PFAS に係る第一種飲料水規則に対処するためのサンプル前処理および分析ワークフロー
要約
新しく発表された PFAS に係る第一種飲料水規則により、米国で初めて、飲料水中の 6 種類の PFAS 化合物の法的強制力のある濃度レベルが設定されました。個々の化合物の規制レベルは、4 ~ 10 ng/L(または ppt)の範囲です。サンプル前処理からサンプル分析まで対応する Waters™ PFAS ソリューションは、新しい PFAS 規制の実施を容易にし、規制対象の最大汚染レベル 4 ng/L をはるかに下回るレベルに正確に到達できるようにするために提供されています。
アプリケーションのメリット
- Xevo™ TQ-S micro 質量分析計は、EPA 537.1 および EPA 533 メソッドに従う場合、新しい PFAS に係る第一種飲料水規則に適合するのに十分以上の感度を有することが実証済み
- Sep-Pak™ PS2 および PFAS SPE カートリッジ用 Oasis™ WAX はいずれも、飲料水に含まれる規制対象の 6 種の PFAS について優れた回収率を提供
- サンプル前処理および分析にウォーターズのソリューションを使用した完全なワークフローを用いることで、新しい PFAS 飲料水規制に準拠するための正確で信頼性の高い検査を実現
はじめに
米国環境保護庁(EPA)は、2024 年 4 月 10 日に最初の法的強制力のある飲料水中 PFAS レベルを最終決定しました1。 PFAS に係る第一種飲料水規則(NPDWR)により、公共水供給における 6 種類の PFAS の最大汚染レベル(MCL)が規制されます。規制対象 PFAS のリストには、PFOA、PFNA、PFBS、PFHxS、PFOS、HFPO-DA(一般的に GenX と呼ばれる)が含まれています。個別の MCL 値は、PFOA と PFOS について 4 ppt、PFNA、PFHxS、HFPO-DA について 10 ppt と定められています。さらに、PFBS、PFNA、PFHxS、HFPO-DA が飲料水サンプル中に 2 種類以上の混合物として存在する場合、この混合物が相加的に健康に及ぼす影響を表すハザード指数も計算し、報告する必要があります。この規制の実施下では、ハザード指数は 1 を超えることができません。
2027 年までに、すべての公共水システムで、これら 6 種類の PFAS 化合物のルーチンモニタリングを実施することが求められています。2024 年 ~ 2027 年の初期モニタリング期間の、年 4 回または年 2 回(そのシステムによって水供給を受ける顧客数による)ごとのモニタリングの結果により、2027 年以降に必要なモニタリングの頻度が決定されます。現在、PFAS に関する飲料水検査には、EPA 537.1 および EPA 533 という 2 つの EPA メソッドが使用できます。これらの分析法のいずれでも、新しく規制対象になった 6 種類の PFAS がカバーされます。サンプル前処理からサンプル分析まで対応する Waters PFAS ソリューションにより、この新しい PFAS 規制の実施が容易になることが示されています。
実験方法
分析法情報
すべてのサンプルは、EPA 537.1 および EPA 533 に記載されているプロトコルに従って採取および前処理しました2,3。 スパイク済みサンプルには、感度と回収率を最適化するために、最小限のレベルの PFAS 汚染を含むように、以前に試験して最小レベルの PFAS 汚染しか含まれないことが確認された試薬水を使用しました。最終飲料水サンプルは現地で採取しました。EPA 537.1 の場合、Sep-Pak PS2 SPE カートリッジ(製品番号:WAT200610)を使用し、EPA 533 の場合、PFAS 用 Oasis WAX SPE カートリッジ、500 mg、30 µm(製品番号:186009568)を使用しました。
PFAS 分析キットが取り付けられ、Xevo TQ-S micro 質量分析計に接続された ACQUITY™ UPLC™ I-Class PLUS FTN で分析を行いました。
結果および考察
NPDWR PFAS 規則で要求されている ppt または ng/L レベルの測定値を実現するには、十分高い感度を持つ質量分析計が必要になります。水質を継続的にモニターするためには、規制レベルを簡単に検出および定量できる必要があるだけでなく、規制濃度を十分下回るレベルを検出および定量できることが必要です。固相抽出(SPE)を使用したサンプル前処理によるサンプル濃縮効果により、分析法の感度がさらに向上します。EPA 537.1 メソッドおよび EPA 533 メソッドのサンプル前処理および分析ではいずれも、250 mL の飲料水サンプルを最終サンプル抽出液量 1.0 mL に濃縮することで、250 倍のサンプル濃縮が得られます。Xevo TQ-S micro 質量分析計を、このサンプル前処理と組み合わせることで、優れた感度が発揮され、6 種類の規制対象 PFAS を ppq レベルまで確実かつ正確に検出することができます。図 1 に、メソッドブランク、低濃度キャリブレーションスタンダード(0.2 ng/L)、サンプル抽出物(0.5 ng/L)、サンプル抽出物(4 ng/L)中の 6 種類の規制対象 PFAS の定量イオンの重ね描きを示しています(報告濃度はサンプルと同等の濃度)。図 1 からわかるように、メソッドブランクには汚染はほぼ見られませんでした。また、ピークは 20 を超える SN 比で容易に検出でき、各濃度でのピークが容易に波形解析できました。
