• アプリケーションノート

ポリマーの分子量分布および添加剤の特性解析のための単一システム

ポリマーの分子量分布および添加剤の特性解析のための単一システム

  • Karl Lo
  • Mark Ritchie
  • Nobutake Sato
  • Waters Corporation

要約

このアプリケーションブリーフでは、ACQUITY アドバンスド ポリマー クロマトグラフィー(APC)システムと Waters 2414 示差屈折率(RI)検出器および Waters ACQUITY QDa 検出器との併用により、ポリマーの分子量分布の正確な測定とポリマー添加剤検出を単一システムで同時に実行することで、ポリマー分析にかかる時間を短縮できることを示しています。

アプリケーションのメリット

ACQUITY APC システムの利点を 2414 示差屈折(RI)検出器と ACQUITY QDa 検出器の利点と組み合わせることで、ラボの効率が大幅に高まります。

はじめに

ポリマーの機能は、基本ポリマー構造、分子量(MW)分布、および重合プロセスに使用される添加剤の種類や割合によって異なります。以前のポリマー分析で、2 台のクロマトグラフィーシステムが必要であり、1 台でポリマーの分子量(MW)分布を調べ、もう 1 台で添加剤の濃度を測定しました。従来の GPC システムは通常低分解能で、分析時間が長く、ポリマー添加剤の検出や測定を行う機能がありませんでした。このようなシステムに質量検出器を追加すると、定性情報および定量情報の両方が高感度で得られますが、質量検出器は、分子量分布分析で使用される順相溶媒とは一般に適合しませんでした。ACQUITY APC システムの利点を 2414 示差屈折(RI)検出器と ACQUITY QDa 検出器の利点と組み合わせることで、ラボの効率が大幅に高まります。

本研究では、ACQUITY アドバンスド ポリマー クロマトグラフィー(APC)システムを 2414 示差屈折率(RI)検出器および ACQUITY QDa 検出器と併用することで、ポリマーの分子量分布の測定とポリマー添加剤の検出を同時に実現する方法を示しています。

結果および考察

図 1 に、実験で使用したシステム構成の図を示しています。この構成では、ACQUITY APC システムに 2414 示差屈折率(RI)検出器および ACQUITY QDa 検出器を接続しており、期待される結果が得られました。クロマトグラフィー分析は、流速 0.6 mL/分の THF でのアイソクラティック溶出で行いました。スプリッターを使用して 2414 RI 検出器および ACQUITY QDa 検出器への送液を分割し(99:1)、これにより、分子量測定および添加剤の分析を同時に行うことが可能になりました。分割後に、ACQUITY QDa 検出器に流れる溶離液に、メイクアップ溶媒として 5 mM ギ酸アンモニウム MeOH 溶液を 0.3 mL/分で添加し、溶離液が ACQUITY QDa 検出器に適合すると共に分析種のイオン化が促進されるようにしました。 

図 1. 実験に使用したシステム構成。バルブを 1~7 分の間に廃液に切り替え、次に 7~9 分の間に ACQUITY QDa 検出器に切り替えました。

分析の最初の 7 分間、切り替えバルブを使用して ACQUITY QDa 検出器から廃液に送液を切り替え、その間 2414 RI 検出器により、ポリマーをモニターしました。その後、切り替えバルブで送液を ACQUITY QDa 検出器に切り替え、添加剤の分析を行いました。分析時に使用したカラムは、ACQUITY APC XT - 温度範囲拡張カラム、450Å、2.5 μm、4.6 mm × 150 mm(20,000~400,000、製品番号:186007010)、ACQUITY APC XT - 温度範囲拡張カラム、125Å、2.5 μm、4.6 mm × 150 mm(1,000~30,000、製品番号:186007000)、および ACQUITY APC XT - 温度範囲拡張カラム、45Å、1.7 μm、4.6 mm × 150 mm(200~5,000、製品番号:186006995)です。この独自の組み合わせにより、高分子ポリマーが ACQUITY QDa 検出器に入ることを防ぎ、汚染を防止すると同時に、2414 RI 検出器によりポリマーをモニターしました。続いて、分子量キャリブレーター、添加剤濃度キャリブレーター、およびサンプルを注入しました。

