自動ハイスループットマルチパラレル Ambr®15 マイクロバイオリアクターシステムのための BioAccord™ LC-MS を使用したプロセス内培地モニタリング
研究目的のみに使用してください。診断用には使用できません。
要約
BioAccord™ LC-MS システムは、Ambr®15 バイオリアクターからの細胞培養培地サンプルの分析に使用されてきました。包括的な LC-MS 手法、ワークフロー、バッチ解析ソフトウェアにより、バイオプロセスエンジニアは、多数のサンプルを迅速かつ簡単に分析し、解析できるようになりました。多変量データ解析により、すべての容器にわたる組成および濃度の差の概要が把握できます。この情報を他の解析や製品関連品質特性と組み合わせることで、バイオプロセスグループは、重要なバイオプロセスのパラメーターが製品の CQA(重要品質特性)に及ぼす影響についての情報を迅速に得ることができます。
アプリケーションのメリット
- バイオプロセス開発ラボに展開できる操作が簡単なプラットホームで、ハイスループット自動バイオリアクターシステムでの迅速かつ包括的な細胞培養培地分析が可能に
- 1 つのプラットホームで、培地モニタリングプロセス分析、並びにインタクトプロテイン分析やサブユニットタンパク質分析による糖鎖プロファイルやタンパク質修飾、バリアントなどの製品品質の分析をサポートペプチドレベルの特性モニタリングおよび遊離糖鎖分析がさらに検討可能に
はじめに
細胞培養培地から、細胞の健康および増殖を維持し、バイオ医薬品の製造および品質の最大化に不可欠な養分および成分が提供されます。バイオプロセスグループでは、生培地、供給物、補助剤、使用済み細胞培養培地をモニタリングすると共に、プロセスエンジニアに迅速に情報を提供することに対する関心が高まっています。使用済み培地には、必須アミノ酸、ビタミン、およびその他の主要な供給物成分に加えて、さらに多数の成分や代謝物が含まれています。ルーチンで包括的なモニタリングを行うことで、クローン選抜やプロセスの最適化において、細胞培養のパフォーマンスに関する追加の情報が得られます。このテクノロジーブリーフでは、BioAccord LC-MS システム1に基づく細胞培養培地モニタリングのために開発した方法を、Ambr®15 ハイスループットバイオリアクターシステム(スキーム 1)のプロセス内サンプルのルーチンスクリーニングに適用しています。
結果および考察
哺乳類の CHO を供給したバッチ処理を、24 連 Ambr® 15 細胞培養バイオリアクターシステムでの 14 日間の延長培養に用いました。さまざまな培地の配合および補助剤の条件を用いて、多様な範囲の成分濃度を得ました。使用した基本の細胞培養培地および供給物は、CHO 細胞培養に用いる Sartorius ブランドの無血清の化学的に規定された培地です。3 日目からサンプルを毎日採取し、CS1:01(培地 1 - フィード 1)、CS1:05(培地 2 - フィード 2)、CS1:09(培地 1 - フィード 3)などの容器に対して、Ambr® 15 自動リキッドハンドリング装置を使用して細胞計数と使用済み培地の測定を行いました。培地のアリコートを遠心分離してろ過し、0.1% FA を使用して 1:200 の比率に希釈してから、BioAccord にロードして LC-MS 分析を行いました。精密質量スクリーニングワークフローを使用する LC-MS 取り込みパラメーターの詳細は、以前の論文に記載しています1。 すべてのデータを収集し、コンプライアンス対応 waters_connect™ インフォマティクスプラットホームで解析しました。
化合物の割り当ては、内蔵の 200 以上の化合物の細胞培養培地のライブラリーを使用して、保持時間および質量電荷比(m/z)のアライメントに基づいて行いました。データレビューのパネルを図 1 に示します。画面の左側には、ワークフローが機能、化合物クラス、反応経路ごとに分類されており、簡素化してエンドユーザーがデータをレビューするのを段階的かつ体系的なやり方で補助しています。その他の情報や表示が必要な場合、ワークフローをカスタマイズすることが可能です。化合物のサマリーテーブル(右上)には、レスポンスおよびその他の化合物に関連する情報が表形式でまとめられており、エクスポートしてさらにデータ解析を行うことができます。下のパネルには、現在選択している化合物の検出ピーク(抽出イオンクロマトグラム)およびサマリープロットが示され、そのすべての注入にわたるトレンド/レベルが示されています。このトレンドプロットから、バッチプロセスでの化合物の変化をすぐに表示できます。
バッチの過程全体の 3 つの容器にわたる代表的な化合物の重ね描きトレンドプロットを図 2 に示します。グラフにより、一部の化合物のレスポンスが変化し、他の化合物のレスポンスは変化していないことがわかります。例えば、アラニン、プロリン、グルタミンについては、異なる容器の変化が類似の傾向をたどりました。アスパラギン、シスチン、グルタミン酸については、容器 CS1:05 で他の 2 つの容器と異なる傾向が見られ、供給戦略よりも最初の培地の組成が大きな役割を果たしたことが示唆されます。
多変量データ解析ツールを使用した追加のバッチ解析も実施しました。サンプリング時間全体にわたるこれらのバイオリアクターの代表的な主成分分析(PCA)プロットを図 3 に示します。PCA 解析により、培地組成は時間の経過と共に分化が進んでいることが示されました。最初(3 日目)は、3 つの容器すべてで培地組成が同様でした。培養プロセスが続くと、容器 CS1:01 と CS1:09 の培地の変化は似ていましたが、容器 CS1:05 は非常に異なるパターンを示しました。この追加のバッチ比較分析の情報を、その他の解析または製品関連品質特性と組み合わせることで、バイオプロセスグループは、バイオプロセス開発時に迅速に情報を得ることができます。
結論
Ambr®15 バイオリアクターのシステムからの細胞培養培地サンプル分析の包括的な LC-MS 手法およびワークフローについて説明しました。Ambr®15 マルチパラレルバイオリアクターシステムおよび BioAccord LC-MS を使用することで、培養プロセスの間に毎日、複数のバイオリアクターについて、培地採取および LC-MS 取り込みを行うことができました。このようにして、供給バッチプロセスが約 2 週間後に完了したとき、LC-MS 分析からの培地データも完了し、特にプロセス関連の理解を深めるための、より詳細なデータマイニングが容易に実施できます。BioAccord LC-MS システムの分析法セットアップはシンプルで、性能が長期的に安定していることから、LC-MS の経験の少ないバイオプロセスエンジニアでも多数のサンプルを迅速かつ簡単に解析でき、さらなるメリットが得られます。全体として、Ambr® 15 バイオリアクターサンプルのルーチンの LC-MS ベースの分析により、バイオプロセスグループは、バイオプロセス開発時に迅速に情報を得ることができます。
参考文献
- Alelyunas YW, Wrona MD, Chen W,.Monitoring Nutrients and Metabolites in Spent Cell Culture Media for Bioprocess Development Using the BioAccord LC-MS System with ACQUITY Premier, Waters Application Note: 720007359, September 2021.
謝辞
1. Yun W. Alelyunas, Mark D. Wrona, Ying Qing Yu - Waters Corporartion.
2. Charles Prochaska, Clint Kukla - Sartorius Stedim.
720007581JA、2022 年 3 月