糖タンパク質の糖ペプチドマッピングは、ドメインおよびペプチド特有のグリコシル化の両方を解析するのに用いることができる非常に有効な技術です。本研究では、逆相分離によって得られるクロマトグラフィーの情報を補完する、糖ペプチドの HILIC 分離への ACQUITY UPLC Glycoprotein BEH Amide、300Å、1.7 µm カラムの使用について実証しました。さらに、本研究の結果は、この HILIC 分離により他の市販アミドカラムテクノロジーと比較して良好なピークキャパシティが得られることを示していました。HILIC 分離はMS に適合するため、糖ペプチドマップを特性解析するための情報豊富なデータを容易に得ることができます。
例えば、本研究では、セツキシマブの Fc および Fab ドメイングリコシル化など、マルチドメインのタンパク質グリコシル化特性解析が比較的簡潔にできることを示しています。HILIC サブユニットマッピングや GlycoWorks RapiFluor-MS 標識 N 結合型糖鎖分析など最近開発されたストラテジーと組み合わせることで、ACQUITY UPLC Glycoprotein BEH Amide を用いた糖ペプチドマッピングは、今までにないレベルの詳細までタンパク質のグリコシル化特性解析を促進することが非常に期待されます。
バイオ医薬品のペプチドマッピングは、同一性試験やアミノ酸残基特異的な修飾のモニターのツールとして長く使用されてきました1-2。 従来の分析では、トリプシンや Lys-C などの忠実性の高いプロテアーゼの使用で得られるペプチドを、イオンペア試薬を用いて C18 結合固定相で逆相分離により非常に高いピークキャパシティで分離します。これらの分離では、アスパラギンと、アスパラギンが脱アミドして生成する 2 種、アスパラギン酸およびイソアスパラギン酸のようなアミノ酸残基が 1 つ異なるペプチドを分離することができます3-4。
しかしながら、全てのタンパク質修飾が逆相分離で容易に分離できる訳ではありません。比較すると、特に糖ペプチドのアイソフォームは通常、その糖鎖の質量が約 10-2000 Da 異なっていると考えると、多くの場合、糖ペプチドは比較的低い選択性で分離されます。そのため、逆相分離は一般的なペプチドマッピングに有効ではありますが、親水性の修飾の分離においては制限されています。以前の研究において、アミド結合固定相を用いた親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)による相補的かつ高分離な糖ペプチドの分離が示されています5-6。 これら研究では、親水性と水素結合性の結果として高い保持が得られる 7 ことから、アミド結合固定相がこれらの分離に特に効果的であることを実証しています7。
このテクノロジーを拡張して、ポアサイズの大きいアミド結合固定相、いわゆる“ワイドポア”充塡剤を開発し、アミド HILIC 分離がインタクトおよび消化糖ペプチド両方のグライコフォームの分離に広く適用できるようになりました。ACQUITY UPLC Glycoprotein BEH Amide 300Å、1.7 µm カラムで使用しているこの固定相により、そのサイズに関わらず糖ペプチドが充塡剤細孔内の大半にアクセスでき、拡散が制限されにくくなります8-9。 以前の研究において、この HILIC カラムを使用することにより、インタクトモノクローナル抗体(mAb)の糖鎖占有率の評価 10、IgG サブユニットのドメイン特有グリコシル化の解析 11、および GlycoWorks RapiFluor-MS で標識した三分岐および四分岐 N 結合型糖鎖の分離向上について実証しました12。ここでは、3 種類の異なるモノクローナル抗体(トラスツズマブ、セツキシマブ、NIST から入手した IgG1K 候補標準物質)の糖ペプチドについて HILIC で高分離を得るために、ACQUITY UPLC Glycoprotein BEH Amide、300Å、1.7 µm カラムの使用を検討しました。
以前に報告したシングルリアクションバイアルで一晩(16 時間以上)反応させる方法 4 を採用し、トラスツズマブおよび NIST から入手した IgG1K モノクローナル抗体の候補標準物質(#8670、lot#3F1b)について非還元 Lys-C 消化物を調製しました。TFA で酵素を失活させた消化物は分析まで -80℃で保管しました。HILIC クロマトグラフィーに向けた調製として、水溶性消化物は容量比で 4 倍のアセトニトリルと 0.1 倍のジメチルスルホキシドで希釈し、不溶性成分を取り除くために 16×1000 g で 10 分間遠心分離し、遠心分離した消化物の上清を分析に供しました。
