生体マトリックスからのオリゴヌクレオチド医薬品の、選択的で再現性のあるサンプル前処理および抽出のための、標準化されたキットベースアプローチの開発
研究目的のみに使用してください。診断用には使用できません。
要約
オリゴヌクレオチドのバイオアナリシスのサンプル前処理ワークフローは、多くの場合時間がかかり、複雑で、十分な抽出効率と再現性を得るには、手間のかかる分析法開発が必要です。許容誤差が小さいことに対して、各サンプルの生物学的性質や現在開発中のオリゴヌクレオチド医薬品が多様であることを考慮すると、日間、ユーザー間、ラボ間でのばらつきが非常に大きくなる可能性があります。オリゴヌクレオチド定量の分析データにおける抽出効率と再現性は悪く、全般的に専門知識が不足していることから、オリゴヌクレオチドのバイオアナリシス用のサンプル前処理および抽出には、標準化されたキットベースのアプローチが強く求められます。
アプリケーションのメリット
- オリゴヌクレオチドバイオアナリシス用のサンプル前処理における、OligoWorks WAX SPE マイクロプレートキットソリューションを用いた標準化され、合理化されたアプローチ
- 測定済みでロット追跡可能な試薬により、サンプル前処理が簡素化
- サンプル前処理にかかる時間と分析法開発を最小限に抑えられる最適化されたプロトコル
- さまざまなバイオマトリックスおよび出発サンプル容量(12.5 ~ 300 µL)にわたって 80% 超の一貫して高いオリゴヌクレオチド回収率が得られる、柔軟で拡張性のあるキットベースのアプローチ
- オリゴヌクレオチドの血漿からの回収において RSD 15% 以下の頑健で再現性のあるパフォーマンス
- サンプルの蒸発乾固や再溶解が不要な、最大注入量 30 µL のダイレクト LC-MS サンプル分析
はじめに
オリゴヌクレオチド医薬品は、その遺伝子の転写および翻訳のレベルで疾患に対処する能力を考慮すると、極めて大きな可能性を秘めた成長中の医薬品のクラスと言えます。そのため、その開発を支援するための LC-MS バイオアナリシス定量に対する要求および必要性が高まっています。バイオアナリシスアッセイのばらつきの要因の 1 つは、サンプル前処理に起因しています。これは特にオリゴヌクレオチドに該当します。オリゴヌクレオチドのアッセイでは、さまざまなサンプル前処理手法が現在使用されており、それぞれに複数のプロトコルのステップがあってオリゴヌクレオチド抽出効率もさまざまであるため、アッセイパフォーマンスの許容誤差とばらつきが大きくなります。アッセイの最適化により、この誤差を減らし、再現性を高めることはできるものの、有効な定量的測定値に求められる厳格な規制ガイドラインや再現性要件を考慮すると、ユーザー間またはラボ間で(例えば依頼者から CRO へ)のこれらの分析法の移管は非常に困難になる可能性があります。これらの点すべてにより、科学的専門知識のレベルが一様でないラボ間で容易に展開でき、一貫して高いオリゴヌクレオチド回収率とばらつきの低減を可能にする、よりシンプルで、より標準化された合理的なサンプル前処理ワークフローが強く求められていることが浮き彫りになります。
この実験では、OligoWorks SPE マイクロプレートキット(製品番号:186010614)を使用し、OligoWorks SPE キットおよび付属の試薬とともに提供される、血漿および尿の生体マトリックス中のオリゴヌクレオチド分析用プロトコルを用いて、バイオアナリシスサンプル前処理プロセスの簡素化および合理化を行いました。評価する主なパフォーマンス特性には、プロテイナーゼ K 消化サンプルの前処理によるオリゴヌクレオチド-タンパク質結合破壊の速度および効率、標準化したプロトコルの柔軟性および拡張性、サンプル容量 12.5 ~ 300 µL にわたる直線的な MS レスポンス、サンプルの蒸発乾固や再溶解が不要になるダイレクト LC-MS アッセイへの適合性、そしてもちろん多様なオリゴヌクレオチドについての高い抽出効率と再現性が含まれます。
実験方法
OligoWorks SPE キットの開発および評価のために、BioIVT(ニューヨーク州ウェストバリー)から購入したラットの血漿または尿中に複数のオリゴヌクレオチドを前処理しました。これらのオリゴヌクレオチドを以下にリストしています。
1. 等量の 15 ヌクレオチド(分子量 4499)、20 ヌクレオチド(分子量 6020)、25 ヌクレオチド(分子量 7541)、30 ヌクレオチド(分子量 9062)、35 ヌクレオチド(分子量 10584)を含むオリゴヌクレオチドのデオキシチミジンヌクレオチド(dT)混合物を含む MassPREP オリゴヌクレオチド標準試料
