クエン酸は、多くの飲料の味や風味を改善するための添加剤として、および抗酸化剤として使用されています。ACQUITY Premier CSH Phenyl-Hexyl カラムを使用し、ACQUITY UPLC H-Class システムを ACQUITY UPLC PDA 検出器と組み合わせて、クエン酸の分析法を開発しました。この分析法の性能を、ピーク形状、直線性、精度などのパラメーターに基づいて評価しました。開発された分析法を、エネルギードリンクおよびスポーツドリンクのサンプルに適用しました。サンプル中のクエン酸の定量結果は Empower 3 ソフトウェアを用いてレポートしました。ACQUITY Premier CSH Phenyl-Hexyl カラムを ACQUITY H-Class と組み合わせ、ACQUITY UPLC PDA メソッドおよび Empower 3 ソフトウェアを併用することにより、さまざまな飲料中のクエン酸の定量が可能になります。
クエン酸分析用の ACQUITY UPLC PDA 検出器と組み合わせた ACQUITY UPLC H-Class システムに ACQUITY Premier CSH Phenyl-Hexyl カラムを装備することで、以下が提供されます。
クエン酸は、3 つのカルボン酸基が含まれている弱有機酸です。クエン酸は多くの果物(特にレモンおよびライムなどの柑橘類)に、天然に存在します。天然に存在しますが、味、風味を改善するため、および酸化防止剤として、多くの飲料に添加剤としても使用されます1。 成分が製品の仕様範囲内にあることを確認するための品質管理チェック、および安定した味を実現するために、飲料中のクエン酸をモニターすることは有用です。
クエン酸は極性が高いため、従来のシリカ C18 逆相カラムで保持することが困難になることがあります。逆相クロマトグラフィーの従来の分析法では、保持や選択性が必ずしも十分でない場合があり、そのために飲料中の他の成分との共溶出が起こり、ピークの波形解析が課題になることがあります。多くの公開されている分析法では、クエン酸の測定に、イオンクロマトグラフィー(IC)、キャピラリー電気泳動(CE)、または滴定法が推奨されています2,3。 これらの分析法は、困難であり、時間がかかり、専用の装置やスタッフのトレーニングが必要な場合があります。製品を市場に投入するために製品の一貫性を保証するには、信頼性が高く、簡潔で、正確な分析法が必要です。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、オートサンプラーテクノロジーおよび多くの検出器オプションを使用する単一のプラットホームで複数の検査を実行できる適応性、および正確性と感度により、ルーチン食品検査用の確立されたツールです。Empower 3 ソフトウェアなどのクロマトグラフィーデータソフトウェアを使用することによって、サンプル分析情報の自動取得、データ管理、サンプルレポート作成が可能になり、科学者やラボマネージャーはサンプル分析に関する情報を簡単に見つけることができるようになります。
HPLC の使用での課題の 1 つは、カラムなどの分析流路の表面とクエン酸の相互作用により、クエン酸の検出とピーク形状が損なわれる可能性があることです。このテクノロジーブリーフでは、ACQUITY Premier CSH Phenyl-Hexyl カラムを用いた、飲料中のクエン酸定量用の UPLC-PDA 分析法について説明します。
移動相の組成として、さまざまな濃度のリン酸ナトリウムバッファーおよびギ酸を評価しました。以前に、クエン酸などのさまざまな有機酸に対して、LC-MS 検出器用の水性および有機性の移動相の添加剤としてギ酸を用いるバッファーなしの分析法が開発されました4。 PDA により、3 次元、光強度、時間、波長範囲全体が検出されます。HPLC-PDA 分析法では、移動相バッファーまたは添加物と検出対象分析種との間に、吸光度の差があることが必要条件です。クエン酸の吸光度はギ酸と同様(210 nm)であるため、移動相のバックグラウンドノイズと区別できず、ベースラインが高くなります。このため、ギ酸を用いて開発された LC-QDa 分析法は LC-PDA 検出器には使用できません。濃度を低くしたリン酸ナトリウムバッファーで、良好なピーク形状と感度が観察されました。したがって、クエン酸のために、10 mM リン酸ナトリウムバッファーが含まれる水とアセトニトリルを用いる UPLC-PDA 分析法を開発しました。