還元・アルキル化したセツキシマブは Achromobacter プロテアーゼⅠ(Lys-C)とトリプシンを組み合わせて消化を実施しました。処方されたセツキシマブは 10 mg/mL の濃度で、10 kDa MWCO 遠心フィルター(Millipore、Bullerica、MA)でバッファー交換して 6M 塩酸グアニジン、50 mM DTT、0.2M リン酸緩衝液(pH8.1)の溶液にして、37℃ で 2 時間インキュベートしました。その後、サンプルをヨードアセトアミドの溶液で希釈し、抗体の濃度が 8 mg/mL、バッファーの組成が 4.8 M GuHCl、40 mM DTT、50 mM ヨードアセトアミド、0.17 M リン酸緩衝液(pH8.1)となるようにしました。ヨードアセトアミドによるアルキル化は、この条件で暗所にて 37℃で 10 分処理し、その後システインにより反応を止めて、尿素含有バッファーで希釈し、Achromobacter プロテアーゼⅠ(Lys-C)と 4:1(w/w)の比率で混合しました。0.8 mg/mL のセツキシマブ、0.5 M 塩酸グアニジン、3 M 尿素、40 mM アンモニア、4 mM DTT、5 mM ヨードアセトアミド、6 mM システイン、0.1 M リン酸緩衝液(pH ~7.1)を含む消化物溶液は 37℃でインキュベートしました。2 時間インキュベートした後、水とトリプシン溶液(Sigma T6567)で 2 倍に希釈し、タンパク質とトリプシンの比率が 4:1(w/w)になるようにしました。37℃でさらに 2 時間インキュベートした後、消化溶液は再度水および新しいトリプシン溶液で 2 倍に希釈しました。トータルのタンパク質とトリプシンの比率は 2:1(w/w)で、37℃でさらに 16 時間インキュベートしました。その後、TFA により酸性にして反応を止め、分析まで -80℃で保管しました。HILIC クロマトグラフィーに向けた調製として、水溶性消化物は容量比で 4 倍のアセトニトリルと 0.1 倍のジメチルスルホキシドで希釈し、不溶性成分を取り除くために 16×1000 g で 10 分間遠心分離しました。遠心分離した消化物の上清を分析に供しました。
ACQUITY UPLC Glycoprotein BEH Amide、300Å、1.7 µm カラム(糖タンパク質もしくは糖ペプチド分離に用いた他のアミドカラムも同様)は 40 µg の Glycoprotein Performance Test Standard(製品番号 186008010、0.1% トリフルオロ酢酸 [TFA]、80% アセトニトリル [ACN] に 4 mg/mL で溶解して 10 µL 注入)の 2 連続注入・分離で、もしくはカラムをマスクするのに必要なサンプルを同等量ロードしてコンディショニングを実施します。下記分析法に示した分離は、Glycoprotein Performance Test Standard を用いたコンディショニングに使用できます。
2.1 x 150 mm
移動相 A:
0.1% (v/v) TFA 水溶液
移動相 B:
0.1% (v/v) TFA 含有アセトニトリル
時間 |
%A |
%B |
カーブ |
---|---|---|---|
0.0 |
15.0 |
85.0 |
6 |
0.5 |
15.0 |
85.0 |
6 |
1.0 |
33.0 |
67.0 |
6 |
21.0 |
40.0 |
60.0 |
6 |
22.0 |
100.0 |
0.0 |
6 |
24.0 |
100.0 |
0.0 |
6 |
25.0 |
15.0 |
85.0 |
6 |
35.0 |
15.0 |
85.0 |
6 |
LC システム: |
ACQUITY UPLC H-Class Bio システム |
サンプル温度: |
10 ℃ |
分析カラム温度: |
30 ℃(トラスツズマブ Lys-C 消化物の HILIC 分離) 60 ℃(セツキシマブ Lys-C/トリプシン消化物の HILIC 分離) 60 ℃(トラスツズマブ Lys-C 消化物の逆相分離) |
流速: |
0.2 mL/分 |
移動相 A: |
0.1% (v/v) TFA 水溶液 |
移動相 B: |
