• アプリケーションノート

栄養補助食品中のトコフェロールの順相 HPLC 分析法の移管

栄養補助食品中のトコフェロールの順相 HPLC 分析法の移管

  • Lise Gauthier
  • Kimberly Martin
  • Paula Hong
  • Waters Corporation

要約

栄養補助食品の人気が高まるにつれ、製品がラベル表示に適合していることを確認する必要があります。一方、多くのマルチビタミン製剤には水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンの両方が含まれているため、単一モードのクロマトグラフィーでは分析が困難です。ビタミンは広範囲の化学特性を有するため、通常、複数モードのクロマトグラフィーを使用して分析を行います。高極性の水溶性ビタミンは通常、逆相(RP)または親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)で分析し、非極性の脂溶性ビタミンには、順相(NP)クロマトグラフィーが適しています1

アイソクラティック順相分析法の場合、システムの更新および交換を行うため、HPLC システム間で分析法を移行する能力が必須です。非極性溶媒などの順相クロマトグラフィーに固有の特性や装置設計の違いにより、分析法を移行する際のセットアップと操作が困難な場合があります。そのため、システム間で分析法を移行する際は、これらの違いを認識した上で管理することが重要です。

今回の実験では、古い HPLC システムから最新の Alliance iS HPLC System への分析法の移行について説明します。4 種類のビタミン E(トコフェロール)を分離するための順相分析法をシステム間で移行しました。得られた結果は、定義された分析法移行の許容基準、特にピーク面積の %RSD および分離度についてのシステム適合性要件を満たしていました。移行の後、この分析法を使用して栄養補助食品中のトコフェロールを測定し、トコフェロールの定量における性能を実証しました。

アプリケーションのメリット

  •  古い順相 HPLC 分析法の Alliance iS HPLC System への簡単な移行
  • このアプリケーションノートで説明する順相分析法により、ビタミンサプリメント中のトコフェロール定量手法を提供

はじめに

順相 HPLC は、極性化合物および親水性化合物の分離、および異性体分離に有用な手法です。順相 HPLC では、極性固定相を非極性または中等度の極性の移動相と組み合わせることが必要です。順相 HPLC は、水溶性が限られている化合物の分析に頻繁に使用されています。このような化合物は、非極性溶媒中に直接抽出して分析できるため、サンプル前処理は順相に適合しています。一方、逆相(RP)分離の場合、これらの化合物には、蒸発乾固および逆相分離に適合する溶媒への再溶解などの、追加の(多くの場合時間がかかる)サンプル前処理ステップが必要です。 

多くの場合、順相クロマトグラフィーと逆相クロマトグラフィーは同じ HPLC システムで実行できますが、標準構成のシステムを順相用構成に変換するには、若干のシステムの変更が必要になる場合があります。これは、構成材料が順相溶媒に適合しないためです。具体的には、ハードウェアの変更(例:チェックバルブ、チューブ、ポンプシール)が必要になる場合があります。さらに、モード間で切り替える場合は、溶媒の非混和性の問題を避けるため、溶媒置き換えのプロセスが必要になります。

ビタミン E は、顕著な抗酸化特性を示す脂溶性化合物のクラスに割り当てられた名称です。ビタミン E 活性を示すトコフェロールは 4 種類(α、β、γ、δ)あります。自然由来の栄養補助食品中には、これらの 4 種類のトコフェロールが一定の割合で含まれますが、α-トコフェロールのみが、ヒトのビタミン要件を満たすと認められています2。 

栄養補助食品中のトコフェロールを測定するための順相分析法を開発しました。この分析法は、2 種類の古い HPLC システム(システム 1 = Waters Alliance e2695 システム、システム 2 = 別のベンダーのシステム Y)で正常に実行できました。次に、この分析法を最新のシステムである Alliance iS HPLC System に正常に移行しました。正常な分析法移行の基準は、分析法の確立されたシステム適合性要件を満たす性能と定義しました。栄養補助食品サンプルを前処理して Alliance iS HPLC System で分析し、結果をラベル表示と比較しました。

実験方法

標準試料の前処理

4 種類のトコフェロール(α、β、γ、δ)を含む作業用標準試料は、MilliporeSigma から購入した標準試料を使用して調製しました。トコフェロールをヘキサンで最終濃度 0.2 mg/mL に希釈しました。 

分析条件

LC 条件

LC システム:

Alliance e2695 システム

古いシステム Y

Alliance iS HPLC System

検出:

2489 UV/Vis 検出器

可変波長検出器(VWD)

TUV 検出器

波長:

295 nm

サンプリングレート:

10 Hz

バイアル:

LCGC 品質保証透明ガラス 12 × 32 mm スクリューネックバイアル、トータルリカバリー、キャップおよびスリット入り PTFE/シリコンセプタム付き、容量 2 mL(製品番号:186000307C)

