法中毒学目的のみに使用してください。
スポーツドーピング検査の増加により、多数のサンプルの初期スクリーニングに用いるための、迅速、正確、かつ確実で頑健な分析法の必要性が浮き彫りになっています。UNIFI を用いた法中毒学スクリーニングアプリケーションソリューションを拡張して陰イオン性化合物を測定することにより、希釈済み尿中の利尿薬を測定することができます。これによって、この分析法を WADA ガイドラインに準拠したアンチドーピングラボに適用することができます。
尿中の陰イオン性利尿薬の検出および定量が可能になる、UNIFI を用いた拡張法中毒学スクリーニングアプリケーションソリューション。
利尿薬は、尿の生成を促進することを主な目的とする医薬品化合物のクラスです。そのため、うっ血性心不全や高血圧などの多くの疾患の治療に使用することができます。スポーツ界では、アスリートが体重を急速に減少させたり、低体重を維持したりするために利尿薬を乱用する可能性があります。また、尿の希釈を促進したり排出を促したりすることで、禁止物質や違法物質の存在を隠すために使用されることもあります。そのため、利尿薬の使用は、世界アンチドーピング機関(WADA)によって禁止されています。禁止化合物のリストが WADA の技術文書1 にあり、これには利尿特性のある少なくとも 25 種の化合物が含まれています。ドーピング管理ラボ間における測定の一貫性を確保するために、WADA は最小要求性能限界レベル(MRPL)を定義しています。これはラボでの検出が予想される禁止物質の濃度で、現在は 200 ng/mL に設定されています2。
UNIFI を用いた法中毒学スクリーニングアプリケーションソリューションは現在、エレクトロスプレーポジティブイオン化モード(ESI+)を使用する MSE モードで動作する、直交加速飛行時間型質量分析計での精密質量データの取り込み、およびそれに続く、1000 を超える毒性学類縁物質を含む網羅的なライブラリーとのデータの比較で構成されています3-5。一方、多くの利尿薬はネガティブエレクトロスプレーモード(ESI-)でのみイオン化するため、最近の研究の目的は、陰イオン性化合物を含めるように、UNIFI を用いた法中毒学スクリーニングアプリケーションソリューションをさらに拡張して、この分析法を使用して尿中の(特に WADA MRPL を下回る濃度の)利尿薬の有無を判定することでした。
UPLC システム: |
ACQUITY UPLC I-Class (FTN) |
カラム: |
ACQUITY UPLC HSS C18 カラム、100 Å、1.8 µm、2.1 × 150 mm(製品番号 186003534) |
バイアル: |
マキシマムリカバリーバイアル、12 × 32 mm、スクリューネック(製品番号 186000327c) |
カラム温度: |
50 ℃ |
サンプル温度: |
10 ℃ |
注入量: |
10 µL |
流速: |
0.4 mL/分 |
移動相 A: |
0.001% ギ酸水溶液 |
移動相 B: |
0.001% ギ酸アセトニトリル溶液 |
グラジエント: |
87% A で 0.5 分間アイソクラティック送液した後、4.5 分間で 5% A まで下げ、1 分間ホールドしてから 87% A に切り替える |
分析時間: |
7.5 分 |
MSE 条件 |
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---|---|
MS システム: |
Xevo G2-S QTof |
イオン化モード: |
ESI |
イオン源温度: |
150 ℃ |
脱溶媒温度: |
400 ℃ |
脱溶媒ガス: |
800 L/時間 |
レファレンス質量: |
ロイシンエンケファリン [M-H]- m/z = 554.2620 |
取り込み範囲: |
m/z 50 ~ 1000 |
スキャン時間: |
0.1 秒 |
キャピラリー電圧: |
1.5 KV |
コーン電圧: |
20 V |
コリジョンエネルギー: |
ファンクション 1:6 eV ファンクション 2:10 ~ 40 eV のランプ |
内部標準(ISTD)として使用した Ioxinyl は、Sigma-Aldrich(英国、プール)から購入しました。ストック溶液は、メタノール中に 1 mg/mL になるように調製し、-20 ℃ で保管しました。使用する前に、このストック溶液を 0.001% ギ酸で 100 ng/mL に希釈しました。
