新型コロナウイルスのパンデミックが続く中、世界各地の科学者が SARS-CoV-2 の構造生物学的な理解に取り組んでいます。この研究を通じて、SARS-CoV-2 のスパイクタンパク質はウイルスの病原性に関与していることがわかり、ワクチン開発のターゲットとして注目されるようになりました。研究により、中和抗体は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質のペプチドと糖鎖のエピトープの両方と相互作用することが示されています1,2,3。 グリコシル化が構造、機能、構造動力学、薬物結合部位の利用可能性の相当な部分を決めるため、適切な治療薬開発のためには、スパイクタンパク質の糖鎖を理解することが最重要になります1。そのため、新型ワクチン開発には、グリコシル化の特性解析が必須です。
変性のための DTT による還元条件を最適化した GlycoWorks RapiFluor-MS N-Glycan キットを使用して N 型糖鎖を遊離、標識、精製し、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)で分析しました。HILIC-FLR-MS には ACQUITY UPLC H-Class LC および Xevo G2-XS QToF 質量分析計を使用しました。
LC システム: |
ACQUITY UPLC H-Class Bio |
検出: |
ACQUITY FLR および Xevo G2-XS QTof |
バイアル: |
QuanRecovery 300 µL |
カラム: |
ACQUITY UPLC Glycan BEH Amide、1.7 µm、2.1 × 150 mm |
カラム温度: |
60 ˚C |
サンプル温度: |
8 ˚C |
サンプル注入量: |
1 µL |
流速: |
0.4 mL/分 |
移動相 A: |
50 mM ギ酸アンモニウム水溶液、pH 4.4 |
移動相 B: |
アセトニトリル(LC-MS グレード) |
グラジエント: |
35 分間で移動相 B を 75 から 54% にグラジエント |
サンプル前処理の詳細については、GlycoWorks Care and Use Manual(『GlycoWorks 取扱説明書』)を参照してください。MS 条件の詳細については、ウォーターズのアプリケーションノートを参照してください。
GlycoWorks Care and Use Manual(『GlycoWorks 取扱説明書』) |
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ウォーターズアプリケーションノート |
42 の主な糖鎖ピークが同定されました(図 2 参照)。そのうちの 2 つは仮に二重フコシル化として割り当てられました(図 3 参照)。残りのピークは、11 がアフコシル化糖鎖に、29 がフコシル化糖鎖に割り当てられました。これらの糖鎖は更に、高マンノース糖鎖(6)、ハイブリッド型糖鎖(6)、複合型糖鎖(30)の 3 つのクラスに分類することができます。これらの割り当ては、相対 HILIC 保持時間、グルコース単位(GU)の値、および精密質量情報に基づいて行いました。 同定を確認するには、MS/MS 分析およびエキソグリコシダーゼアレイによる調査が必要です。
SARS-CoV-2 のスパイクタンパク質は、ウイルス病原性に関与しているため、ワクチン開発のターゲットになりました。治療薬開発を効率よく進めるには、SARS-CoV-2 のスパイクタンパク質ターゲットの構造および機能についての確実な理解が欠かせません。SARS-CoV-2 のスパイクタンパク質の構造および機能を完全に理解するためには、糖鎖プロファイルの理解が必須です。つまり、有望な新しい新型コロナウイルスの治療法を特定して開発するには、迅速で正確な糖鎖解析が必要となります。本研究では、SARS-CoV-2 の N 型糖鎖の迅速かつ簡単な検出について紹介します。42 の主な糖鎖ピークが同定されました。興味深い点として、2 つのピークが二重フコシル化として割り当てられました。この興味深い発見により、MS/MS およびエキソグリコシダーゼアレイによる更なる確認が求められます。
720006914JA、2020 年 5 月