Waters Immerse イノベーション・研究センター(www.waters.com/immerse)が提供するバイオ医薬品サービスは、新しいモダリティー分析のためのメソッド開発を目指しています。
短鎖干渉 RNA(siRNA)は、大きな期待が寄せられている治療薬の一種です。ただし、この分子の化学的性質上、ターゲット細胞に薬物を送達するには担体が必要です。その一般的なアプローチとして、モノクローナル抗体(mAb)分子に siRNA を化学的に結合させる方法があります。誘導体化した抗体 siRNA 複合体(ARC)は、ターゲット細胞に効果的に結合して内在化するためです。
本研究の対象である ARC の場合、センス鎖とアンチセンス鎖を含む siRNA の本体は、キャリア mAb の Fc グリコシル化部位の改変されたシステイン残基のチオール基と結合しています。このサービスプロジェクトでは、BioAccord LC-MS システムを用いて1-3、1)イオンペアRPLC-MS法を用いた siRNA のセンス鎖とアンチセンス鎖の質量確認、2)ネイティブ SEC-MS を用いた最終的な ARC 分子の DAR 計算、という 2 つの ARC 特性解析法を開発しました。いずれのメソッドでも、製品の同定および潜在的不純物に関する情報が得られます。
– 広範なアプリケーションソリューション(インタクトプロテイン、ペプチドマッピング、MAM、糖鎖、およびオリゴヌクレオチドの分析)を提供
– 使いやすく頑健なシステム間性能を実現
– 設置面積が小さい
– コンプライアンス対応のインフォマティクスシステム waters_connect で操作可能
– 合成 siRNA のセンス鎖およびアンチセンス鎖の質量確認用の IPRP LC-MS メソッド
– DAR(薬物抗体比)測定用のネイティブ SEC-MS メソッド
短鎖干渉 RNA(siRNA)は、大きな期待が寄せられている治療薬の一種です。ただし、この分子の化学的性質上、ターゲット細胞に薬物を送達するには担体が必要です。その一般的なアプローチとして、モノクローナル抗体(mAb)分子に siRNA を化学的に結合させる方法があります。誘導体化した抗体 siRNA 複合体(ARC)は、ターゲット細胞に効果的に結合して内在化するためです。ARC 生成には多くの合成経路があり、通常は、siRNA 3’ 末端に付加するリンカーを介して、mAb 分子の官能基と共役反応で結合します。
本研究の対象である ARC の共役反応のために、キャリア mAb の Fc グリコシル化部位のシステイン残基を改変しています。siRNA 本体にはセンス鎖とアンチセンス鎖が含まれ、センス鎖では、5’ 末端に蛍光色素が結合し、3’ 末端にリンカーを介してキャリア mAb の Fc ドメインに組み込まれたシステイン残基のチオール基との共役反応のためのアミン基が付加されています(図 1)。このサービスプロジェクトの目的は、ARC 分子の特性解析のための、1)イオン対 RPLC-MS メソッドを用いた siRNA のセンス鎖とアンチセンス鎖の質量確認、2)ネイティブ SEC-MS を用いた最終的な ARC 分子の DAR の計算の 2 つのメソッドを開発することです。いずれのメソッドも BioAccord システムで開発されており(図 2)、製品の同定および可能性のある不純物に関する情報が得られます。
本研究では、siRNA または ARC の質量確認に最適化した 2 つの LC-MS メソッドを報告しました。これらのメソッドは、ACQUITY UPLC I-Class PLUS システム、チューナブル UV 検出器、および設置面積の小さい飛行時間型(ToF)質量分析計である ACQUITY RDa 検出器で構成される BioAccord システム上で開発されています。このシステムは、規制対応の waters_connect インフォマティクスシステム(図 2)で制御され、操作されます。BioAccord システムは、バイオ医薬品向けの様々な高分解能質量分析計ベースのアッセイに最適です。この範囲は、インタクトおよびサブユニットの質量分析から、電荷およびサイズベースの MS 分析、ペプチドマッピング、マルチ特性モニタリング(MAM)、オリゴヌクレオチドや遊離糖鎖のアッセイまで多岐にわたります。
逆相イオン対クロマトグラフィー(IPRP LC-MS)をネガティブイオンモードで実施することで siRNA のセンス鎖とアンチセンス鎖の両方について精密質量を確認しました。図 3 には、waters_connect での MaxEnt 1 解析によってチャージデコンボリューションした質量を示します。実測質量は理論質量と一致していました。
ARC 質量分析の目的として、DAR1 および DAR 2 の分子種を同定することに重点を置いています。従来の光学検出器(UV または FLR)を用いるクロマトグラフィーメソッドだけでは、確実な同定を行うのに十分ではありません。更に、LC-MS ベースのアッセイは、DAR の測定に最適です。mAb 分子の完全性をチェックするために、キャリア mAb の RPLC-MS 分析を最初に行いました(Fc 領域のアスパラギン(N)残基をシステイン(C)残基に置換)。図 4A のチャージデコンボリューションしたスペクトルの主要ピークは、改変された mAb の計算質量とマッチする質量を示しています。サンプルに DAR 1 および DAR 2 の分子種が存在するかどうかを確認するために、ネイティブの SEC-MS 実験を行いました。非変性移動相は、ESI+MS プロセスにおいて二本鎖 siRNA をインタクトのまま維持するのに役立ちます。MaxEn1 でデコンボリューションしたスペクトルから、DAR 1 と DAR 2 の分子種が両方認められました。更に、アンチセンス鎖のない DAR1 と DAR2 が認められました(図 4b)。
1)siRNA の同定(センス鎖およびアンチセンス鎖)の確認、および 2)ネイティブ SEC-MS によるサンプル中の抗体-siRNA 分子の分布の確認を行うために、2 種類の LC-MS メソッドを開発しました。分析スケールの ACQUITY UPLC I-Class PLUS とベンチトップ型 ToF 質量検出器(ACQUITY RDa)を使用して、メソッドとワークフローの両方を開発し、最適化しました。いずれのメソッドも BioAccord システムでわずかな最適化により、簡単に実行できます。メソッド開発に使用するコンプライアンス対応のソフトウェアには、効率の向上や、開発ラボから QC ラボへのメソッド移管のサポートなど、更なる利点が追加されています。
Henry Shion, Catalin E. Doneanu, Ying Qing Yu, Weibin Chen - Waters Corporation
Ed Ha - Angiex, Inc.
720007212JA、2021 年 3 月