2. Nitto Denko Avecia(マサチューセッツ州ミルフォード)によって合成された 25 mer のホスホロチオエート化アンチセンスオリゴヌクレオチド(分子量 7771)である遺伝子発現モジュレーター 91(GEM91)
3. Nitto Denko Avecia(マサチューセッツ州ミルフォード)によって合成された、2' メトキシキャップ付き 20 mer のホスホロチオエート化アンチセンスオリゴヌクレオチド(分子量 6600)である GEM 132
4. siRNA Pharmaceutials(マサチューセッツ州ケンブリッジ)の厚意で提供された N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)結合 siRNA オリゴヌクレオチド(分子量 8590)、および一本鎖 DNA(ssDNA)の 20 mer オリゴヌクレオチド(分子量 6122)
5. 5' 末端がパルミチン酸修飾され、ホスホロチオエート化骨格および末端メトキシエチル修飾を有する脂質結合 16 mer アンチセンスオリゴヌクレオチド(分子量 5726)(Biosearch Technologies、デンマーク、リストルプ)
評価した各オリゴヌクレオチドの血漿中および/または尿中濃度はそれぞれ 0.1 ~ 10 µg/mL および/または 0.01 ~ 1 pmol/ µL でした。OligoWorks SPE キットの開発および評価に使用する出発サンプル容量は 12.5 ~ 300 µL で、OligoWorks SPE マイクロプレートキットを使用する場合の最適な出発容量は 100 µL です。
サンプル前処理および SPE 抽出
OligoWorks SPE Kit Care and Use Manual(『OligoWorks SPE キット維持管理マニュアル』)(720008066)の記載に従って、オリゴヌクレオチドの生体サンプルのアリコートを 4 回繰り返しで前処理して Eppendorf 1 mL ディープウェルプレート(Eppendorf ディープウェルプレート - Eppendorf US)に添加し、OligoWorks SPE マイクロプレートキットに含まれている RapiZyme プロテイナーゼ K モジュールを使用して消化しました。このプロトコルを図 1 に示しています。使用した試薬の容量は、生体サンプルの出発容量 100 µL に対して最適化されています(注:出発サンプル容量 12.5 ~ 300 µL に推奨される試薬の容量は、OligoWorks SPE キット維持管理マニュアルに記載されています)。OligoWorks SPE キットに付属しているプロトコルの開発時に、RapiZyme プロテイナーゼ K で消化済みのサンプルを SPE マイクロプレートにロードする前に水で 1:1 希釈すると、一部のオリゴヌクレオチド(MassPREP OST および GalNac)において最大の回収率が得られることが判明しました。この 1:1 の消化後サンプル希釈により、陰イオン交換(AX)結合部位を競合してオリゴヌクレオチド結合のキャパシティーを制限する可能性のあるグアニジンの総濃度が減るため、この希釈を行うと、一部のオリゴヌクレオチドの回収率が向上します。
OligoWorks SPE 洗浄試薬(OligoWorks SPE キットには含まれません)
OligoWorks SPE 洗浄試薬 1(50 mM 酢酸アンモニウムバッファー、pH 5.5)は、3.84 g の酢酸アンモニウムを秤量し、容量を 1 リットルにして、pH を 5.5 に調整することにより調製しました。OligoWorks SPE 洗浄試薬 2(30% メタノール/70% 水溶液)は、300 mL のメタノールを 700 mL の水に加えて調製しました。
LC-MS 分析
イオン対逆相超高速高分離液体クロマトグラフィー(UPLC)分離、およびこれに続くタンデム/トリプル四重極質量分析計でのマルチプルリアクションモニタリング(MRM)を使用した質量分析(MS)検出をオリゴヌクレオチドの分析に用いました。ACQUITY Premier BEH 18 1.7 µm カラム(製品番号:186009452)を、OligoWorks SPE キット維持管理マニュアルに記載されている推奨のグラジエントおよび MS 条件で用いました。分析時間は 5 分でした。評価した各オリゴヌクレオチドの MRM MS トランジションを表 1 に示します。
結果および考察
