• アプリケーションノート

ラボ間試験を用いた、魚中のペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)の分析のためのトータルワークフローアプローチの性能評価

ラボ間試験を用いた、魚中のペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)の分析のためのトータルワークフローアプローチの性能評価

  • Stuart Adams
  • Kari L. Organtini
  • Hannah Willmer
  • David Gould
  • Joanne Williams
  • Peter Hancock
  • Waters Corporation

要約

Waters™ は以前、包括的なサンプル抽出およびクリーンアップが必要な魚、肉、可食内臓、卵などの複雑な食品中に含まれるペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)を測定する分析法を開発しました。このアプリケーションブリーフでは、複数のラボ間での試験で分析法の性能を評価した結果を示します。この分析法は、アルカリ抽出、PFAS 分析用 Oasis™ WAX 固相抽出(SPE)カートリッジを使用したサンプルクリーンアップ、および PFAS 分析キット、アイソレーターカラムと Xevo™ TQ-XS タンデム四重極質量分析計を備えた ACQUITY™ UPLC™ システムを使用した測定に基づいています。PFHxS、PFOS、PFOA、PFNA を含む魚のレファレンス物質を、ネイティブ PFAS 化合物と同位体標識アナログが含まれている標準溶液と共に、7 つのウォーターズのラボに送付しました。4 種類の PFAS を分析した結果、分析法の真度は 102 ~ 121% の範囲内と判定されました。ラボ内再現性は 20% 未満、ラボ間再現性は 30% 以下でした。

アプリケーションのメリット

  • ラボ間試験により、選択的クリーンアップを用いる単回抽出分析法を使用して、独立に調製された QC 物質から、PFAS について正確な結果が得られることが示されました
  • µg/Kg 以下のレベルの PFAS が測定できて規制限界遵守のモニタリングに適しており、リスク評価のためのデータを提供できる高感度の分析

はじめに

ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)が人の健康に及ぼす長期的な影響に対する懸念が強まっていることから、世界中の多くの機関が、食品中の PFAS の存在について調査してきました。欧州食品安全機関(EFSA)が公表した報告では、2007 ~ 2018 年の研究期間中に、食事を通じた人の PFAS に対する暴露において最も寄与の大きい食品の 1 つとして、特に魚が特定されました1。 最近、欧州委員会は、委員会勧告(EU) 2022/1431 に、さまざまな食品における PFAS のモニタリングおよび指標レベルに対して健康勧告値を導入し、さまざまな魚肉および陸上動物の肉中の PFAS の分析法の LOQ を 0.1 µg/Kg に設定しました2。 委員会実施規則 (EU) 2022/1428 に、求める分析法の性能の詳細が記載されており、これに関する追加情報が、飼料および食品中のハロゲン化残留性有機汚染物質の分析に専門的に携わる欧州連合基準試験所(EURL-POPs)によって発表され、PFHxS、PFOS、PFOA、PFNA が分析法要件に主要化合物として記載されています3,4。 このガイダンス文書の分析法では、魚肉の LOQ が 0.1 µg/Kg と記載されています。当社は、魚およびその他の動物製品に含まれる、記載されている 4 種類の PFAS の主成分と追加の 26 種類の PFAS 関連化学物質に対する、この要求されている LOQ を満たす分析法の性能について以前に報告しています5

今回、EURL-POPs で定義されている基準に従って、ラボ間試験の結果を使用して、この分析法の性能を評価しました。使用した分析法は、簡単に説明すると、アルカリ性下でのメタノール抽出であり、続いて PFAS 分析用 Oasis WAX 固相抽出(SPE)カートリッジを使用してサンプルをクリーンアップし、Xevo TQ-XS タンデム四重極質量分析計と組み合わせ、ACQUITY BEH C18 カラムを装着した ACQUITY UPLC I-Class PLUS システムを使用して測定しました。ラボでは合計 30 種類の PFAS 化合物(付録 I を参照)を分析し、PFAS のデータに FAPAS の魚の QC 物質(PFHxS、PFOS、PFOA、PFNA)の値を割り当てて報告しました。

結果および考察

7 つのラボ(2 つは米国、3 つは英国、1 つはドイツ、1 つはシンガポール)に、以下のものを提供しました:

  • 対象分析種および内部標準のリスト、装置の構成、分析法、使用するパラメーター、ガイダンス文書、分析シーケンスを含む分析プロトコル。これは以前に公表したアプリケーションからのものです5
  • FAPAS の魚の QC 物質(T0696QC)および FAPAS の魚のブランク物質(T0696b)。
  • Wellington Laboratories から提供されたネイティブおよび同位体標識の PFAS ストック溶液。