サンプルの分子量分布の特性解析に使用したポリマースタンダード(ACQUITY APC ポリスチレン高分子量キャリブレーションキット、製品番号:186007541)のクロマトグラムを図 2 に示します。カラムの質量範囲は 0.2~40 KDa であるため、図 3 に示すように、2 つの最も高分子量(MW)のスタンダードは除外されました。検量線は、三次曲線フィッティングで R2> 0.9996 の良好な直線性を示しています。従来の GPC システムと比較して、APC システムでは、低分子量のスタンダード(<1K)で高分離が得られ、検量線の低分子量側で追加のポイントが得られる同定可能なピークがあります1。使用したサンプルは 0.1%(w/v)ポリスチレン 706a(NIST)THF 溶液で、サンプルのクロマトグラムを図 4a に示しています。分子量分布曲線および図 4b 中の表に、サンプルの結果をまとめています。結果は、ポリスチレン 706a の理論上の質量と同等で、アドバンスド ポリマー クロマトグラフィー(APC)システムが、従来の GPC と比較して、高い分離能を持っていることが良くわかります。

図 2. 2414 RI 検出器を用いたポリマースタンダードのクロマトグラム
図 3. 2414 RI 検出器を用いたポリマースタンダードのクロマトグラム
図 4. サンプルの分子量の分析結果。a) サンプル(ポリスチレン 706a)の RI クロマトグラム、および b) 分子量分布。

図 5 にはポリマー中の添加剤濃度の同時分析が示されており、ACQUITY アドバンスド ポリマー クロマトグラフィー(APC)システムを 2414 示差屈折率 (RI) 検出器および ACQUITY QDa 検出器と併用することで得られる付加機能が更に強調されています。ポリマーのサンプルに様々な抗酸化物質(イルガノックスおよびイルガフォス)および光安定剤(Tinuvin)をスパイクし、1 回の注入でポリマーの分子量と同時に分析しました。ACQUITY QDa 質量検出器は、SIR またはフルスキャンモードで使用して、定量分析および定性分析を行うことができます。質量 356~1177 の添加剤はポリスチレンの後に溶出します。図 5 には、0.5 ppm の添加剤をスパイクした 0.1% ポリスチレンの SIR(M+H)重ね書きクロマトグラムを示します。添加剤は質量降順で溶出し、8 種類の添加剤すべてが 2 分の保持時間にわたって十分に分散されています。これらの結果により、低分子量の化合物に対する ACQUITY システムの高度な分離能が効果的に示されました。

図 5. 0.5 ppm の添加剤の重ね書きマスクロマトグラムと、質量が降順の溶出順序

図 1 に、添加剤の定量分析の結果をまとめています。イルガノックス 1010 を除き、スタンダードの濃度範囲は 0.5~25 ppm で、相関係数は >0.993 でした。すべての添加剤について、シグナル対ノイズ比(S/N)は 20 を超えています。スパイクした 1 ppm のポリマーの回収率は 90% を超え、3 つの繰り返しサンプルの %RSD は 3% 未満でした。

表 1.添加剤分析の結果のまとめ

これらの結果より、ACQUITY QDa 検出器による添加剤分析の感度が並外れて高く、ポリマーサンプル中の添加剤が 0.1% 未満の場合においても、高感度が示されました。

結論

結論として、アドバンスド ポリマー クロマトグラフィーシステムを 2414 示差屈折率 (RI) 検出器および QDa 検出器と組み合わせることで、ポリマーの分子量と添加剤の濃度を同時に 9 分間で正確に測定でき、分析時間が効果的に短縮されることが示されました。メイクアップポンプとスプリッターを追加することで、ポリマーの分子量測定のための 2414 示差屈折(RI)検出器と、溶媒が適合する ACQUITY QDa 検出器への有効なスプリットフローが得られることが実証されました。低分子量の化合物で、従来の GPC システムより高分離を得るためには、ACQUITY APC システムに高度なカラムテクノロジーが装備されていることが不可欠です。ACQUITY QDa 検出器により、添加剤についての定性情報および定量情報が得られます。添加剤の分析に、追加の逆相の分析用 HPLC システムは必要ありません。

参考文献

  1. High-Speed, High-Resolution Analysis of Low Molecular Weight Polymers Using the Advanced Polymer Chromatography (APC) System.Waters Corp. U.S.A., 2013.https://legacy-stage.waters.com/webassets/cms/library/ docs/720004630en.pdf.

720006818JA、2020 年 4 月

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