過去 10 年間で、オリゴヌクレオチド医薬品の研究開発が大きく注目されるようになりました。その研究開発を支援するために、生体マトリックスからのオリゴヌクレオチドの正確かつ再現性のある LC-MS 定量に対する需要が高まっています。一方、高感度アッセイの開発には、多くのサンプル前処理および抽出の選択肢があり、所要時間、複雑さ、分析パフォーマンスがすべて異なるため、その開発は依然として困難です。このアプリケーションでは、OligoWorks SPE マイクロプレートキットを使用して、オリゴヌクレオチドのバイオアナリシスサンプルの前処理を簡素化および合理化しました。
OligoWorks SPE キットに付属するプロトコルの開発および最適化
OligoWorks キットの開発のために、複数の治療薬および生体マトリックスにわたってオリゴヌクレオチドの回収率を最大にすることを目標として、化学的に多様なさまざまなオリゴヌクレオチドを評価することにより、OligoWorks SPE キットに付属されているプロトコルが得られました。最適化の領域として、サンプル前処理および SPE プロトコルに焦点を当てました。生体マトリックスの一般的なサンプル前処理では、溶解バッファーまたは変性バッファーを使用します。私たちの場合、抽出効率に限界があるため、個々のオリゴヌクレオチドサンプルの前処理を最適化する必要がありました。さらに、サンプルを含む溶解バッファーのダウンストリームでの SPE 抽出では、LC-MS 分析の前に、サンプルに含まれるバッファーおよび界面活性剤を効果的に除去するために、追加の大容量溶媒での洗浄が必要でした。同時に、溶解バッファーを使用した場合、キャパシティーの制限のため、出発血漿サンプルのサンプルロード量が 25 µL 以下に制限されました。本質的に、このサンプル中の塩およびイオン性界面活性剤が、陰イオン交換保持においてオリゴヌクレオチドと競合し、結果としてロード時にオリゴヌクレオチドが失われ(ブレークスルー)、SPE での回収率が低下します。このような理由から、私たちのアプローチでは、プロテイナーゼ K によるサンプル前処理戦略に焦点を当てました。その理由は、この方法により、オリゴヌクレオチド-タンパク質結合がより均一に破壊でき、手間のかかる SPE 洗浄および低い出発サンプル容量(≤ 25 µL)の問題を解消できるためです。プロテイナーゼ K 消化によるサンプル前処理最適化の要素は以下の通りです:1.特異的消化試薬およびそれぞれの濃度、2.消化時間、3.オリゴヌクレオチド-タンパク質結合を完全に破壊する(オリゴヌクレオチドの回収率が最大になる)最大消化効率を得るのに必要な温度。図 2 のパネル A ~ D に、さまざまなオリゴヌクレオチドを含む出発血漿サンプル 100 µL を消化し、続いて LC-MS 分析を行った結果を示します。図 2A には、変性剤としてグアニジン、還元剤としてトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を使用して得られた最高のオリゴヌクレオチド回収率を示しており、GEM91、GEM132、GalNAc、脂質結合オリゴヌクレオチドについて回収率 87% 超(55 ℃ で 1 時間消化の場合)が得られています。ジチオスレイトール(DTT)でも同様のパフォーマンスが得られますが、室温の液体中での安定性から TCEP を選択しました。図 2B は、GEM91、GEM132、GalNAc オリゴヌクレオチドについて、2 倍量のプロテイナーゼ K 酵素溶液(20 mg/mL)を添加し、65 ℃ で 15 分間消化した場合のオリゴヌクレオチド回収率の向上(約 15%)を示しています。これらの結果は、それぞれ 25 µL と 50 µL のプロテイナーゼ K 試薬の添加に対応します。消化温度は、プロテイナーゼ K について一般的に報告されている消化温度である 45 ℃、50 ℃、55 ℃、65 ℃ を評価に選択しました。GEM91、GEM132、GalNAc、脂質結合オリゴヌクレオチドでの最適な消化温度(オリゴヌクレオチドの回収率が最大)は、55 ℃ でした。これは図 2C に示しています。消化時間の短縮の試みとして、消化温度 65 ℃ を評価しました(データは示していません)。65 ℃ では、オリゴヌクレオチドの回収率が高くなるとともに、アッセイ間およびアッセイ内の再現性が高くなりました。最後に、消化時間 1 時間により、スクリーニング対象のさまざまなオリゴヌクレオチドについて、回収率と再現性の最適なバランスが得られました。GEM91、GEM132、GalNAc、脂質結合オリゴヌクレオチドについてのこのパフォーマンスは、図 2D で浮き彫りになっています。
マイクロプレート WAX SPE プロトコルの最適化