それぞれのラボにクロマトグラフィー分析法が正常に導入され、始めから終わりまで、極性 PFAS のほとんどで十分な保持が得られ、クロマトグラフィーピーク形状がガウス分布で、安定した保持時間が見られました。参加ラボにおいて、以前に公表されたアプリケーションノートで報告されている分析法の LOD を達成することにより、分析法の感度が実証されました5。 クロマトグラムから分かるように、この分析法では、FAPAS の魚の QC 物質中の PFAS を十分な S/N 比で容易に検出することができました(図 1)。 

図 1.  FAPAS の魚の QC 物質中に定量された PFHxS(0.58 µg/Kg)、PFOS(直鎖型および分岐型が 4.55 µg/Kg)、PFOA(1.47 µg/Kg)、PFNA(0.53 µg/Kg)のクロマトグラム(括弧内は割り当てられた濃度)

使用したキャリブレーション法は、以前のアプリケーションノートで概説したとおりであり、ネイティブおよび標識 PFAS 分析種の両方を含む(適切な濃度範囲)溶媒キャリブレーション標準試料を使用して、サンプルの抽出物をブラケットしました。キャリブレーショングラフは、4 種類の PFAS 分析種について、二次曲線の場合も直線の場合もあり、ほとんどのラボで、r2 値は 0.99 を超え、残差は ±20% 以内でした。図 2 に、ラボ 7 で得られた、FAPAS の魚の QC 物質中に存在する PFHxS、PFOS、PFOA、PFNA 化合物についてのキャリブレーショングラフを示します。 

図 2.  PFHxS、PFOS(直鎖型)、PFOA、PFNA のキャリブレーショングラフ(µg/Kg)

FAPAS の魚の QC 物質中の 4 種類の PFAS 化合物の定量において、正確さが良好であることが実証されました(表 1)。ただし、ラボ 3 では、4 種類の PFAS 化合物の値が上限値から外れており、システムエラーがあったことが示唆されます。ラボ 3 の結果は、予想される分析法の性能を正確に反映させるために、全体的な分析法の性能の計算(表 1 および図 3)に含めました。4 種類の PFAS 化合物についての真度は 102 ~ 121%、各ラボの室内併行精度(RSDr)は 12 ~ 16%、室間再現精度(RSDRL)の値は 25 ~ 30% でした。いずれの場合も、FAPAS の魚の QC 物質の分析で得られたイオン比と保持時間は、PFAS 分析の EURL-POPs ガイダンス文書で設定された基準を満たしていました。FAPAS の魚のブランクサンプル(T0696b)からは、PFHxS、PFOS、PFOA、PFNA の残留は検出されませんでした。

表 1.  7 つの参加ラボによる FPAS QC 物質 T0696QC の分析結果
図 3.  7 つの参加ラボによる FPAS の魚の QC 物質 T0696QC の分析結果

結論

ラボ間試験を用いて、魚の組織に含まれる PFOA、PFNA、PFHxS、PFOS を測定する分析法の性能を調査しました。各ラボでは、PFAS キット取り付けガイドを使用して分析法(ACQUITY UPLC PFAS キットの取り付けを含む)が正常に導入され、分析法の性能と感度が十分であることが実証されました。参加ラボでは、FAPAS QC 物質に含まれる 4 種類の PFAS 化合物の定量において、正確さが良好であることが実証されました。PFHxS、PFOS、PFOA、PFNA についての真度は 102 ~ 121%、各ラボの室内併行精度の値はすべて 20% を下回り、室間再現精度はすべて 30% 以内でした。本研究により、ウォーターズが以前に公開したアプリケーションが、魚の PFAS 汚染の評価に適しており、食品中の PFAS レベルがより厳しく規制されるようになった場合のコンプライアンス試験に適していることが確認されました5

参考文献

  1. Schrenk D, Bignami M, et al.EFSA Panel on Contaminants in the Food Chain (EFSA CONTAM Panel), Risk to Human Health Related to the Presence of Perfluoroalkyl Substances in Food.EFS2.2020;18(9).
  2. Commission Recommendation (EU) 2022/1431 of 24 August on the monitoring of perfluoroalkyl substances in food, Official Journal of the European Union, L 221, 65, 105–109.
  3. Commission Implementing Regulation (EU) 2022/1428 of 24 August 2022 laying down methods of sampling and analysis for the control of perfluoroalkyl substances in certain foodstuffs, Official Journal of the European Union, L 221, 65, 66–73.
  4. EURL for halogenated POPs in feed and food (2022): Guidance Document on Analytical Parameters for the Determination of Per- and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS) in Food and Fee, version 1.2 of 11 May 2022.Available online under https://eurl-pops.eu/core-working-groups#_pfas.
  5. Orantini K, Hird S, Adams S, Jandova R, Total Workflow for the Sensitive Analysis of Per- and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS) in Fish, Meat, Edible Offal, and Eggs.Waters Application Note, 720007482, 2022.

APPENDIX I

720007830JA、2022 年 12 月

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