究極の法中毒学スクリーニングのコンパニオン - Xevo G3 QTof
法中毒学目的のみに使用してください。
要約
このアプリケーションブリーフでは、既存の法中毒学用高分解能質量分析(HRMS)スクリーニングソリューションにおける Xevo G3 QTof(図 1)の使用の評価について説明します。
アプリケーションのメリット
はじめに
高分解能質量分析(HRMS)は、幅広い毒物学的スクリーニングにおいて人気が高まっています。非常に複雑な生物学的マトリックス中のさまざまな有毒物質を検出できる手法が、法中毒学のラボで強く求められています。Waters™ では、すぐに導入できる毒物スクリーニングソリューションを 15 年にわたって提供しており、Xevo G2-XS QTof や今では Xevo G3 QTof などの多数の HRMS システムに適用されてきました。HRMS スクリーニングソリューションは専用のクロマトグラフィー分析法で構成されており、これによって陽イオン性分析種と陰イオン性分析種に対する感度が最大化し、MSE を使用したデータインディペンデント分析(DIA)によって得られたレファレンス保持時間(RT)、プリカーサーの精密質量、フラグメントイオン情報で構成される包括的なデータライブラリーに対して解析が行われます。
この試験では、Xevo G3 QTof 質量分析計で使用する法中毒学 HRMS スクリーニングソリューションを評価するために、システム試験溶液および薬物コホートからのいくつかの真正尿サンプルを分析しました。
実験方法
材料
試験は、2 種類の試験溶液を使用して行いました。試験溶液 1 は、英国ウォーターズから入手した 10 種の化合物を含む市販の標準試料(法中毒学据付標準試料キット、製品番号:186007361)です。この試験溶液 1 は、毎日のシステム適合性チェックとして定期的に分析します1。 試験溶液 2 は、Merck(英国ドーセット)から入手した認証レファレンス物質から調製した、6 種の化合物を含む社内サンプルです。試験溶液 1 および 2 に含まれる化合物のリストを表 1 に示します。
さらに、薬物コホートから 20 種類の真正尿サンプルを無作為に選択しました。これらの尿サンプルは、以前に Xevo G2-XS QTof を搭載した ACQUITY™ UPLC™ I-Class(FTN)で、法中毒学スクリーニングソリューション(ESI ポジティブモードおよび ESI ネガティブモード)を使用して特性解析されています2。
サンプル前処理
試験溶液 1(ESI ポジティブ):500 ng/mL の 10 種の化合物の混合液を、5 mM ギ酸アンモニウム pH 3.0(移動相 A1)を使用して、濃度 25 ng/mL になるように 20 倍希釈しました。
試験溶液 2(ESI ネガティブ):6 種類の化合物を含む 2500 ng/mL のストック溶液をメタノール中に調製し、続いて 0.001% ギ酸水溶液(移動相 A2)を用いて、濃度 25 ng/mL になるように 100 倍希釈しました。
真正尿サンプルは、ポジティブイオン化分析用には移動相 A1 を使用して 5 倍希釈し、ネガティブイオン化分析用には移動相 A2 を使用して 5 倍希釈して調製しました。すべてのサンプルを分析前にボルテックス混合しました。
データ取り込み
確立された手法に基づき、ACQUITY UPLC I-Class(FTN)システムと Xevo G3 QTof を組み合わせて使用して、データを取り込みました。続いて、waters_connect™ インフォマティクスパッケージを使用してサンプル情報を解析し、以前に同じ条件下で作成した 2000 を超える薬物および代謝物を含むウォーターズの法中毒学データベースと比較しました。サンプルは、専用のポジティブ(ESI ポジティブ)イオン化分析法およびネガティブ(ESI ネガティブ)イオン化分析法を使用してスクリーニングします3,4。
それぞれの確立された毒物学スクリーニンググラジエントおよび移動相を使用して、分析は 15 分(ESI ポジティブ)および 7.5 分(ESI ネガティブ)で完了しました2。 Xevo G3 QTof 質量分析計は MSE 取り込みモードで操作しました。この取り込みモードでは、フル MS スペクトルの収集が容易になり、2 種類のコリジョンセル電圧が迅速に切り替えられます。つまり、まず低電圧での取り込みでプリカーサーイオンの精密質量を得て、2 番目の電圧ランプ(10 ~ 40 eV)により、さらなる確認目的でフラグメントイオンの精密質量を得ました。
結果および考察
ESI ポジティブモードと ESI ネガティブモードの両方で各分析種を明確に同定するための合否基準は、三次元(3D)低エネルギーイオンカウント強度が 250 を超え、保持時間がレファレンス保持時間の 0.35 分以内で、実測プリカーサー質量が予想精密質量の 5 ppm 以内であることでした。さらなる確認のためには、高エネルギーファンクションで少なくとも 1 つの診断用フラグメントイオンが検出される必要があります。10 種類の化合物(25 ng/mL)がすべて同定され、図 2 では、試験溶液 1(ESI ポジティブ)中のクロザピンについて得られた結果が waters_connect™ の Review(レビュー)タブに示されています。
合否基準を使用して、ESI ポジティブ分析を行った 20 種類の尿サンプル中に計 27 種類の親薬物および/またはその代謝物が検出されました。検出された薬物は、アンフェタミン類、抗うつ薬、降圧薬、抗マラリア薬、アヘン類/オピオイド、処方薬/市販薬(OTC)、鎮静薬に大きく分かれました。これらの分布を図 3 に示します。データは全体として、以前に Xevo G2-XS QTof での特性解析で得られたデータとよく一致していました。
さらに、ESI ネガティブ分析法で、試験溶液 2(25 ng/mL)に含まれる 6 種類のターゲット化合物が正しく検出され、割り当てられました。この分析法を使用して尿サンプルについて得られた結果は、以前に Xevo G2-XS QTof で得られた結果と同等であり、エチルグルクロニド、エチル硫酸、フロセミド、ナプロキセン、サリチル酸、カルボキシ-THC などが検出されました。図 4 の Review(レビュー)タブには、カルボキシ-THC の検出結果が示されています。
結論
毒物学のラボにおいては、複雑な生物学的マトリックスサンプル中の分析種を確実に同定できることが、今でも分析の主要な課題となっています。今回、法中毒学 HRMS スクリーニングソリューションを正常に導入して、waters_connect インフォマティクスプラットホームを用いる Xevo G3 QTof で使用できることを実証しました。
2000 を超えるライブラリーエントリーを含む、このすぐに使用できる HRMS スクリーニングソリューションは、既知の化合物を含むシステム適合性混合物の分析に適合し、以前に Xevo G2-XS QTof を使用して特性解析された真正尿サンプル中に存在する化合物を一貫して検出できることが証明されました。
参考文献
- Care and Use Manual; Forensic Toxicology Installation Standards Kit, Waters User Manual 715004381, Nov 2013.
- HRMS Forensic Toxicology Screening solution media available at Forensic Toxicology Application Solution Media by Waters | Marketplace.
- M. Wood.The Utility of MSE for Toxicological Screening, Waters Appllication Note, 720005198, Mar 2014.
- R. Lee, S. Freeto, M. Wakefield and M. Wood.No Compromise! Improved Sensitivity for Negatively-Ionizing Substances.Waters Application, 720005479, Aug 2015.
720008033JA、2023 年 9 月