カラム:

XBridge™ BEH™ HILIC カラム、5 µm、4.6 × 150 mm(製品番号:186004453)

カラム温度:

40 ℃

サンプル温度:

10 ℃

注入量:

30 µL

流速:

1.3 mL/分

移動相:

95:5 ヘキサン:酢酸エチル(0.05% 酢酸含有)

ニードル洗浄溶媒:

90:10 ヘキサン:2-プロパノール

データ管理

クロマトグラフィーデータシステム:

Empower™ 3.8.0

結果および考察

分析法を実行する前に、各システムを逆相モードから順相モードに切り替えました。装置の設計の違いを考慮して管理しました。これには、選択したシステムで順相溶媒を流すために必要なハードウェアの変更が含まれます。Alliance iS HPLC System ではチェックバルブと廃液チューブの簡単な交換で済みましたが、システム Y では、チェックバルブとチューブに加えてより手間のかかるポンプシールの交換が必要でした。順相溶媒を導入する前に、すべてのシステムをイソプロパノールでフラッシュ洗浄し、水系溶媒を除去しました。

システム適合性基準は、定量分析法のニーズに基づいて選択したもので、各トコフェロールの分離度とピーク面積精度を含めました。作業用標準試料を 6 回繰り返し注入し、各トコフェロールのピーク面積の精度と USP 分離度を計算することにより、各システムでの分析についてシステム適合性結果を算出しました。各システムで得られた代表的なクロマトグラムと結果を図 1、2 および表 1 に示します。

図 1.  Alliance iS HPLC System、Alliance e2695 システム、システム Y での標準調製物の代表的なクロマトグラム
図 2.  Alliance iS HPLC System での 6 回のシステム適合性注入の重ね描き
表 1.  システム適合性結果

それぞれのシステムから同等のクロマトグラフィーが得られました。いずれのシステムでも、システム適合性基準も満たされていました。ピーク面積の精度は、Alliance iS HPLC System と古い Alliance e2695 のシステム間で同様であり、標準試料中のすべてのトコフェロールについて同等の精度が得られました。USP 分離度は、Alliance iS HPLC System の方がわずかに改善されていました。得られた結果は指定された許容基準を満たしていたため、Alliance iS HPLC System への分析法移行は成功していました。 

分析法を Alliance iS HPLC System に移行した後、これを使用して、自然由来のマルチビタミン錠とビタミン E ソフトゲルカプセルという 2 種類の剤型の栄養補助食品中のトコフェロールを測定しました。分析に順相 HPLC を使用することで、サンプル前処理が容易になりました。トコフェロールは、サンプルマトリックスから非極性溶媒(ヘキサン)中に抽出されました。これをシステムに直接注入したため、追加の面倒なサンプル前処理ステップは不要でした。この分析では、1 点外部標準を定量に使用しました。サンプル調製物のクロマトグラムを図 3 および 4 に示します。 

図 3.  Alliance iS HPLC System でのマルチビタミンサンプル調製物の分析
図 4.Alliance iS HPLC System でのビタミン E ソフトゲルカプセルサンプル調製物の分析

α-トコフェロールの定量結果を、各製品のラベル表示と比較しました。これらの結果により、栄養補助食品中の(α-トコフェロールとしての)トコフェロール含有量を定量できることが実証されました。結果は表 2 に示しています。

表 2.  Alliance iS HPLC System で得られた α-トコフェロールサンプルの分析結果

結論

システムは新しいシステムに更新および交換されるため、HPLC システム間で分析法を移行する能力は不可欠です。栄養補助食品中のトコフェロールを測定するための順相分析法を、古いシステムから Alliance iS HPLC System に正常に移行できました。次に、この分析法を使用して 2 種類の栄養補助食品サンプル中のトコフェロールを測定しました。

Alliance iS HPLC System では、分析法移行の許容基準(システム適合性要件を満たすと定義)が満たされており、古いシステムと同等のクロマトグラフィーおよび結果が得られました。サンプルの結果から、この分析法により、健康補助食品中のトコフェロールを定量できることが実証されました。全体として、これらの結果から、Alliance iS HPLC System への分析法の移行が容易であることが示されました。また、装置資産を最新の状態に保つことによる、性能面でのメリットも示されました。 

参考文献

  1. Eric S. Grumbach and Kenneth J. Fountain. Comprehensive Guide to HILIC Hydrophilic Interaction Chromatography. Waters Corporation, 2010.
  2. National Institutes of Health Office of Dietary Supplements.(2021).Vitamin E [Fact Sheet]. https://ods.od.nih.gov/factsheets/VitaminE-HealthProfessional for health professional/.

720008232JA、2024 年 2 月

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