LC-QTof を使用した、ポストコンシューマーリサイクルプラスチックからの抽出物の確実な特性解析の新規戦略
要約
プラスチックは、私たちの現代生活のあらゆる面でいたるところに存在します。プラスチックを再生することで、天然資源を保護し、環境負荷を低減することができます。再生の成功とは、再生プラスチックが同等の未使用プラスチックと同等の特性を持つことを意味します。さらに、さまざまな消費者安全性要件に適合する必要があります。この試験では、液体クロマトグラフィーを高分解能飛行時間型質量分析と組み合わせて使用する探索ワークフローを適用して、ポストコンシューマーリサイクル(PCR)低密度ポリエチレン(LDPE)を分析しました。さまざまな再生 LDPE ロットに属するさまざまな LDPE サンプル中で重要なマーカー化合物が同定されました。
アプリケーションのメリット
- ポストコンシューマーリサイクル材料(PCR)のさまざまな質の判別
- Xevo™ G3 QTof テクノロジーによって得られる高分解能精密質量測定の力を活用して、再生 PCR の質と物性に関連する化合物を確実に同定
- プラスチック経済への再導入に向けて PCR 製品の安全性を調査するツール
- Xevo G3 QTof、MassLynx™、Progenesis™ QI を使用する、1 つに統合した効率的な装置およびソフトウェアソリューション
はじめに
製造されるプラスチックのほとんどは化石燃料から作られています[https://www.ciel.org/issue/fossil-fuels-plastic/]1。 プラスチックは、現代の私たちの生活に欠かせないものになっており、医療機器、家庭用工具、梱包材などに含まれています。その結果、家庭からの廃棄物の大部分がプラスチックになっています。化石燃料由来のプラスチックは、その特性により、使用後、何十年、あるいは何世紀にもわたってそのままの状態で残ります。そのため、使用期間が短い使い捨てプラスチックを何十年にもわたって使用した結果、地球規模の環境破壊が発生しました2。 [UN plastic general assembly https://www.un.org/pga/73/plastics/].
天然資源を保護し、プラスチックの製造と廃棄物が環境に及ぼす影響を低減するため、プラスチック廃棄物を貴重な資源と考える必要があります。再生することで、プラスチック製造の化石燃料への依存度が減り、できるだけ長く循環させることでプラスチック廃棄物問題に対処することができます。
ポストコンシューマーリサイクルプラスチック(PCR)の再導入または転用を成功させるには、その性能に影響し、消費者の安全性を脅かす可能性のある不純物を特定する必要があります。プラスチックのライフサイクルに由来する高レベルの汚染があると、プラスチックの使用が制限される可能性があります。したがって、生成した PCR の質をその物理的特性に関して調査するだけでなく、ユーザーの安全性を脅かす可能性のある有害な化学物質を特定し、その含有量を定量することが、再生業界の負担になります。安全性基準の厳しさは、その最終用途によって異なります。例えば、食品用器具・容器包装(FCM)は、再生プラスチックでできた屋外用家具と比較して、フタル酸エステル、ビスフェノール、鉱油の炭化水素などの化学物質に対する許容しきい値が非常に低いです。したがって、さまざまな PCR ロット中の不純物の検出および同定が可能な柔軟なワークフローが必要です。
探索ワークフローは、異なる条件の間における変化の特性解析に頻繁に使用される重要なバイアスのない分析アプローチです。システム生物学の研究で広く利用されており、最近ではプラスチックの食品包装材料からの移行物質の同定に適用されています[Martinez-Bueno et al.2019]3。 分析は通常、液体クロマトグラフィー(LC)またはガスクロマトグラフィー(GC)と高分解能質量分析(HRMS)を組み合わせて行います。
このアプリケーションノートでは、新規の戦略を用いて複数のロットの再生 LDPE(rLDPE)を分析しました。Xevo G3 QTof と組み合わせた ACQUITY™ Premier LC を使用して、複数のロットの rLDPE に由来する不揮発性の移動性化合物を分析しました。次に、Progenesis QI™ ソフトウェアを用いてデータを直接解析しました。rLDPE の性質の間に違いが見られ、さまざまな量の化合物に食品に接触する化合物データベース(FCCdb)[Groh et al. 2021]およびプラスチック包装に関連するケミカルのデータベース(CPPdb)[Groh et al 2019]を用いて注釈付けしました4-5。 注釈を付けた化合物は、市販の標準品を使用して同定および確認しました。
実験方法
サンプル前処理
以下の 4 グループのサンプルが、再生材料の業界サプライヤーから提供されました。未使用 LDPE(vLDPE)、添加剤含有未使用 LDPE(vLDPE+)、質の悪い再生 LDPE(質の悪い rLDPE)、および質の良い再生 LDPE(質の良い rLDPE)。異なるグループから得た抽出物を次のように調製しました。まず 15 g のペレットまたは 2.5 g のフラフを、100 mL のメタノールに浸漬しました。抽出は、マグネティックスターラーで撹拌しながら、40 ℃ で 1 時間行いました。溶媒の蒸発を防ぐため、容器は閉じたままにしました。次に、メタノールを回収し、0.45 ミクロンの PVDF フィルターでろ過しました。