0.1% (v/v) TFA アセトニトリル溶液 |
HILIC 注入量: |
100-250 µL(HILIC に適合するように水溶性消化物は容量比で 4 倍のアセトニトリルと 0.1 倍のジメチルスルホキシドで希釈) |
逆相注入量: |
24.2 µL(水溶性消化物) |
カラム: |
ACQUITY UPLC Glycoprotein BEH Amide、300Å、1.7 µm、2.1×150 mm ACQUITY UPLC Peptide BEH C18、300Å、1.7 µm、2.1×150 mm |
バイアル: |
ポリプロピレン 12×32 mm スクリューネックバイアル、300 µL |
時間 |
%A |
%B |
カーブ |
---|---|---|---|
0.0 |
98.0 |
2.0 |
6 |
96.0 |
50.0 |
50.0 |
6 |
99.0 |
20.0 |
80.0 |
6 |
101.0 |
20.0 |
80.0 |
6 |
102.0 |
98.0 |
2.0 |
6 |
113.0 |
98.0 |
2.0 |
6 |
時間 |
%A |
%B |
カーブ |
---|---|---|---|
0.0 |
20.0 |
80.0 |
6 |
60.0 |
50.0 |
50.0 |
6 |
61.0 |
80.0 |
20.0 |
6 |
63.0 |
80.0 |
20.0 |
6 |
64.0 |
20.0 |
80.0 |
6 |
75.0 |
20.0 |
80.0 |
6 |
MS システム: |
SYNAPT G2-S HDMS |
イオン化モード: |
ESI+ |
測定モード: |
Resolution(~20 K) |
キャピラリー電圧: |
3.0 kV |
コーン電圧: |
25 V |
ソース温度: |
120 ℃ |
脱溶媒温度: |
350 ℃ |
脱溶媒ガス流量: |
800 L/時間 |
キャリブレーション試薬: |
NaI(1 µg/µL、m/z 100-2000) |
ロックスプレー: |
300 fmol/µL Human Glufibrinopeptide B、0.1% (v/v) ギ酸含有 70:30 水/アセトニトリル溶液、1 秒間隔 |
データ取り込み: |
m/z 50-2500、スキャン時間 0.1 秒 |
データ管理: |
MassLynx ソフトウェア(v4.1)/ UNIFI v1.7 |
LC システム: |
ACQUITY UPLC H-Class Bio システム |
サンプル温度: |
10 ℃ |
分析カラム温度: |
45 ℃ |
蛍光検出: |
Ex 280 / Em 320 nm(10 Hz スキャン速度、ゲイン = 1) |
注入量: |
100 µL(DMF/ACN 希釈サンプル) |
移動相 A: |
0.1% TFA 水溶液 |
移動相 B: |
0.1% TFA 含有アセトニトリル溶液 |
カラム: |
ACQUITY UPLC Glycoprotein BEH Amide、300Å、1.7 µm、2.1×150 mm(Glycoprotein Performance Test Standard 添付して出荷) |
その他カラム: |
カラム A:2.6 µm、2.1×150 mm カラム B:1.8 µm、2.1×150 mm |
バイアル: |
ポリプロピレン 12×32 mm スクリューネックバイアル、300 µL |
データ管理: |
UNIFI v1.7 |
時間(分) |
%A |
%B |
カーブ |
---|---|---|---|
0.0 |
15.0 |
85.0 |
6 |
0.5 |
15.0 |
85.0 |
6 |
1.0 |
30.0 |
70.0 |
6 |
21.0 |
37.0 |
63.0 |
6 |
22.0 |
100.0 |
0.0 |
6 |
24.0 |
100.0 |
0.0 |
6 |
25.0 |
15.0 |
85.0 |
6 |
35.0 |
15.0 |
85.0 |
6 |
