法中毒学目的のみに使用してください。
この試験では、UNIFI を用いた法中毒学スクリーニングアプリケーションソリューションを一部の植物アルカロイドに適用しました。サイエンスライブラリー項目の作成および更新が容易であることが明確に示されています。UNIFI 科学情報システム v1.8 を使用して MSE データを解析したところ、これらの植物アルカロイドについて複数の付加イオンが検出されました。フラグメントマッチ機能によっても、高エネルギーイオンに部分構造を割り当てることができました。さらに、新規のディスカバーツールによって未知化合物の解析が向上することが示されています。
ライブラリーの作成および拡張が簡単にできることを実証するために、UNIFI1 を用いた法中毒学スクリーニングアプリケーションソリューションを使用して植物アルカロイドを分析します。このアプリケーションノートでは、UNIFI 科学情報システム v1.8 内の最新の一連のディスカバーツールの機能も紹介します。
過去 10 年間で、多成分残留分析において、飛行時間型質量分析(Tof-MS)が大きく普及しました。精密質量により物質同定の特異性が高まり、同位体データと組み合わせることで、可能性のある元素組成が示されます。元素組成式の提案は、化学構造を解析するための複雑な多段階プロセスの出発点になることがしばしばあります。
スクリーニングにおいて、精密質量測定は、ノミナル質量測定と比較して重要な利点があります。すなわち、レファレンス物質を必要とせずにスクリーニング分析法が実施できます。この特定のワークフローでは、理論的(予想)精密質量を、元素組成式から経験的に決定することができます。毒性学において、このワークフローは、新規向精神薬や、標準物質がまだ入手できない可能性のある新規物質や代謝物を「先を見越して」ターゲットにできる有用な手段になります。
UNIFI 毒性学サイエンスライブラリーを拡張するという現在行われているイニシアチブにより、一連の植物アルカロイドの分析が行われました。これらの窒素含有化合物は植物および植物材料に由来します。薬理活性があり、何百年もの間、医療目的や娯楽目的で使用されてきました。したがって、これらを分析することは法医学上の重要事項です。これらの物質の分析により、UNIFI 科学情報システム内のツールを、ターゲットの割り当ておよび構造解析の両方について評価する機会が得られました。
システム: |
ACQUITY UPLC I-Class (FTN) |
カラム: |
ACQUITY HSS C18、2.1 × 150 mm、1.8 µm |
分析時間: |
15 分 |
バイアル: |
Waters マキシマムリカバリーバイアル |
カラム温度: |
50 ℃ |
サンプル温度: |
10 ℃ |
注入量: |
10 µL |
流速: |
0.4 mL/分 |
移動相 A: |
5 mM ギ酸アンモニウム水溶液(pH 3.0 に調整済み) |
移動相 B: |
0.1% ギ酸アセトニトリル溶液 |
時間 |
%A |
%B |
---|---|---|
0.00 |
87 |
13 |
0.50 |
87 |
13 |
10.00 |
50 |
50 |
10.75 |
5 |
95 |
12.25 |
5 |
95 |
12.50 |
87 |
13 |
15.00 |
87 |
13 |
MS システム: |
Xevo G2-S QTof |
|
イオン化モード: |
ESI+ |
|
イオン源温度: |
150 ℃ |
|
脱溶媒温度: |
400 ℃ |
|
脱溶媒ガス: |
800 L/時間 |
|
レファレンス質量: |
ロイシンエンケファリン [M+H]+ = m/z 556.2766 |
|
取り込み範囲: |
m/z 50 ~ 1000 |
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スキャン時間: |
0.1 秒 |
|
キャピラリー電圧: |
0.8 kV |
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コーン電圧: |
25 V |
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コリジョンエネルギー: |
ファンクション 1:6 eV |
|
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10 ~ 40 eV のランプ |
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データ管理 |
UNIFI v1.8 を用いた法中毒学スクリーニングアプリケーションソリューション |
植物アルカロイドであるアミグダリン、塩化ベルベリン、ブファリン、クマリン、ジギトキシン、ギトキシン、ラナトシド C、ネリイホリン、α-ソラニンは Sigma-Aldrich(英国、プール)から固形物として入手しました。
植物アルカロイドの個別のストック溶液を、まずメタノールで濃度 10 µg/mL に希釈して調製しました。これらの溶液は、使用時まで -20 ℃ で保管しました。Tof-MS 分析の前に、これらのストック溶液を移動相 A でさらに希釈して、濃度 1 µg/mL の注入用サンプルを調製しました。
分析の前に、9 種のアルカロイドの名前を入力するだけで、植物アルカロイドのみの新規 UNIFI サイエンスライブラリーが作成されました。各物質の構造を記載した MOL ファイルを、ライブラリーの各エントリーに追加しました(図 1)。植物アルカロイドの個々の溶液を注入し、UNIFI 法中毒学スクリーニングアプリケーションソリューションに付属の標準のスクリーニング条件を使用してデータを取り込みました1。 続いて、UNIFI 科学情報システムを使用してこれらのデータを解析し、新規の植物アルカロイドライブラリーに対してスクリーニングしました。
各植物アルカロイドの存在は、プロトン化したプリカーサーイオンの質量精度と、各物質の構造から自動的に生成された理論上のフラグメントイオンを組み合わせて確認され、高エネルギースペクトル中のイオンとマッチしました。