未使用プラスチックペレットと異なる品質の rLDPE からの抽出物を前処理した後、各抽出物 100 µL を混合して、品質管理サンプル(QC)を調製しました。次に、サンプルと QC を、逆相クロマトグラフィー、続いて高分解能質量分析で分析しました。各サンプルは 2 回注入しました。注入順序はランダムで、5 回ずつのサンプル注入の間、およびシーケンスの開始時と終了時に QC を注入しました。
LC-MS 条件
LC システム: |
Waters™ ACQUITY Premier 液体クロマトグラフィーシステム |
バイアル: |
LC-MS 品質証明透明バイアル(製品番号: 600000671CV) |
カラム: |
CORTECS™ C18 1.6 μm、2.1 × 100 mm、90 Å カラム(製品番号:186007095) |
カラム温度: |
50 ℃ |
サンプル温度: |
6 ℃ |
注入量: |
5 µL |
流量: |
0.3 mL/分 |
移動相 A: |
H2O + 0.1% 酢酸(v/v) |
移動相 B: |
100% メタノール混合時 |
グラジエントテーブル
MS 条件
MS システム: |
Xevo G3 QTof |
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ソース条件: |
脱溶媒温度:600 ℃ 脱溶媒ガス流量(L/時間):600 ソース温度:150 ℃ コーンガス流量(L/時間):150 ソースオフセット:80 サンプリングコーン:30 |
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キャピラリー電圧: |
1 kV |
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イオン化モード: |
ESI +/- |
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質量範囲: |
m/z 50 ~ 1200 |
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取り込み速度: |
5 スペクトル/秒(Hz) |
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ロックマス: |
ロイシンエンケファリン(ポジティブモードおよびネガティブモードでそれぞれ m/z 556.276 および m/z 554.262)。取り込んだロックマススペクトル |
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取り込みモード: |
High Definition MSE(HDMSE)データインディペンデント取得メソッド |
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コリジョンエネルギー: |
低コリジョンエネルギー:0 高コリジョンエネルギー:ランプ(ポジティブモードおよびネガティブモードでそれぞれ 20 ~ 40 eV/20 ~ 50 eV)。 |
ソフトウェアツール
データ取り込みは MassLynx™ v4.2 を使用して行い、統計解析は Progenesis™ QI 3.0.7929.47290 を使用して行いました
結果および考察
探索ワークフローについては、システム生物学に詳しく記載しています。同様のアプローチをさまざまなポストコンシューマーリサイクルプラスチック(PCR)の特性解析に適用しました[Broadhurst et al., 2018]6。 簡単に説明すると、サンプルと QC を LC-MS で分析し、取り込んだ生データを Progenesis QI で解析しました。ピークピッキングは、付加イオンが存在する場合、検出されたイオンをデコンボリューションして 1 つの化合物にグループ化することで行いました。ポジティブモードでは、プロトン化イオンとナトリウム化分子イオンを 1 つの化合物としてグループ化しました。ネガティブモードのイオン化では、脱プロトン化した酢酸付加イオンを 1 つの化合物としてグループ化しました。質量と保持時間のアライメントステップの後、データをすべての化合物に対して正規化しました。
33 回の注入のうち、13816 化合物がポジティブモードで、7955 化合物がネガティブモードで、それぞれ検出されました。多変量解析により、ノイズを除去し、p 値 0.05 以下の化合物にリストを絞り込むことができました(図 1)。
候補化合物のリストをさらに絞り込むため、品質管理注入(QC)で変動係数(CV)が 30% 以上である検出化合物を除外しました。その結果、化合物リストがポジティブモードおよびネガティブモードでそれぞれ 5050 および 5754 に減りました(図 1)。最後に、私たちは、未使用ペレット抽出物と比較して 10 倍を超える変動(FC)を示した化合物のリストを保持しています[Martinez-Bueno et al.2019] 3。 化合物のこの最終的なリストを、これ以降のすべての統計分析で使用します。