サンプル前処理メソッドの性能も、ルーチンモニタリングで正確かつ信頼性の高い飲料水の結果を得るために重要です。2 種類の EPA 飲料水メソッド(537.1 および 533)では異なる SPE カートリッジおよびプロトコルを使用するため、両方のメソッドで得られた回収率を図 2 に示します。図 2 に報告している回収率は、規制レベル(4 ng/L)になるようにスパイクした試薬水からの回収率です。Sep-Pak PS2 カートリッジでの EPA 537.1 の平均回収率は 107%(範囲 103 ~ 115%)で、PFAS 用 Oasis WAX カートリッジでの EPA 533 の平均回収率は 93%(範囲 90 ~ 95%)でした。いずれの SPE カートリッジも、それぞれの EPA 飲料水メソッドの要件の範囲内の性能を容易に発揮しています。
真正飲料水サンプルを使用してワークフローを実証するため、現地で採取した 2 点の飲料水サンプルを分析しました。サンプル 1 は EPA 537.1 メソッドに従って、サンプル 2 は EPA 533 メソッドに従って分析しました。個別の規制最大濃度レベル(MCL)およびハザード指数と結果を比較して、表 1 に報告しています。ハザード指数は、以下の計算式を使用して計算しました。
ハザード指数 = (HFPO-DAppt)/10ppt+(PFBSppt)/(2000ppt)+(PFNAppt)/10ppt+(PFHxSppt)/10ppt
サンプル 1 には、PFOA、PFOS、PFBS、PFHxS、PFNA が含まれていることがわかりました。サンプル 2 には、PFOA、PFOS、PFBS、PFHxS が含まれていることがわかりました。いずれのサンプルのハザード指数も、規制レベル 1.0 を十分下回っています。サンプル 1 で検出された個々の PFAS はすべて新しい規制限界の範囲内でしたが、サンプル 2 には、新しい 4.0 ng/L MCL を超える定量レベルの PFOS が含まれていました。
結論
新しい PFAS に係る第一種飲料水規則に容易に適合するためのルーチンモニタリング用の完全なワークフローを紹介しました。Sep-Pak PS2 または PFAS 用 Oasis WAX カートリッジを使用して EPA 537.1 または EPA 533 に従って行ったサンプル前処理により、最大の回収率が得られることが実証されました。Xevo TQ-S micro MS に接続した ACQUITY UPLC I-Class PLUS を使用し、PFAS キットを取り付けて汚染を遅延させた分析により、最低の規制 MCL である 4 ng/L をはるかに下回る濃度まで、簡単かつ正確に到達できることが実証されました。ウォーターズのオンサイトでのアプリケーショントレーニングと Waters ERA™ が提供する認定レファレンス物質を組み合わせることで、新しいラボと経験豊富なラボのいずれにおいても、飲料水検査用の PFAS ソリューションが簡単に確立できます。
参考文献
- Per- and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS) Final PFAS National Primary Drinking Water Regulation.US Environmental Protection Agency.PFAS.Accessed 10 April 2024.
- Shoemaker J., Dan Tettenhorst.Method 537.1: Determination of Selected Per- and Polyfluorinated Alkyl Substances in Drinking Water by Solid Phase Extraction and Liquid Chromatography/Tandem Mass Spectrometry (LC/MS/MS).US Environmental Protection Agency.November 2018.
- Method 533: Determination of Per- and Polyfluoroalkyl Substances in Drinking Water by Isotope Dilution Anion Exchange Solid Phase Extraction and Liquid Chromatography/Tandem Mass Spectrometry. US Environmental Protection Agency.December 2019.
720008330JA、2024 年 4 月