図 2 に、UNIFI に表示された α-ソラニンの同定を示します。Component Summary(成分サマリー)には、このアルカロイドの同定に関連する情報が表示されます。これには、実測 m/z およびその予想 m/z 値からの偏差、m/z 分布と強度分布の両方に関する実測同位体パターンおよび理論上の同位体パターンの差、実測保持時間、検出された理論上のフラグメントイオンの数、検出された化合物に関連するすべての低エネルギーイオンの存在量を表す検出器でのカウントが含まれます。
すべてのアルカロイドが、プリカーサーイオンおよび解析中に生成した理論上のフラグメントイオンの質量精度に基づいて同定されました。同定に際して、保持時間を各物質に関連付けました。UNIFI では、ライブラリーエントリーを分析から直接更新し、割り当てられた各付加イオンおよびフラグメントイオンの予想保持時間と予想 m/z 値を含めることができます。更新後は、通常のライブラリーエントリーに図 3 に示すネリイホリンの情報と同様の情報が含まれます。後続の分析では、この追加情報を使用して、その物質をターゲットにすることができます。
この試験で調査したその他のアルカロイドの 1 つであるギトキシンのデータを図 4 に示します。この物質に割り当てられた低エネルギーイオンは、プロトン化同位体クラスターに対応しており、スペクトル内で緑色で強調表示しています。ギトキシンのプロトン化同位体クラスターについて測定された検出器でのカウントは 568 です。この高エネルギースペクトルには、ギトキシンの部分構造が注釈付けされています。これは、UNIFI によって自動的に決定され、フラグメントイオンとして高エネルギースペクトルピークに関連付けられています。
この物質の低エネルギースペクトルのさらなる調査により、一部のイオンがギトキシンの他の付加イオンに対応する可能性があることが明らかになりました。そのため、データを再解析し、プロトン化分子種に加えて、[NH4]+、[Na]+、[K]+ の各付加イオンをターゲットにしました。図 5 に、再解析後に各付加イオンに割り当てられた低エネルギーデータの同位体クラスターの詳細を示します。ギトキシンへの追加の付加イオンの割り当ては、検出器でのカウントに反映され、プロトン化付加イオンの同位体クラスターから決定された 568 から 118680 に増加しました。この分析の他の物質についても、同様の結果が得られました。
UNIFI 科学情報システム v1.8 のもう 1 つの新機能はディスカバーツールです。これにより、元素組成、ライブラリー検索、フラグメントマッチ機能が単一ステップのプロセスとしてつなぎ合わされ、サンプル内の予期しなかった物質のアイデンティティー取得がより簡単になります。ディスカバーツールの実行に使用したパラメーターの詳細を図 6A ~ D に示します。
図 6A に示す最初のパラメーターのセットは、各成分について返される元素組成の最大数と、各元素組成について返されるライブラリーヒットの数を制御します。選択した各成分について、実測 m/z 値が元素組成アプリケーションに送信されます。そのパラメーターが図 6B に示されています。次に、元素組成アプリケーションによって返された各化学式は、選択したライブラリーのリストに自動的に送信されます。このライブラリーは、UNIFI サイエンスライブラリーか ChemSpider(インターネット接続されている場合)のいずれかに属しています。ChemSpider ライブラリーを選択している場合のダイアログが図 6C に表示されています。
ライブラリー検索から返された各化学式のすべてのライブラリーヒットに関連付けられた MOL ファイル形式の構造がある場合は、自動的にフラグメントマッチアプリケーションに送信されます。
フラグメントマッチアプリケーションでは、図 6D に表示されているダイアログで選択したパラメーターを適用して、各構造に対して系統的な結合切断が行われ、理論上の部分構造の m/z 値が測定された高エネルギーフラグメントイオンにマッチングされます。マッチしたフラグメントイオンの数と、それらのマッチが占める高エネルギースペクトルの強度の割合の両方が決定されます。
説明の目的で、ターゲット分析でアミグダリンと同定された候補成分を、ディスカバーツールに送信しました。図 6A ~ D に示すパラメーターに関してアプリケーションを実行した際の結果を図 7 に示します。
ディスカバーツールに送信された成分は、候補質量 m/z 458.1649 でした。得られた結果は、m/z 458.1649 について、i-FIT 信頼度が 89% の 1 つの元素組成 C20H27NO11 と判定されたことを示しています。この元素組成は、ChemSpider 内の FDA UNII - NLM ライブラリーに自動的に送信され、アミグダリンのヒットとともに別名、構造、引用回数のリストが返されました。図 7 に示すように、この構造がフラグメントマッチとともに自動的に使用され、該当する部分構造が、候補質量 m/z 458.1649 に関連する高エネルギースペクトルに割り当てられています。部分構造によってマッチした高エネルギーフラグメントの数と、それらのマッチが占める高エネルギースペクトルの強度の割合が、ライブラリーヒットについて表示されています。
さまざまな成分、元素組成、ライブラリーヒットに関するこれらの情報にアクセスすることにより、サンプル中の予期しなかった物質のアイデンティティーに関して、情報に基づく判断を下すことができます。
本研究では、UNIFI を用いた法中毒学スクリーニングアプリケーションソリューション1を一部の植物アルカロイドに適用しました。サイエンスライブラリー項目の作成および更新が容易であることが明確に示されています。UNIFI 科学情報システム v1.8 を使用して MSE データを解析したところ、これらの植物アルカロイドについて複数の付加イオンが検出されました。フラグメントマッチ機能によっても、高エネルギーイオンに部分構造を割り当てることができました。さらに、新規のディスカバーツールによって未知化合物の解析が向上することが示されています。
720005461JA、2015 年 7 月