プロテイナーゼ K 消化による前処理の最適化に続いて、以下のさまざまなマトリックス中で前処理したさまざまなオリゴヌクレオチドの、SPE での最大回収率の達成に焦点を当てました:1.ニート未消化(マトリックスなし) 50 mM 酢酸アンモニウム溶液(pH 5.5)、2.ニート(マトリックスなし)消化済みサンプル、3.消化済み血漿マトリックスサンプル、4.消化済み尿マトリックスサンプル。酢酸アンモニウム中に調製した MassPREP OST および GalNAc は、ニート消化済みサンプル(マトリックスなし)、血漿マトリックスサンプル、尿マトリックスサンプルより良好な SPE 回収率を示しました。フォローアップ調査およびプロトコルの変更を通して、SPE にロードする前に、プロテイナーゼ K 消化サンプルを水で 1:1 希釈することにより、MassPREP OST dT および GalNAc オリゴヌクレオチドの SPE 回収率が大幅に向上していました。この 1:1 サンプル希釈により、消化に使用したグアニジン試薬および尿マトリックス中に内在する塩に由来した全体的な塩濃度が減少しました。これらの塩は、SPE 吸着剤のイオン交換キャパシティーを制限し、サンプルロード時にオリゴヌクレオチドと陰イオン交換保持を競合するため、SPE の回収率が低下します。このキャパシティーの制限は、1 ウェルあたりの吸着剤ベッド質量が低い(2 mg)µElution プレートフォーマットを使用する場合に最も顕著に表れます。SPE へのサンプルロード前に消化済みサンプルを 1:1 希釈することによるパフォーマンスの向上が図 3 で実証されています。
より重要な側面の 1 つは溶離液の組成でした。当社の評価の大部分において、50 mM TEA 含有 50% メタノール溶液によって、さまざまなオリゴヌクレオチドについてルーチンに 70% を超える優れたオリゴヌクレオチド回収率が得られました。最適化を継続したところ、TEA 濃度の増加および NH4OH 溶液の添加により、オリゴヌクレオチドの回収率が 5 ~ 10% 向上することが判明しました。これらの理由から、0.3% NH4OH(v:v)組成を含む 100 mM TEA 含有 50% メタノール溶液を、OligoWorks SPE の最終的な溶離液として選択しました。消化済みの GEM91、GEM132、GalNAc、脂質結合オリゴヌクレオチドを含む尿サンプル 100 µL を使用し、RapiZyme プロテイナーゼ K モジュールと共にインキュベート(55 ℃ で 1 時間消化)することで最適な溶出が得られました。このパフォーマンスの向上を図 3B に示します。最後に、OligoWorks SPE マイクロプレートフォーマットを使用することで得られる主な利点を活用するために、溶出容量の評価を行いました。このフォーマットでは、分析種を完全に回収するのに必要な溶出容量が少なく(25 ~ 50 µL)、サンプルの蒸発乾固および再溶解が最小限に抑えられます。この溶出試験では、オリゴヌクレオチドの完全な溶出に必要なサンプルの溶出容量を最小限に抑え、LC-MS アッセイ感度を最大化することを最終目標として、計 50 µL および 100 µL の溶出容量での 1X SPE 溶出および 2X SPE 溶出のステップを用いました。この評価の結果を図 3C に示します。サンプル容量 1 × 50 µL での溶出に標準化した全体的な MS レスポンスの比較により、50 µL で溶出したサンプルのシグナルは 100 µL で溶出したサンプルのシグナルの 2 倍であり、溶出容量 50 µL でオリゴヌクレオチドが十分に抽出されていることが示されました。さらに、2X の溶出戦略によって最高の回収率が得られました。SPE 吸着剤デバイスには基本的なホールドアップ容量があるため、これは予想どおりの結果です。OligoWorks SPE マイクロプレートのホールドアップ容量は約 5 ~ 7 µL です。このホールドアップ容量には、溶出したオリゴヌクレオチドの数パーセントが含まれています。そのため、2 回目の溶出により、吸着剤ベッドからオリゴヌクレオチドを完全に溶出させることができ、サンプルのばらつきも減少します。
OligoWorks SPE マイクロプレートキットのパフォーマンス
OligoWorks マイクロプレートキットおよび最適化したプロトコルを用いたバイオアナリシスにおけるオリゴヌクレオチドの最終的な抽出パフォーマンス(回収率、再現性、マトリックス効果など)を検証するため、100 µL の尿および血漿から前述のオリゴヌクレオチドを抽出し(内部標準補正なしの生の面積カウントの評価)、続いて LC-MS で分析しました。図 4 および 5、ならびに表 2 および 3 に、オリゴヌクレオチドの回収率が高く、アッセイ内再現性の相対標準偏差(RSD)が 15% 以下で、マトリックス効果(ME)が少ないというパフォーマンスが示されています。