ペプチドマッピングに向けた従来のアプローチを示すために、まずワイドポア C18 固定相(ペプチド分析用 BEH C18 300Å 1.7 µm)を用いた逆相クロマトグラフィーを用いて mAb の Lys-C 消化物の LC-UV-MS 分析を実施しました。第一世代 mAb 医薬品製品として有名でありバイオシミラー開発のターゲットとなることから 13、本研究にはトラスツズマブを選択しました。図 1A にはトラスツズマブの Lys-C 消化物に典型的な UPLC クロマトグラムを示しましたが、ここでは、1 分あたり 0.5% アセトニトリルを変更するグラジエント全域に渡ってペプチドは幅広く分離しました。消化物のグリコシル化していないペプチドはクロマトグラム全域に渡って広く分離しているのに対し、糖ペプチドは約 60 分の保持時間でおおよそ 1 分の幅の領域に溶出しました。この高分離を生成する条件にはトリフルオロ酢酸(TFA)を添加した移動相を用いておりますが、同じ移動相はタンパク質分析の HILIC 分析にも最適であることが分かっています10-11
。
結果的に、グラジエントを逆にして新規に開発したワイドポアアミド結合相(Glycoprotein BEH Amide 300Å 1.7 μm)を用いた HILIC により、逆相分離と直交する分析法が実現します。この新規ワイドポアアミド固定相を充塡したカラムと 1 分あたり 0.5% アセトニトリル濃度を上昇させるグラジエント勾配を用いて得られたクロマトグラムの例は図 1 に示しました。ここでは、トラスツズマブの Lys-C 消化ペプチドは前半と後半に溶出する種に大きく分かれましたが、これらはそれぞれグリコシル化していない種とグリコシル化している種に相当します。TFA イオンペアの使用によりペプチド残基の親水性がマスクされ糖鎖による親水性修飾の選択性が向上するため、この分離が促進されます。また、アミドカラムにより糖ペプチドはクラスで分離されるだけでなく、ペプチドグライコフォームの選択性も逆相分離に比べて顕著に向上したことも注目してください。
強く保持するピークに焦点を当てることで、トラスツズマブ分子のグリコシル化について検討を開始できます(図 2A)。特に、オンライン MS 検出により得られた MS データとトータルイオンクロマトグラム(TIC)は、図 2B に示すようにペプチド種とそのグライコフォームの同定に適用できます。Lys-C 糖ペプチドマップには、トラスツズマブの Fc ドメイン由来のアミノ酸残基 29 のペプチド(K16)が存在します。MS データの解析から、mAb で一般的に見られる多くの二分岐構造が比較的多く容易に同定できました(図 3A)。MS データをさらに検討すると、存在量の少ない N 結合型糖鎖種も同様に検出できることがわかります。例えば、図 3B はそれぞれ約 34.7 分および 36.4 分の保持時間にモノシアリル化およびジシアリル化したグライコフォームを同定した MS データを示しています。これらの同定は、以前に報告されているトラスツズマブの遊離 N 結合型糖鎖プロファイルと非常によく相関しています14-15。
HILIC-MS ベースの糖ペプチドマッピングにより情報豊富なデータが得られることは明らかです。しかしながら、これら HILIC 糖ペプチドマッピング分離は光学検出のみに基づく分析法にも役立ちます。例えば、2 種類の医薬品サンプルについてトラスツズマブのグリコシル化のロット間分析を実施するのに HILIC-UV 分析法を適用しました。2 種類の異なるロットのトラスツズマブから得られた糖ペプチド K16 の代表的なクロマトグラムを図 4A に示しました。これらロットに関する以前の遊離糖鎖分析から、グリコシル化に違いがあることが分かっています14。 糖ペプチドプロファイルに渡るピーク面積の比較により、トラスツズマブのこの 2 ロットがグリコシル化に関して実際に異なっていることを確認しました。特に、トラスツズマブのこれらロットは、FA2、FA2G1、FA2G2 グライコフォームの存在量が異なっていることからも明らかなように、末端のグリコシル化の程度が異なっていると考えられます(図 4B)。この結果はトラスツズマブサブユニットについて以前に行われた HILIC ベースのプロファイリングおよび遊離糖鎖分析により得られた結果と一致していました11
。
糖ペプチドマッピングの魅力的な特徴は、ドメインやペプチド特有の情報の特性解析に適用できる点です。推論解析もしくは ETD フラグメンテーション分析、または両方によって糖ペプチドマッピングは、グリコシル化の正確な部位について詳細を確認するのにも用いることができます16。 以前言及したように 11、IgG は重鎖の Asn297 に一貫して N 結合型糖鎖を有しており、これは Fc サブユニットが 2 つの糖鎖で修飾されることを意味しています。さらに、IgG と mAb IgG 治療薬には、マルチドメインでのグリコシル化を示すものもあります。例えば、セツキシマブは、Fc および Fab ドメイン両方がグリコシル化されており 17、本研究において非常に興味深いケースとなります。
