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ACQUITY Premier を搭載した BioAccord LC-MS システムを用いた、微生物培養培地中の栄養成分および代謝物のモニタリング

ACQUITY Premier を搭載した BioAccord LC-MS システムを用いた、微生物培養培地中の栄養成分および代謝物のモニタリング

  • Yun Wang Alelyunas
  • Mark Wrona
  • Ying Qing Yu
  • Waters Corporation

要約

微生物ベースの発酵には、哺乳類細胞培養システムと同様に、微生物の増殖および維持と高品質のタンパク質産生のための培地が必要です1。 このテクノロジーブリーフでは、細胞培養培地の分析用に、BioAccord LC-MS システムを用いて開発した液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)分析法およびワークフローを使用した、微生物ベースのバイオプロセスのための増殖培地の栄養成分および代謝物のモニタリングについて説明しています。分析法パッケージには、包括的な逆相 LC-MS 分析法、200 を超える化合物のライブラリー、トレンドプロットなどのデータレビューのためのシンプルで段階的なワークフロー、未知成分のスクリーニングのためのツール一式、多変量データ解析ツール、レポートテンプレートが含まれています。この培地モニタリングは、BioAccord LC-MS システムで提供している製品品質分析(インタクトプロテイン分析、マルチ特性分析法を含むペプチドマッピングおよびモニタリング、遊離糖鎖解析、オリゴヌクレオチド質量確認など)を補足するものです。

アプリケーションのメリット

  • BioAccord LC-MS システム、High Performance Surfaces(HPS)テクノロジー、waters_connect インフォマティクスを使用した専用ワークフローで、微生物増殖培地の特性を直接測定することで、培地の開発およびモニタリングを加速化
  • 培地および製品品質特性モニタリング(インタクトプロテイン分析、ペプチド MAM、遊離糖鎖、オリゴヌクレオチド質量確認など)に対応する単一の LC-MS プラットホーム上でプロセス情報の取り込みおよび製品品質の結果を得ることで、意思決定が可能に

はじめに

バイオプロセス開発において、E. coli などの微生物が、タンパク質の発現および精製、ベクター構築および遺伝子合成の宿主として開発されてきました2。 微生物の増殖培地は、微生物の増殖および維持およびタンパク質産生に使用されます。通常酵母エキスで調製される培地は、アミノ酸、水溶性ビタミン、炭水化物、ペプチド、グリセロール、およびその他の化合物などの栄養素を豊富に含んでいます。これらの検出には包括的な分析法が望まれます。

このテクノロジーブリーフでは、細胞培養培地の分析のために、BioAccord LC-MS システムを用いて開発された、LC-MS 分析法およびワークフロー3を使用した、微生物増殖培地の分析を実証しています。スキーム 1 は BioAccord LC-MS 分析法およびワークフローのフローチャートです。これには、逆相 LC 分離、HRMS データ取り込み、200 を超える化合物からなるライブラリー、データレビューを簡単にするためのガイド付きワークフロー、バッチ分析用の多変量データ解析が含まれています。このテクノロジーブリーフでは、2 つの一般的に使用されている微生物培地調製物を入手し、分析しました。主要成分を同定し、比較しました。 

スキーム 1.  培地分析に用いる BioAccord/waters_connect ベースのワークフローの概略図(ウォーターズアプリケーションノート 3 から引用)

結果および考察

液体微生物増殖培地である LB ブロス(Miller)および Terrific ブロスは MilliporeSigma(米国ミズーリ州セントルイス)から購入しました。各ブロスを水で 1:100(V:V)希釈しました。ウォーターズアプリケーションノートに記載されているように、データ取り込みは ACQUITY Premier テクノロジーを備えた BioAccord LC-MS システムで実施しました2。 低分子の質量範囲 m/z 50 ~ 800 およびダイナミックロックマス補正を使用しました。注入量は 2 µL としました。