移動相添加物に加えて、HPLC において対象分析種のピークテーリングおよびピーク面積低下の主要な要因の 1 つは、分析種と、分析カラムまたは LC 流路の表面との間の相互作用です。多くの場合、分析種と表面との二次相互作用が発生し、ピークテーリングやピーク面積の減少として表れます。LC システムとカラムを不動態化することで、分析種と表面の間の相互作用を最小限に抑えるための多くの手順が使用できます。一部の不動態化法は信じられないほど時間がかかり、多くの溶媒が必要で、移動相に添加剤を使用することがあり、この添加剤はイオン化抑制やクロマトグラフィーの変動の原因になることがあります。金属との相互作用に対処するため、ウォーターズは、システムやカラムの不動態化などの時間のかかる作業を行うことなく、金属の影響を受けやすい分析種に関連するばらつきを低減するように設計された、新しい低吸着 ACQUITY Premier システムとカラムを開発しました。以前の研究では、ACQUITY Premier カラムを使用して、クエン酸のピーク形状と感度に顕著な改善が観察されました5。 クエン酸の UPLC-PDA 分析法は、ACQUITY Premier カラムを 10 mM のリン酸ナトリウムバッファーとアセトニトリルのグラジエントで使用して開発されました。データは、Empower 3 ソフトウェアで収集して解析しました。ACQUITY UPLC PDA 検出器により、190 ~ 500 nm の範囲のスペクトル解析が可能になります。このスペクトル範囲により、PDA データからクロマトグラムを抽出でき、分析種が最大吸光度を示す波長 210 nm を選択しました。このため、PDA チャンネルに 210 nm を選択しました。図 1 に、UPLC-PDA で得られた 200 ppm のクエン酸のクロマトグラフィー性能と溶媒標準検量線が示されています。12.5 ppm ~ 600 ppm の溶媒標準試料は水で連続希釈することで調製し、3 回繰り返し注入しました。キャリブレーション試薬の範囲全体で 1/X 重み付けを適用したところ、クエン酸については 0.999 を超える直線性が認められ、残差は 5% 未満でした。
この分析法を適用して、地元の食料品店から購入したエネルギードリンクおよびスポーツドリンクのサンプルを分析しました。どちらのサンプルにも、成分ラベルに記載されたクエン酸が含まれています。両方のサンプルを HPLC グレードの水で 10 倍に希釈し、Acrodisc シリンジフィルター 13 mm 0.2 μm PVDF でろ過してから注入しました。図 2 と図 3 に、スポーツドリンクのサンプルとエネルギードリンクのサンプルの 7 回の繰り返し注入のクロマトグラムとサマリーが、それぞれ示されています。図 2 および図 3 でわかるように、クエン酸(RT 1.8 分)のピークはカラムに十分に保持されており、マトリックスからの干渉物やその他の成分から十分に分離されています。保持時間、ピーク面積、計算濃度は、両方のサンプルで %RSD 0.6% 未満でした。どちらのサンプルもクエン酸について適切なピーク形状を示し、USP テーリング係数は 2.2 未満でした。サンプル中のクエン酸の量をレポートする場合は、希釈係数を考慮する必要があります。サンプル中のクエン酸の量を算出するため、希釈係数を Empower ソフトウェアに追加しました。Empower ソフトウェアによって、サンプルは溶媒標準検量線に対して定量化され、希釈係数を使用してサンプル中のクエン酸の濃度が自動的に算出されて、レポートが生成されます。計算とレポート生成の自動化により、手作業および手動計算によるミスが低減されます。
以下のレポートに、スポーツドリンクおよびエネルギードリンクに含まれるクエン酸の濃度計算値が示されています。クエン酸の濃度は、スポーツドリンクおよびエネルギードリンクでそれぞれ 1,706 ppm(1.7 g/L)および 6,687 ppm(6.6 g/L)でした。
ACQUITY Premier カラムにより、分析種と表面の間の相互作用が低減され、許容可能なピーク形状と感度が得られます。開発された UPLC-PDA 分析法は、スポーツドリンクおよびエネルギードリンクの分析において保持時間、ピーク形状、ピーク面積の良好な再現性を示しました。Empower 3 ソフトウェアにより、サンプル内の分析種の濃度が自動的に算出されます。UPLC-PDA 分析法と簡単なデータ解釈ソフトウェアの組み合わせは、迅速なサンプルスループットを提供し、スポーツドリンクやエネルギードリンク中のクエン酸の品質管理に適しています。
720007290JA、2021 年 6 月