RI 検出器

データ取り込み:

Empower™ Pro 3 Feature Release 3

バイアル:

マキシマムリカバリーバイアルおよびキャップ(ウォーターズ製品番号:186000327C)、Waters™ 300 µL ポリプロピレンスクリューネックバイアル(ウォーターズ製品番号:186004112)

カラム:

XBridge Premier GTx BEH SEC 450 Å 2.5 µm カラム、7.8 × 300 mm(ウォーターズ製品番号:186010586)、XBridge Protein BEH SEC カラム(スチール製ハードウェア)、450 Å、3.5 µm、7.8 mm × 300 mm(ウォーターズ製品番号:176003599)

カラム温度:

30 ℃ および 50 ℃

サンプル温度:

6 ℃

サンプルマネージャー洗浄溶媒:

18.2 MΩ 水

シール洗浄溶媒:

10% HPLC グレードメタノール/90% 18.2 MΩ 水(v/v)

注入量:

DNA ラダーの場合 20 µL、RNA ラダーの場合 10 µL

流速:

0.288 mL/分または 0.25 mL/分

移動相 A:

2× PBS:リン酸緩衝生理食塩水(20 mM リン酸、276 mM NaCl、5.4 mM KCl pH 7.4)(または

1× PBS、75 mM 過塩素酸ナトリウム、20% アセトニトリル

移動相 B:

100 mM 酢酸アンモニウム(pH 6.2)

移動相 C:

N/A

移動相 D:

1× PBS Sigma 製品番号:P3813(10 mM リン酸、138 mM NaCl、2.7 mM KCl(pH 7.4))

サンプル:

NEB 50 bp DNA ラダー(N3236L)、Thermo Scientific GeneRuler 100 bp Plus DNA ラダー(SM1143)、Thermo Scientific RiboRuler 広範囲 RNA ラダー(SM1821)

グラジエント:

アイソクラティック

シリンジ吸引速度:

30 µL/分

ニードル配置:

1.0 mm

データチャンネル:

システム圧力および TUV

TUV サンプリングレート:

5 Hz(推奨)

フィルタータイムコンスタント:

なし

データモード:

吸光度

注入開始でオートゼロ:

はい

波長の自動ゼロ設定:

ベースラインの維持

結果および考察

長さが短い核酸の定性的および定量的特性解析には、イオン対逆相液体クロマトグラフィー(IP-RP-LC)が好んで用いられます5。 ただし、この分析法では、長い核酸(1000 nt 超)において分離の限界が見られることがあります。さらに、イオン対ベースの移動相は、二本鎖 DNA に部分的な変性効果をもたらして、ピークの割り当ておよびデータの解釈があいまいになることがあります。さらに、核酸とともに形成される凝集体は、IP-RP-LC 分析法では区別できません。一方、SEC は多くの場合ネイティブ条件下で行われるため、より長い RNA が形成する凝集体を検出することができます。また、DNA の相補鎖を解離させないため、サイズベースの分離が可能です。

図 1 に、複数の移動相組成で XBridge Premier GTx BEH SEC 450Å 2.5 µm カラムを使用した場合に得られる dsDNA ラダーの分離を示します。このクロマトグラフィーピークプロファイルは、アガロースゲル電気泳動システムで見られる予想されたサイズベースの分離とよく一致しており、早く溶出する DNA 分子種は最も遅く泳動するゲルバンドと一致しています。同様に、SEC で遅く溶出するピークは、最も速く泳動するゲルバンドによく対応しています。中間サイズのバンドは、これらの対の間で適切な溶出順序を示しました。予測どおり、100 bp ラダー内のサイズの長い核酸(1500 bp 超)は、50 bp ラダー内の最も長い核酸(1350 bp の分子種)よりも早く溶出しました。分子種ごとのピーク面積は、電気泳動で見られたバンドのプロファイルとよく一致していました。PBS 移動相と酢酸アンモニウム移動相で同様の分離が得られ、核酸ラダーのすべての成分についてシャープで対称的なピークが見られました。

図 1.  XBridge Premier GTx BEH SEC 450Å 2.5 µm カラムを用いた DNA ラダーの SEC ベースの分離。7.8 × 300 mm カラムで移動相として 2× PBS (上)または 0.1 M 酢酸アンモニウム(pH 6.2)(下)を使用して、50 ℃、流速 0.288 mL/分で、50 bp DNA ラダー(A)または 100 bp plus DNA ラダー(20 µL)(B)の成分を分離しました。SEC のピークとアガロースゲル(右側)電気泳動のバンドの間のピークプロファイルの対応に注目してください。260 nm での UV 吸光度のレベルも、50 bp ラダー(1350、500、200 bp)および 100 bp ラダー(1000、500 bp)の個々の成分の量とよく一致していました。ゲル電気泳動の結果は、各標準試料について証明書に記載されている情報のとおりです。