その他のすべての化学物質は最高グレードの化学物質を使用し、供給者の指示に従って保管しました。
Bio-Rad 健常コントロール尿は Bio-Rad Laboratories(英国・ヘメル・ヘムステッド)から入手しました。
0.2 mL の尿および ISTD(0.7 mL)にアセトニトリル(0.1 mL)を添加しました。このサンプルを、1200 rpm で 5 分間ボルテックス混合し、次に 8000 g で 10 分間遠心分離しました。上清をマキシマムリカバリーバイアル(製品番号 186000327c)に移しました。
ESI- でイオン化する 16 種の利尿薬をこの分析に含め、その正確なニュートラル質量および UPLC での保持時間とともに表 1 にリストしています。このリストには、ネガティブモードでのみイオン化する 5 種の化合物(ベンドロフルメチアジド、ベンズチアジド、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド)が含まれています。
各分析種の陽性同定の合否基準は、保持時間がレファレンスの 0.35 分以内であり、実測プリカーサー質量が予想の 5 ppm 以内であることとしました。追加の確認のために、高エネルギーファンクションで少なくとも 1 つの診断フラグメントイオンが見つかる必要がありました。
MSE アプローチの有用性、および高エネルギー条件で生成する関連するフラグメントイオンデータをさらに図 2 に示します。この図には、同一の元素組成(C16H16ClN3O3S)を有するメトラゾンとインダパアミドの高エネルギーデータが示されており、ここで使用したクロマトグラフィー条件下では、0.2 分以内という近接した位置に溶出しています。これらの条件下では、この 2 種の利尿薬を区別するのが困難である可能性がありますが、診断フラグメントイオンを考慮すると、明確に区別されていることがこの図からわかります。
直線性について調べるために、コントロール尿に利尿薬を 0 ~ 2000 ng/mL の範囲でスパイクし、上記のように 2 回繰り返しで調製しました。各微量分析種のレスポンスは解析中に自動的に生成されたもので、ISTD のレスポンスを参照しています。セミ定量的検量線を 1/x 重み付けを使用してプロットし、二次近似をすべての分析種に適用しました。各分析種の決定係数は 0.99 超でした。フロセミドの 0 ~ 2000 ng/mL の検量線を図 3 に示します。WADA MRPL の濃度でスパイクした尿を、関連する検量線に照らして定量したところ、すべての分析種がこの濃度で陽性同定されました。
分析標準試料で同定された高エネルギーフラグメントと、フロセミドをスパイクしたブランク尿サンプルで同定された高エネルギーフラグメントの比較を図 4 に示します。
上記のサンプル前処理メソッドに従って真正尿サンプルを分析したところ、利尿薬フロセミドが含まれていることがわかりました。UNIFI の代謝物同定(Met ID)ツールを使用してデータをさらに調査したところ、フェーズ 1 とフェーズ 2 の代謝物がいずれも存在することがわかりました。親分子および最も一般的な代謝物であるグルクロニド複合体の保持時間(2.69 分)を図 5 に示します。ソフトウェアにより、実測保持時間ならびに実測 m/z および質量誤差(ppm)によって、代謝変換があったことが明らかになっています。
スポーツドーピング検査の増加により、多数のサンプルの初期スクリーニングに用いるための、迅速、正確、かつ確実で頑健な分析法の必要性が浮き彫りになっています。UNIFI を用いた法中毒学スクリーニングアプリケーションソリューションを拡張して陰イオン性化合物を測定することにより、希釈済み尿中の利尿薬を測定することができます。これによって、この分析法を WADA ガイドラインに準拠したアンチドーピングラボに適用することができます。
UNIFI 内でバイナリー比較および代謝物同定ツールを使用することで、高エネルギーフラグメントのマッチが明らかになるため、データの信頼性が向上し、データベースに存在しないサンプル中の代謝物の探索が容易になります。これらの代謝物は、後でライブラリーに追加することができます。
ラボで採用する前に、ユーザーによる完全なバリデーションが必要です。
720005391JA、2015 年 4 月