• アプリケーションノート

Otto SPEcialist を用いたヒト血清および血漿からの PFAS の半自動抽出

Otto SPEcialist を用いたヒト血清および血漿からの PFAS の半自動抽出

  • Kari L. Organtini
  • Waters Corporation

要約

ヒトの生体モニタリングプロジェクトにおいて、ヒトから一般的に検出される持続性環境化合物のグループとして、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)が同定されています。これらの化合物のサンプル前処理には 96 ウェルプレートで行える固相抽出(SPE)が必要です。以前の分析法で、減圧 SPE マニホールドを使用してヒト血清の抽出および SPE クリーンアッププロトコルを最適化しました。Otto™ SPEcialist 加圧マニホールドの導入に伴い、PFAS 分析法をこの装置に移行し、ヒト血清と血漿の両方で正確性と再現性を評価しました。Otto SPEcialist では、減圧マニホールドと同等あるいは場合によってさらに優れた正確さが得られます。Otto SPEcialist では、ヒト血清と血漿の両方の繰り返し抽出における %RSD 値が低く、高精度であることも示されました。

アプリケーションのメリット

  • Otto SPEcialist は、結果の効率、再現性、正確性を向上させる半自動加圧抽出法を提供
  • Otto SPEcialist を追加することで、ヒトの生体モニタリングおよび曝露試験のための PFAS 分析ワークフロー全体が強化および改善

はじめに

CDC の National Health and Nutrition Examination Survey(米国国民健康栄養調査、NHANES)1 や European Human Biomonitoring Initiative(欧州ヒトバイオモニタリングイニシアチブ、HBM4EU)2 などの大規模なバイオモニタリング試験で、ヒトの生体液中から多くの PFAS 化合物が同定されています。PFAS へのヒト曝露の最良の代表的なマトリックスは、血清または血漿のいずれかでした。これは、血液由来マトリックスには最も高濃度の PFAS が含まれているため、高感度の分析に必要なサンプル量が少なくなるためです3

以前、弱陰イオン交換(WAX)を使用した 96 ウェルプレートベースの抽出法を、ヒト血清からの PFAS 抽出に最適化されました4。この分析法は、減圧 SPE マニホールドを使用して最適化され、実行されました。減圧マニホールドの代替として、加圧 SPE を使用することで、より効率的で信頼性の高いソリューションになります。

Otto SPEcialist は、半自動化されたソフトウェア駆動型の加圧サンプル前処理デバイスです。加圧 SPE では、すべてのウェル/カートリッジに同じ圧力がかかり、サンプルのロードと溶出がより均一になるため、減圧アプローチよりも優れています。さらに、加圧の場合には、真空を利用し、カートリッジが詰まった場合に流速に大きな影響が出る可能性がある減圧のような最大圧力限界の問題がありません。最後に、Otto SPEcialist は、抽出プロセス中に圧力設定を自動的に調整するようにプログラムでき、これによって効率だけでなく再現性も向上します。以下の試験の目的は、以前の抽出法を Otto SPEcialist に移行し、ヒト血漿向けの分析法を評価することでした。

結果および考察

Waters アプリケーションノート 720007114JA に記載されているのと同じ SPE プロトコルと装置メソッドを Otto SPEcialist の評価に使用しました4。 Otto SPEcialist を、ヒト血清に加えてヒト血漿の抽出にも使用し、血清分析法が血漿にも適用可能かどうかを判定しました。

ヒト血清(NIST 1957)およびヒト血漿(NIST 1950)の NIST 標準レファレンス物質(SRM)を使用して、分析法の性能をまず評価しました。NIST 1957 には 0.172 ~ 21.1 µg/kg の認定濃度の 7 種類の非強化 PFAS 化合物が含まれ、NIST 1950 には 0.182 ~ 10.43 µg/kg の認定濃度の 6 種類の非強化 PFAS 化合物が含まれます。計算濃度と NIST 認定値と比較した % バイアスを図 1 に示します。Otto 抽出を使用した両方の SRM の実験値により、血清で 12 % 以内、血漿で 10 % 以内という正確な計算濃度が得られました(バイアスが 30% の PFDA を除く)。血清で PFDA のバイアスが大きいのは、この認定値の不確かさに対する許容範囲が小さいことに起因する可能性があります。血清 SRM を手動減圧マニホールドを使用した以前の結果とも比較したところ、Otto SPEcialist ではバイアスが同等またはわずかに小さいという結果になりました。

図 1.  NIST 1957(左)および NIST SRM 1950(右)標準レファレンス物質の 4 回繰り返しの分析結果。(上段)SRM サンプルの濃度測定値。(下段)NIST 認定値から計算した測定値のバイアスの割合。

さらに、プールした多数のヒト血清と血漿に 27 種の PFAS をスパイクし、幅広い範囲の PFAS を評価するための追加の実験を行いました。濃度 4 µg/kg(SPE 後の 1 ng/mL 注入濃度に相当)になるように各マトリックスに 3 回繰り返しスパイクして得られた正確性と精度の詳細を表 1 に示します。血清でのスパイク実験では、手動減圧マニホールドと Otto SPEcialist の両方を使用して抽出を行いました。全体として、Otto SPEcialist を使用した方が、%RSD 値が 10% 未満と精度が高いことが実証されました(少数のはずれ値の化合物(RSD 16% 未満)を除く)。両方のマトリックスで正確性が 80% を超える 2 化合物を除くすべての化合物について、Otto SPEcialist では計算濃度の精度も高くなりました。

表 1.  4 µg/kg(ウェル中の注入濃度 1 ng/mL)になるように PFAS をスパイクしたヒト血清および血漿(3 回繰り返し)から Otto SPEcialist および減圧マニホールドを使用して抽出した場合の計算濃度の正確性および %RSD の測定値。N/A は、高いバックグラウンド干渉のために測定値がないことを示します。

結論

減圧 SPE マニホールドを用いて評価した、以前確立したヒト血清からの PFAS 抽出法を、半自動 Otto SPEcialist 加圧抽出システムに正常に移行できました。さらに、この分析法は、ヒト血漿からの PFAS 抽出にも適していることが示されました。このシステムを 2 つの NIST SRM を使用して評価したところ、NIST 認定値とほぼ一致する正確な結果が得られました。また、幅広い 27 種の PFAS をヒト血清および血漿サンプルに添加し、Otto SPEcialist を使用して抽出したところ、正確で精密な結果が得られました。Otto SPEcialist を PFAS のヒト生体液分析に使用することで、ラボの効率が高まると同時に、高品質の結果を得ているという確信が得られます。

参考文献

  1. Centers for Disease Control and Prevention.National Report on Human Expoure to Environmental Chemicals: Biomonitoring Data Tables for Environmental Chemicals.[cited 2022 March 30].Available from: https://www.cdc.gov/exposurereport/data_tables.html
  2. HBM4EU Project.European Human Biomonitoring Dashboard.[cited 2022 March 30].Available from: https://www.hbm4eu.eu/what-we-do/european-hbm-platform/eu-hbm-dashboard/
  3. Vorkamp K, et al.Biomarkers, Matrices and Analytical Methods Targeting Human Exposure to Chemicals Selected for a European Human Biomonitoring Initiative.Environment International.146 (2021).
  4. Organtini K, Rosnack K, Lame M, Calton L. Extracting and Analyzing PFAS from Human Serum.Revised July 2021, Waters Application Note, 720007114

720007601JA、2022 年 4 月

トップに戻る トップに戻る