オリゴヌクレオチド回収率が高いことで、アッセイの検出限界が改善され、前臨床試験やディスカバリー試験で一般的な低サンプル容量での使用が容易になります。マトリックス効果が小さいことは通常、アッセイの特異性を確保するためのサンプル抽出液の清浄度の指標であり、アッセイ間/アッセイ内 RSD 値が高いことは、分析アッセイ全体の再現性および精度が低いことを示します。オリゴヌクレオチドのアッセイ内パフォーマンスに加えて、2 人の分析者が異なる日に、計 3 バッチの RapiZyme プロテイナーゼ K 消化モジュールおよび 6 バッチの 96 ウェルマイクロプレートフォーマットの OligoWorks WAX SPE 吸着剤で分析することにより、キット間の再現性を評価しました。この評価では、100 µL の前処理済みオリゴヌクレオチド血漿サンプルを、OligoWorks マイクロプレートキットおよびプロトコルを使用して処理および抽出し、得られた溶出液を LC-MS で分析しました。図 6 に、この評価で得られた、オリゴヌクレオチドに関するキット内およびキット間でのパフォーマンスが頑健で再現性があること、RapiZyme プロテイナーゼ K 消化モジュール(A)および OligoWorks WAX SPE 吸着剤(B)により、高いオリゴヌクレオチド回収率および 5% 以下のアッセイ内 RSD およびバッチ再現性が得られていることを示しています。さらに、2 人の分析者により異なる日に得られた結果を比較したところ、オリゴヌクレオチド回収率の差はそれぞれの 15% 以内と算出されました(表 4)。
図 7 では、さまざまな容量の出発血漿(A)および尿(B)を使用して、OligoWorks SPE マイクロプレートキットの柔軟性が実証されています。出発血漿量 12.5 ~ 300 µL および尿量 25 ~ 200 µL を使用してオリゴヌクレオチドの生のレスポンス面積を評価したところ、GEM91 オリゴヌクレオチドの MS レスポンスが直線的に増加していることがわかり、マイクロプレート SPE フォーマットを使用した場合にキャパシティーを超えていないことが示されました。OligoWorks WAX SPE マイクロプレートキットと界面活性剤を使用しないワークフローのその他の利点として、溶出容量がわずか 25 µL であり、抽出したサンプルが MS に適合していることが挙げられます。これにより、サンプル濃度が高くなり、面倒な蒸発乾固や再溶解が不要になって、再溶解時の吸着や溶解度の問題によるオリゴヌクレオチドの損失の可能性が低減します。
溶出液がダイレクト LC-MS に適合していることの実証。GEM 91 オリゴヌクレオチドの直線的な LC-MS レスポンス、および注入量 12.5 ~ 300 µL でピークの歪みがないことが、それぞれ図 8 のパネル A および B に示されています。この分析用に、ACQUITY Premier UPLC™ システムに 30 µL のニードルおよび 50 µL の拡張ループを取り付けました。
図 6. OligoWorks キット SPE マイクロプレートキットのバッチ間パフォーマンス。96 ウェルマイクロプレートフォーマットでの 3 バッチの RapiZyme プロテイナーゼ K 消化モジュール(A)および 6 バッチの OligoWorks WAX SPE 吸着剤(B)を使用して、付属の出発プロトコル(55 ℃ で 1 時間消化)に従い、
出発血漿容量 100 µL からさまざまなオリゴヌクレオチド医薬品を抽出したところ、高い血漿回収パフォーマンス(内部標準補正なし)が得られ、アッセイ間 RSD およびアッセイ内 RSD は 15% 以内でした。
図 6. OligoWorks キット SPE マイクロプレートキットのバッチ間パフォーマンス。96 ウェルマイクロプレートフォーマットでの 3 バッチの RapiZyme プロテイナーゼ K 消化モジュール(A)および 6 バッチの OligoWorks WAX SPE 吸着剤(B)を使用して、付属の出発プロトコル(55 ℃ で 1 時間消化)に従い、
出発血漿容量 100 µL からさまざまなオリゴヌクレオチド医薬品を抽出したところ、高い血漿回収パフォーマンス(内部標準補正なし)が得られ、アッセイ間 RSD およびアッセイ内 RSD は 15% 以内でした。
結論
このアプリケーションでは、OligoWorks SPE マイクロプレートキットにより、非修飾、高度修飾、GalNAc、脂質結合治療薬などさまざまなオリゴヌクレオチド医薬品について、血漿および尿からの高い回収率(>80%)が達成され、キット間およびキット内、並びに日間およびユーザー間において優れた再現性(RSD 15% 以下)が得られることを実証しました。
720008086JA、2023 年 9 月