分析したサンプル間の関係を調査するため、サンプル間の関係の可視化に役立つノンパラメトリックなアプローチである主成分分析(PCA)を行いました(図 2)。
図 2 に、データ内の最大のバリエーションが含まれる第 1 および第 2 の PCA 成分の散布図を示します。成分 1 と 2 はそれぞれ、ポジティブモードで 44.39% と 21.87%、ネガティブモードで 41.17% と 20.86% です。
ポジティブモードとネガティブモード(図 2A および 2B)のどちらでも、QC 注入では密なクラスターが形成されています。結果として、観察されたサンプルのグループ化クラスターはいずれも、ランダムなイベントではなく、サンプル間で類似しているためと解釈できます。
いずれのイオン化モードでも、未使用ペレット(vLDPE)と添加剤含有未使用ペレット(vLDPE+)は、2 つの同様の群を形成します(図 2A および 2B)。実際、これら 2 サンプルは、後者のいくつかの添加剤以外、非常に似ています。ポジティブモードでは、添加剤によって 2 つの群がかろうじて区別されます(図 2A)。しかし、vLDPE と vLDPE+ は、ポジティブモードとネガティブモードのイオン化で、はっきり判別されません。一方、vLDPE(添加剤ありまたはなし)と、質の良い rLDPE と質の悪い rLDPE の間には明確な違いがあります(図 2A および 2B)。サブグループ間の違いは、ポジティブモードのイオン化でより顕著で、質の悪い rLDPE 抽出物が質の良い rLDPE 抽出物から容易に区別されました(図 2A)。ネガティブモードのデータはより分散しており、質の悪い rLDPE と良い rLDPE がはっきり判別できません。したがって、ポジティブモードで検出された化合物の方が、rLDPE 抽出物の 2 つのグループを相互に分ける、そしてこれらを未使用ペレットから分けるのにより重要です。
各群で重要なマーカー化合物を同定するため、ポジティブモードで検出された 2318 化合物について相関分析を行いました。相関分析は、存在量の傾向が似ている異なる化合物群が見つかります。図 3 のデンドログラムに、ポジティブモードで検出されたさまざまな化合物が示されています。ツリーのそれぞれの枝は、存在量の傾向が似ている化合物群に対応します(図 3、上のパネル)。y 軸はツリーの枝の間の距離に対応します。距離の値が小さいほど、化合物間の相関が強いことを示します。図にはしきい値 1 と示されています。矢印は、0.85 未満という強い相関値を持つ 2 つの化合物の枝を指しています。選択した 2 つの化合物の枝は、同様の存在量プロファイルを示します(図 3 下のパネル)。これらの化合物は、質の悪い rLDPE に固有の化合物、または非常に存在量が多い化合物です。これらの化合物は、QC サンプルでも検出されますが、QC サンプル調製時の希釈係数のために低存在量です。
質の良い rLDPE 抽出物と質の悪い rLDPE 抽出物を vLDPE と比較すると、質の悪い rLDPE 抽出物には、vLDPE と比較して、457 化合物が 10 倍以上多く含まれていました。さらに、814 化合物は、質の良い rLDPE 抽出物と質の悪い rLDPE 抽出物の間で、存在量が大きく異なります。
Progenesis により、すべての注釈付き化合物のピークピッキングプロセスを迅速にバリデーションすることができます。図 4 に、9.89 分に検出された m/z 441.2978 の例を示します。このイオンは、[M+H]+ および [M+Na]+ の化合物クラスターの一部です。m/z 441.2978 は、[M+Na]+に対応します(図 4)。
図 4 に、Progenesis QI からの化合物のレビューを示します。上のパネルは、保持時間に対する m/z のヒートマップを示します(図 4A)。青色のボックスは、対象化合物のイオンクラスターを囲んでいます。右下のパネル(図 4B)は、4 サンプルグループを 24 回注入して得られた抽出イオンクロマトグラム(EIC)です。注入間の再現性と、サンプルグループ間での存在量の違いがわかります。質の悪い rLDPE 抽出物サンプル(濃いオレンジ色のトレース)の存在量が最も多く、品質管理サンプル(薄いオレンジ色のトレース)、質の良い rLDPE 抽出物(緑色のトレース)がそれに続きます。添加剤なしの未使用ペレット(青色のトレース)、または添加剤含有の未使用ペレット(紫色のトレース)では、m/z 441.2978 の存在量が極めて低いか、まったく存在しません。左下のパネルは、24 回の注入のマススペクトルの重ね描きです(図 4C)。ここで、この分子イオンのピークピッキングと保持時間のアライメントは正しいと結論付けることができます。