サンプルは、逆相条件で、ACQUITY Premier HSS T3 カラム(1.8 mm、2.1 × 150 mm、製品番号:186009469)を使用して分析しました。200 を超える化合物のライブラリーをインポートして化合物の分析および検出を行いました。正イオン化および負イオン化をそれぞれ使用して、Terrific ブロス培地サンプルについて検出された化合物の重ね描きクロマトグラムを図 1 に示します。結果から、Terrific ブロス培地サンプル中に 90 を超える化合物が検出されることがわかりました。これには、アミノ酸およびその誘導体、ビタミン、核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、有機酸、ペプチドフラグメント、およびその他の多くの化合物を含むライブラリーの化合物群が含まれていました。最も存在量が多い化合物は、図 1A の重ね描きクロマトグラムに示されているように、一連のアミノ酸でした。

図 1.  Terrific ブロス培地の重ね描きクロマトグラム。(A)ESI+ 取り込みモード。(B)ESI- 取り込みモード。ESI- イオン化で標識されない化合物も、ESI+ 取り込みモードでは通常検出されました。

LB ブロス培地でも同様の化合物が検出され、最も存在量の多い化合物はアミノ酸でした。Terrific ブロスおよび LB ブロス培地中に検出された上位 50 種の化合物のまとめを図 2 に示します。結果から、一般的に Terrific ブロスの方が LB ブロスよりも濃度が高いことが示されました。

図 2.  Terrific ブロス培地と LB ブロスのレスポンスの比較。青色のバー:Terrific ブロス。オレンジ色のバー:LB ブロス。

Terrific ブロス培地溶液の 6 回繰り返し注入に基づいて、LC-MS 検出の再現性データを収集しました。上位 50 種の化合物の、レスポンス、保持時間、質量誤差に関するデータを表 1 にまとめています。結果から、レスポンス < 5 %RSD、保持時間 < 0.2 %RSD、質量誤差 < 5 ppm と、再現性が優れていることが示されました。また、結果から、この再現性は頑健で、レスポンス範囲の高低、保持時間の長短、測定質量値の高低に左右されないことが示されました。このデータから、細胞培養培地用に以前に開発された分析法を、微生物ベースの発酵で使用する増殖培地の化合物モニタリングにすぐに使用できることが実証されました。

表 1. 6 回の繰り返し注入に基づく、Terrific ブロス微生物培地で観察された上位 50 種の化合物の再現性データのサマリー

結論

BioAccord LC-MS システムおよび waters_connect インフォマティクスプラットホームに基づくワークフローを採用して、微生物増殖培地中の化合物の分析を行いました。ワークフローに含まれる化合物ライブラリーに基づき、市販の微生物増殖培地中に 90 を超える化合物が検出されました。このシステムでは、レスポンス範囲、保持時間、質量範囲全体に関して優れた再現性が得られました。BioAccord LC-MS システムでは、簡単に展開でき、操作が簡単で、長期的に安定した性能が得られます。そのため、LC-MS の経験が乏しいバイオプロセスエンジニアでも、迅速かつ簡単に大量のサンプルを分析し、解析することができます。この BioAccord LC-MS システムを使用して構築されたワークフローは、微生物ベースのバイオプロセス開発における培地モニタリングにすぐに展開することができます。

参考文献

  1. Ladage K, Choosing the Right Expression Platform for Biologics, Pharma’s Almanac.Oct 28, 2019.
  2. Baeshen MN, Al-Hejin AM, et al.Production of Biopharmaceuticals in E. coli: Current Scenario and Future Perspectives.J Microbiol Biotechnol.2015 Jul; 25(7):953–62.
  3. Alelyunas YW, Wrona MD, Chen W, Monitoring Nutrients and Metabolites in Spent Cell Culture Media for Bioprocess Development Using the BioAccord LC-MS System with ACQUITY Premier, Waters Application Note, 720007359, 2021.

720007485JA、2022 年 1 月

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