セツキシマブの Lys-C/トリプシン消化物の HILIC 糖ペプチドマップにより、この分子の複雑な糖鎖プロファイルが明確に示されます(図 5)。表示したクロマトグラムでは、約 30 のクロマトグラフィーピークが見られました。さらに MS データの大まかな解析により、少なくとも 25 のグライコフォーム種が、1-2% 以上の高い相対存在量で存在することが確認されました。図 6 はこれらの帰属を示す MS データを示しています。図から分かるように、9 個のグライコフォームが Fc ドメインのトリプシン消化ペプチド T22 と帰属され、一方、他の 16 個のグライコフォームは Fab ドメインのトリプシン消化ペプチド T8 と帰属されました。Fab ドメイン(T8)糖鎖の多くは、非ヒトα-1,3-ガラクトースもしくは非ヒトN グリコシルノイラミン酸部分 のような免疫原性エピトープを含むことは興味深い点です18。以前の研究において、これら糖鎖種は、相補的なサブユニットマッピングとRapiFluor-MS 標識糖鎖分析により同定しました 11。 今回の糖ペプチドマッピングの結果により、タンパク質グリコシル化を評価する更なる相補的な技術を示しています。
この糖ペプチド分離例で得られたピークキャパシティは、他の市販カラムテクノロジーと比較してみると特に注目すべき値です。Glycoprotein BEH Amide 300Å 1.7 µm カラムの性能を評価するために、NIST 候補標準物質、IgG1K mAb の Lys-C 消化物を分析しました。本試験では、フォーカスグラジエントと共に、低波長 UV 検出の代わりにペプチドの内部蛍光を用いることで、得られたクロマトグラムにおいて高い S/N を達成することができました。mAb の Fc ドメイン由来の糖ペプチドは Lys-C 断片にトリプトファンを含み、大部分はこのことによりこの検出メカニズムが実現可能となります。NIST IgG1K の Lys-C 糖ペプチドについて得られた 3 つの蛍光クロマトグラムを図 7 に示しました。これら 3 つのクロトマトグラムは、ACQUITY UPLC Glycoprotein BEH Amide、300Å、1.7 µm カラムとその他代替となる市販カラム(カラム A および B)を用いて得られました。両端の糖ペプチドの保持時間(*)で区切られた保持ウィンドウと、K16+FA2、K16+FA2G1、K16+FA2G1’、K16+FA2G2、K16+FA2G2Ga1 のピークの半値幅を用いて、各カラムのピークキャパシティを測定しました。この分析は、これらカラムの分離能力が大きく異なっていることを示しています。Glycoprotein BEH Amide カラムは、有効ピークキャパシティが 72.8 と卓越したピークキャパシティを示し、他のアミドカラムテクノロジーに比べて性能が 40% もしくは 96% 向上していました。
糖タンパク質の糖ペプチドマッピングは、ドメインおよびペプチド特有のグリコシル化の両方を解析するのに用いることができる非常に有効な技術です。本研究では、逆相分離によって得られるクロマトグラフィーの情報を補完する、糖ペプチドの HILIC 分離への ACQUITY UPLC Glycoprotein BEH Amide、300Å、1.7 µm カラムの使用について実証しました。さらに、本研究の結果は、この HILIC 分離により他の市販アミドカラムテクノロジーと比較して良好なピークキャパシティが得られることを示していました。HILIC 分離は MS に適合するため、糖ペプチドマップを特性解析するための情報豊富なデータを容易に得ることができます。例えば、本研究では、セツキシマブの Fc および Fab ドメイングリコシル化など、マルチドメインのタンパク質グリコシル化特性解析が比較的簡潔にできることを示しています。HILIC サブユニットマッピングや GlycoWorks RapiFluor-MS 標識 N 結合型糖鎖分析など最近開発されたストラテジーと組み合わせることで、ACQUITY UPLC Glycoprotein BEH Amide を用いた糖ペプチドマッピングは、今までにないレベルの詳細までタンパク質のグリコシル化特性解析を促進することが非常に期待されます。
720005409JA、2015 年 9 月