これらのシグネチャー化合物を特定する試みでは、次の 2 つの関連するデータベースを使用しました:Food Contact Chemicals(食品接触化合物)(FCCdb、3237 エントリー)および Chemicals associated with Plastic Packaging(プラスチック包装関連化合物)(CPPdb、7149 エントリー)[それぞれ Groh et al.2021 および Groh et al.2019 により作成]4-5。 両データベースでは、共通の化合物が 2353 件あります。化合物の注釈は、精密質量情報、同位体の類似性およびフラグメントイオンの情報(存在する場合)に基づいています。実験的フラグメンテーションスペクトルがデータベースにない化合物の場合、Progenesis QI は化学構造に基づいて理論的フラグメンテーションを行い、MSE で測定された実験的フラグメントと比較しました。化合物の注釈が許容されるのは、プリカーサーイオンの精密質量が ± 10 ppm 以内、フラグメントイオンの精密質量が ±20 ppm 以内に収まる場合です。対象化合物の保持時間とフラグメンテーションスペクトルが、対応する純粋な化合物標準試料と同じである場合に、信頼性の高い化合物同定と考えられます[Schymanski et al。2015]。7。
合計で、質の悪い rLDPE 抽出物に豊富に含まれる 457 化合物のうち 33 化合物に注釈が付けられ、質の良い rLDPE 抽出物と質の悪い rLDPE 抽出物とで存在量が異なる 814 化合物のうち 57 化合物に注釈が付けられました。上位には、フタル酸ジノニル/フタル酸ジイソノニル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ビス(2-プロピルヘプチル)、フタル酸ジデシル/フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ-n-オクチル、モノステアリン酸グリセリンなどのさまざまなフタル酸が来ていました。
図 5 に、9.89 分に検出された m/z 441.2978 の、精密質量およびフラグメンテーション(MSE で生成され、理論的フラグメントと比較)に基づく注釈の例を示します。
m/z 441.2978 は、質量精度 ±0.56 ppm で C24H38O4 のナトリウム付加イオンに対応します。この化合物は、提案されている 4 つの異性体のいずれかである可能性があります。MSE によって得られたフラグメントは、in silico フラグメンテーションパターンと比較して注釈が付けられており、図 5 に赤色の矢印で示しています。これらのフラグメントは、提案されたフタル酸の 4 種類の異性体に共通しています。フタル酸オクチルデシルは、最も高いフラグメンテーションスコアを示します(図 5)。その他の存在量が多いフラグメントが見られます。MSE 実験により、他の共溶出化合物のフラグメントが生成していることが注目されます。これらの非常に存在量の多いフラグメントは m/z 441.2978 と関連しておらず、共溶出する化合物の [M+H]+ イオンに対応している可能性が非常に高いです。注釈付きフラグメントの存在量が少ないのは、安定な [M+Na]+ のフラグメンテーションが困難なためである可能性があります。実際、[M+Na]+ 分子イオンをフラグメンテーションするには、より高いコリジョンエネルギーが必要になることが知られています。
レベル 1 の同定は、化合物の標準試料とサンプルの保持時間とフラグメンテーションパターンを比較することによって得られます[Schymanski et al 2015]7。 m/z 441.2978 の実際のアイデンティティーを明らかにするために、フタル酸ジイソノニル(DINP)の純粋な化合物標準試料と LDPE サンプルを、同じクロマトグラフィーメソッドを使用して分析し、続いてターゲット MS/MS 実験を行いました。
m/z 441.2978 のターゲット MS/MS 実験での四重極分離により、他の共溶出イオンを排除し、対象の分離イオン(+/- 1 Da)をフラグメンテーションすることができます。この MS/MS 実験により、サンプルと純粋な標準試料を注入することで、m/z 441.2978 の質量のフラグメンテーションパターンデータの比較が可能になりました。
DINP は、[M+H]+ および[M+Na]+ として、9.8 分の m/z 419.3161 および m/z 441.2981 として検出されました。図 6 は、さまざまなサンプルおよび 1 µg/mL の DINP の注入において、EIC m/z 441.298 に対応します。
以前に示したように、m/z 441.298 は主に質の悪い rLDPE 抽出物で検出され、質の良い rLDPE 抽出物では少量、vLDPE 抽出物(添加剤ありまたはなし)では微量検出されます。さまざまなサンプルにおいて DINP の保持時間は m/z 441.298 と同じです(図 6)。ナトリウム付加イオンを正常にフラグメンテーションするために、より高いコリジョンエネルギー(25 ~ 90 eV)を使用しました。それにもかかわらず、コリジョンエネルギーを 90 eV まで上げても、m/z 441.2956 が最も存在量の多いピークであることに変わりありません(図 7)。
標準試料と質の悪い rLDPE 抽出物からの m/z 441 のフラグメンテーションパターンは非常に似ています(図 7)。質の悪い rLDPE 抽出物では m/z 171.0106 は見られません。これは、サンプル中のプリカーサーイオンの実際の濃度(標準試料中の濃度(1 µg/mL)と比較)に起因する可能性があります。ただし、フタル酸エステルのシグネチャーフラグメント m/z 149.0283 が、[M+H]+ フラグメンテーションスペクトル中に見られました(データは示していない)。予想どおり、DINP のナトリウム付加イオンは非常に安定しています。安定な構造を壊すには、最大 90 eV のコリジョンエネルギーが必要でした。したがって、フラグメントが生成する場合、それらはナトリウム付加イオンとして検出されます。図 7 の構造は、フラグメントの特性から示唆されたものです。