一本鎖 RNA の分離におけるこれらの SEC カラムの有用性についても調査しました。ここでは、スチール製ハードウェアの 3.5 µm 450Å SEC カラムと、XBridge Premier GTx BEH SEC 450Å 2.5 µm カラムをそれぞれ使用した場合の比較を行いました。図 2A に、200 nt ~ 6000 nt にまたがる一本鎖 RNA ラダーのクロマトグラフィーピークプロファイルを示します。8 本の RNA ピーク(6000、4000、3000、2000、1500、1000、500、200 nt)が見られました。ただし、4000 nt と 3000 nt のラダー分子種の分離に問題があることがわかりました。興味深いことに、6000 nt の RNA ピークの直前の 20.5 分(または 19.8 分)に小さなピークが 1 本見られ、30 分(または 28.6 分)にもう 1 本小さなピークが見られました。これらのピークの正確な由来は不明ですが、20.5 分のピークは、サンプル中の予想される最長の核酸よりも早く溶出していることから、高分子量の凝集体である可能性があります。これは、SEC 分析でのみ見られる情報です。この試験では、特別に調製した移動相を使用しました。この移動相は、PBS バッファーに共溶媒の 20% アセトニトリルおよび添加剤の過塩素酸を添加して調製したものです。

3000 nt と 4000 nt の分子種の分離が困難であることを考慮して、XBridge Premier GTx BEH SEC 450Å 2.5 µm カラムを使用しました。このカラムで得られた分離を図 2B に示します。粒子が小さく、効率の高いカラムの使用による効果は、3000/4000 nt のクリティカルペアの分離度が向上していることですぐにわかります。得られたピークバレー比は、3.5 µm カラムでは 1.3 であったのに対し、GTx BEH SEC 2.5 µm カラムでは 1.6 でした。さらに、新しく得られた分離では、500 nt の分子種内に見られた不均一な形状が部分的に解消されていることが示されています。3.5 µm の充塡剤から 2.5 µm の充塡剤に切り替える場合に想定される分離度の向上は約 20% です。MaxPeak High Performance Surface の採用により、核酸分析種とカラムハードウェアの間の二次的相互作用が低減したため、分離が改善された可能性もあります。

図 2.  XBridge Premier GTx BEH SEC 450 Å 2.5 µm カラムを用いた、広範囲の一本鎖 RNA ラダーの SEC ベースの分離。A. 7.8 × 300 mm スチール製ハードウェア、3.5 µm 450Å 粒子を充塡したカラムで、過塩素酸および ACN を含む 1× PBS バッファーを用いた ssRNA ラダーの分離。B. XBridge Premier GTx BEH SEC 450 Å 2.5 µm 7.8 × 300 mm カラムで得られた分離。クロマトグラフィーピークには、RNA 分子の予想サイズ分布に基づいて注釈を付けています。ゲル電気泳動の結果は、標準試料について証明書に記載されている情報のとおりです。

結論

XBridge Premier GTx BEH SEC 450Å 2.5 µm カラムで 1 つまたは複数の種類の移動相組成を使用することにより、サイズが小から中程度の DNA および RNA のいずれも分離できます。3000 bp 未満の二本鎖 DNA および 6000 nt 未満の RNA において、最適な分離度が得られます。SEC は、原薬の完全性および純度の測定に用いることができる魅力的な分析法であり、凝集体の分析に使用できる数少ない手法の 1 つです。この手法で得られる分離度は最高ではないものの、一般に導入が容易です。GTx BEH SEC 450 Å 2.5 µm カラムでは、2.5 µm の充塡剤の効率の良さ、吸着が少ないハードウェア、そして従来の 7.8 × 300 mm 構成までのカラム寸法の最適化を活用することにより、頑健な分離と、新しい RNA アッセイおよび DNA アッセイに必要なシステム適合性が得られます。

参考文献

  1. Jones, J., et al., Native Size-Exclusion Chromatography-Mass Spectrometry: Suitability for Antibody-Drug Conjugate Drug-to-Antibody Ratio Quantitation Across a Range of Chemotypes and Drug-Loading Levels.MAbs, 2020.12(1): p. 1682895.
  2. Henry Shion, C.E.D., Ed Ha, Ying Qing Yu, Weibin Chen, Analysis of Antibody siRNA Conjugate Using BioAccord System.Waters Application Note. 720007212, 2021.
  3. Crittenden, C.M., M.B. Lanzillotti, and B. Chen, Top-Down Mass Spectrometry of Synthetic Single Guide Ribonucleic Acids Enabled by Facile Sample Clean-Up.Analytical Chemistry, 2023.95(6): p. 3180–3186.
  4. Lavelay Kizekai, B.A., Matthew A. Lauber, Heightened Characterization of AAVs by SEC-MALS with XBridge™ Premier GTx BEH™ SEC 450 Å 2.5 µm Columns.Waters Application Note. 720007969, June 2023.
  5. Gilar, M., et al., Ion-Pair Reversed-Phase High-Performance Liquid Chromatography Analysis of Oligonucleotides: Retention Prediction.Journal of Chromatography A, 2002.958(1–2): p. 167–182.

720008061JA、2023 年 10 月

トップに戻る トップに戻る