ここでは、化合物の標準試料を使用し、プロトン化付加物とナトリウム化付加物の保持時間とフラグメンテーションパターンを比較することにより、m/z 419.3161 および m/z 441.2981 に検出された化合物が確実に DINP と同定されました。同じアプローチを適用することにより、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソブチル(DIBP)、フタル酸ジ-n-オクチル(DNOP)、オレアミドなどのいくつかの化合物がさらに同定されました。
結論
このアプリケーションノートでは、Xevo G3 QTof 高分解能質量分析と組み合わせた ACQUITY Premier LC およびソフトウェアツールを使用する新規分析アプローチを用いて、rLDPE の質を判別しました。
複数ロットの移動性化合物を分析することにより、少なくとも 4 つの重要なマーカー化合物がポジティブ ESI モードで同定されました。このマーカー化合物を使用して、質の悪い rLDPE と質の良い rLDPE を判別することができます。さらに、このメソッドは、タンデム質量分析を使用するこれらの化合物の絶対定量に簡単に移管することができます。
参考文献
- Center for International Environnemental Law (https://www.ciel.org/issue/fossil-fuels-plastic/ ).
- UN plastic general assembly (https://www.un.org/pga/73/plastics/ ).
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- K. J. Groh, B. Geueke, O. Martin, M. Maffini, J. Muncke.Overview of Intentionally Used Food Contact Chemicals and Their Hazards. Environ.Int.150:106225 (2021).
- K. J. Groh, T. Backhaus, B. Carney-Almroth, B. Geueke, P. A. Inostroza, A. Lennquist, H. A. Leslie, M. Maffini, D. Slunge, L. Trasande, A. M Warhurst, J. Muncke.Overview of Known Plastic Packaging-Associated Chemicals and Their Hazards. Science of the Total Environment.651: 3253–3268 (2019).
- D. Broadhurst, R. Goodacre, S. N. Reinke, J. Kuligowski, I. D. Wilson, M. R. Lewis, and W. B. Dunn.Guidelines and Considerations for the Use of System Suitability and Quality Control Samples in Mass Spectrometry Assays Applied in Untargeted Clinical Metabolomic Studies.Metabolomics.14: 72–89 (2018).
- E. L. Schymanski, H. P. Singer, J. Slobodnik, I. M. Ipolyi, P. Oswald, M. Krauss, T. Schulze, P. Haglund, T. Letzel, S. Grosse, N. S. Thomaidis, A. Bletsou, C. Zwiener, M. Ibáñez, T. Portolés, R. de Boer, M. J. Reid, M. Onghena, U. Kunkel, W. Schulz, A. Guillon, N. Noyon, G. Leroy, P. Bados, S. Bogialli, D. Stipaničev, P. Rostkowski, J. Hollender.Non-target Screening With High-Resolution Mass Spectrometry: Critical Review Using a Collaborative Trial on Water Analysis.Analytical and Bioanalytical Chemistry 407:6237–6255 (2015).
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720007837JA、2023 年 1 月